銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン

隔週水曜19:00-20:00ON AIR
  • RADIO REPORTRADIO REPORT
PROFILE

俳優
川久保 拓司

1981年生まれ、東京都出身。2002年にモデルデビュー。「ウルトラマンネクサス」(TBS系)の主演を務め、注目を集める。
主な出演作に、舞台『黒蜥蜴』(美輪明宏演出)、『ハロルドとモード』(青井陽治演出)、『ガラスの仮面』(蜷川幸雄演出)、『リチャード三世』(いのうえひでのり演出)、『グレイガーデンズ』(宮本亜門演出)、『ファンタジア』(飯塚健演出)、『スマートモテリーマン講座』(福田雄一演出)、『Annie』(ジョエル・ビショッフ演出)、『渇いた太陽』(深作健太演出)、『祝女』(内村宏幸演出)、『ボンベイ・ドリームス』(荻田浩一演出)、『ピアフ』(栗山民也演出)、映画『最終兵器彼女』、『TAKAMINE~アメリカに桜を咲かせた男~』、『俺はまだ本気出してないだけ』、『薔薇色のブー子』、TV『ウルトラマンネクサス』(TBS系)、『ゴーストフレンズ』(NHK)、『勇者ヨシヒコと魔王の城』(TX)、『幸せの時間』(東海テレビ)、『天魔さんがゆく』(TBS)、『アオイホノオ』(TX)、『ニッポンぶらり鉄道旅』(NHK-BSプレミアム)など。
来年、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(赤坂ACTシアター)の公演が控えている。
10月5日から始まる舞台『トロイ戦争は起こらない』@新国立劇場

RADIO REPORT

vol.292016.08.1719:00-20:00

川久保 拓司× 山﨑 晴太郎

山﨑
松屋銀座屋上、ソラトニワ銀座からお送りをしております。銀座四次元ポケットpresents、山﨑晴太郎の銀座トークサロン。アートディレクター、デザイナーの山崎晴太郎です。それではここで、ゲストの方をお迎えいたしましょう。俳優、川久保拓司さんです。こんばんは。
川久保
こんばんは。川久保拓司です。よろしくお願いします。
山﨑
いい声ですね。ありがとうございます。わざわざ、お忙しいところをご足労いただきまして。
川久保
いやいや、いやいや。何か晴太郎とこうやってラジオで話すこと自体が、何か不思議な気持ちもありますけど(笑)。
山﨑
そうですね(笑)。実は僕たち、大学時代からの友人なんです。まずは、簡単に僕の方からご紹介させていただきます。81年生まれ、東京都出身。2002年にモデルデビュー、『ウルトラマンネクサス』の主演を務めて、注目を集めました。出演作はたくさんあるので割愛しますけど、蜷川幸雄さんの『ガラスの仮面』だったりとか、この間、僕も見させていただいた『ピアフ』だったり、舞台もたくさん出ていますよね。

力を抜くことで、より深く入り込める。

山﨑
大学時代に共通の友人を通して知り合って、いつも一緒に飲んだりしていた人と、こうやってラジオで話すのも不思議な感じなんですけど。芸能界に入って、もう14年?
川久保
うん。
山﨑
それで、俳優デビューしてから13年ということで、役者としていろいろな場数を踏んできて、ちょっとずつ変化があるんじゃないかなと思うんだけど。
川久保
やっぱり、あるね。俺が役者を始めたきっかけというのが、ちょっと特殊で。高校生の頃にずっとプロサッカー選手になりたくて、クラブチームに通っていたんだけど、クラブチームというのは高校サッカーと違って、月謝だったり、遠征費だったりを自分で全部賄わなくちゃいけないんだよね。だから、アルバイトしながらやってたのよ。そこで海外遠征の話が出て、確か20~30万かかると。高校生の頃の20~30万を思い出してみてくださいよ。
山﨑
結構大きいよね。
川久保
いや、もう無理だと。これは、もう絶対、駄目だと。落ち込んで歩いている時に
スカウトされたっていうのが最初で。
山﨑
なるほど。
川久保
だから何だろう。役者としての夢を持って入った世界ではなかったんだよね。けど、やってみたら、どんどん、どんどんはまっていって、今があるという形だから。だから、これは本当に失礼な話なんだけど、いまだに何か趣味とか楽しいことの延長という感覚があって、仕事だとは思っていない部分が大きくて。
山﨑
なるほど。でも、その感覚は大事だよね。
川久保
そうだね。いまだに、わくわくするし、「ああ、楽しかった」って終わる感じ。ただ、やっぱり変化で言ったら、去年、結婚しまして、今年は子どもが産まれて。父親になったっていうのは、心境の変化としてはやっぱり本当に大きいかな。人生の一番の転機かもしれないね。
山﨑
それから役者に対する向き合い方も、変わってきた感じなんですか?
川久保
晴太郎のラジオだから赤裸々に言っちゃうけど、やっぱり俺はそれまで役者が全てで、芝居として身を立てる、自己実現をすることが自分の人生にとっての使命だった。だけど今は、どこかで役者って手段で、俺の家族、嫁の家族、俺の仲間、嫁の仲間、あとは俺のことを応援してくれるファンを幸せにするっていうのが、やっぱり一番の目的なんだなと思うようになって。そのための手段って考えると、どこかで肩の力が抜けたところがあって。良くても、駄目でも、「まあいっか、頑張ろう」みたいな、肩の力を抜いてやれるようになってから、より芝居に愛着と集中が増した気はするんだよね。
山﨑
適度な距離感みたいなものがつかめてきた感じなのかな?
川久保
そうそう。もちろん役者が全てなんだけど、それでも役者が全てじゃないっていう部分が自分に入ってきたことが、より芝居への集中を増した気はするんだよね。
山﨑
でも、それぐらいの大きな転機になるからね。子どもとか特にね。
川久保
本当に。まあ父親の先輩として、晴太郎にも相談させてもらったりしたこともあったし。
山﨑
いや、でもね、それこそ僕らもデザインの仕事をしていても、子育てをしていると、人生が2回目だと思うんですよ。だから、何か忘れていた、すごくピュアな喜びみたいなものが、もう一回、大人の感覚で入ってくるじゃない。それって、表現者としては、とても強いことだと思うんだよね。
川久保
そうそう。役者の八嶋智人さんっていらっしゃるでしょう。子どもが生まれた時に連絡をもらって、「役者にとって子育てって本当にいいことしかないよ」って言ってくれて。「経験と深みといろいろなものが増していく」と、それを今、本当に感じているね。
山﨑
本当にそうだよね。ちなみに、子育ては参加型ですか?
川久保
めちゃくちゃ参加型。さっきもうんち拭いてきたばっかり(笑)。ラジオだからわからないと思うんだけど、今、目元に傷があって。これは、子どもに引っ掻かれた(笑)。

天才ではない。だけど、だからこそ。

山﨑
もともとスカウトされて芸能界に入って、役者というものにどんどんのめり込んでいって、ひとつの仕事として成立して、これからもやっていくんだと思うんだけど。一生、役者をやっていこうと思いますか?
川久保
今の時点で役者以上にわくわくすることってないし、それでお金をもらえることというのも他に持っていないから、やっぱり続けていきたいけど、この年になっていろんなことに挑戦してみたいっていう気持ちがすごく膨らんでいて。何か他のことをやることで役者に還元できることもあるだろうし、役者をやっているからこそトライできる他のこともあるかもしれない。それこそ、晴太郎って自分のデザイン会社を立ち上げて、そこからいろいろなものに挑戦してるじゃない?
山﨑
僕は飽きっぽいからね(笑)。
川久保
でも中心に帰ってきてるような気がしていて、いろいろなものをデザインにフィードバックできているように見えるんだよね。だから俺も、人生が残りどのくらいあるか分からないけれども、やりたいと思ったことを全部やろうと思って。
山﨑
もう全部に突っ込んでこう、みたいな。
川久保
本当に、やりたいことが多い。
山﨑
そんな感じだから、活躍の場がどんどん広がっていってると思うんだけど、媒体もすごく幅広いものに出ているじゃない?これは何か、意識的に変えたりしているんですか?
川久保
同世代でずっと第一線で活躍してきた仲間の話とか、後輩でも、山田孝之とか、柳楽優弥とかと飲んだりして話を聞いていると、やっぱり天才なんだよね。本当に根っからの役者で、だけど俺は天才じゃないって自分のことを思うし、一つの現場で叩き上げてきてもらった感覚もあるし。ウルトラマンとしてやらせてもらったことで、いろいろなメディアに出ることはできたけど、やっぱりきちんと自分を見つめなおして、まず役者にならなくちゃいけないと思ったの。舞台に傾倒していったのは、それが強いかな。
山﨑
そうだよね。舞台だよね、完全に。
川久保
そう。だから尊敬する演出家、憧れの演出家とやらせてもらえたことは、これまでの俺の財産だね。
山﨑
リスペクトしていた演出家の舞台がはじめて終わった時って、「終わらせたぜ!」みたいな達成感があったと思うんだけど。でも、そこからまた別の舞台がはじまって、別の演出家にこてんぱんにやられるわけじゃない?そういうのって、どうなんですか?
山﨑
リスペクトしていた演出家の舞台がはじめて終わった時って、「終わらせたぜ!」みたいな達成感があったと思うんだけど。でも、そこからまた別の舞台がはじまって、別の演出家にこてんぱんにやられるわけじゃない?そういうのって、どうなんですか?
川久保
晴太郎は今、仕事やっていて上の人からめちゃくちゃ怒られるとか、なかなかないでしょう?
山﨑
ないない。ほぼない。
川久保
俺、結構、怒られるからね。これまで、そうそうたるメンバーと、そうそうたる演出家といろいろな仕事をして、こんな爪痕を残して、こんな成果を得ているんだなんてことは本当にささいなことで、現場に入る時はやっぱりゼロなんだよね。その感覚が、俺は好きなんだと思う。
山﨑
なるほど。
川久保
本当に、もう全く分からない中で、また関係をつくって、いろいろな交渉をしながら完成させてお客さんの前に届けなくちゃいけない。そこまでに自分の経験が生きることなんて本当にささいなことで、そういう毎回やり直すっていう、ゼロからはじまるっていうことを楽しめているかな。もちろん俺の体には、ちゃんと過去のものが染みついてパワーになってくれているとは思うんだけど。そこには、やっぱりゼロからやるっていうことしかないんだよね。
山﨑
ちなみに思い出に残ってる演出家さんとかはいますか?
川久保
やっぱり、蜷川幸雄さんだよね。本当に、ついこの間、亡くなられてしまったんだけど。あの人の『ガラスの仮面』に出たのが25か6くらいの時で。本当にこてんぱんにされて。音楽劇で歌も歌ったんだけど、それまで人前で歌ったことなんてなかったから、もう本当にね、精神的にもきつかったし。だけどやっぱり、蜷川幸雄さんと一緒にやったっていうことが、今後、自分の背中を押してくれるんだろうな。実際、そのパワーはあったし、あれは特別な時間だった。本当のことを言えば、もう一本やりたかった。
山﨑
ああ、そうだろうね。
川久保
けど、できなかったの。やっぱり俺が未熟な部分だし、ちょっと間に合わなかったかな。
山﨑
なるほどね。やっぱり役者の人がみんな言うじゃない、それ。蜷川さんの、それって何なんですかね?
川久保
やっぱり、あの人は生ける伝説と化していたから、年齢的にも時代的にも、日本の演劇の全てを駆け抜けてきた人だから。でも、最新の舞台とかで、例えば、同じ戯曲を他の演出家とのバトルみたいな感じでやったりするのよ。まだ若い演出家と同じ戯曲を。
山﨑
演出バトルみたいな。
川久保
同じテーマで違う演出でつけるみたいな。そういう今を取り込む試みを忘れずに巨匠になったから、あの人ってすごかったんだと思うんだ。いまだに、やっぱり天国で俺の芝居を見てくれているんだろうなみたいな感覚は持っているつもり。
山﨑
素敵だよね、そういう出会いってね。そういうのって、何がきっかけでアサインされるの?
川久保
確かね、『ウルトラマン』が終わって舞台を1本やったのよ。今はなき青山円形劇場っていうところで、そこの芝居を見に来た日テレのプロデューサーの方に誘ってもらったのが『ガラスの仮面』。だから日テレさんからのオファーでもらったのかな、あれは。
山﨑
なるほど。へえ、そうなんだね。
川久保
やっぱり、目の前の芝居を見てもらって、オファーをもらうっていうのが、役者として一番多い形かな。

楽しさ2割、辛さ8割、でも。

山﨑
今は仕事をすごくポジティブにやっていると思うんだけど、辛い時はある?
川久保
辛い時が8割。演劇に携わってきて、やっぱり辛いことのほうが多い。だけど俺、アホだから2割の楽しさで、全然もう8割の苦しさは忘れちゃうんだよね。でも、つくり上げる作業って本当に苦しい。
山﨑
まあ、そうだよね。
川久保
本当に思う。例えば、芝居の稽古が1カ月、ないし2カ月半とかある中で、どこかでどん底に落ちる時ってあるんだよね。自分に対して「役者なんて辞めちまえよ」って思う時もあるし、「ほんと何もできない、才能のない、へぼ役者だな」って思う時もあるし。だけど、やっぱりこうやって評価してくれて、誘ってくれる人がいる限り、俺は成長してるって自分のことちゃんと信じられるし。
山﨑
なるほど。そこから演出をやりたいみたいなふうに思ったりはするの?
川久保
ある。やっぱり自分がいろいろな人に使ってもらうってこともそうだけど、自分が思ってることを表現してみたいってなる年なんだなって思った。30代半ばに入ってきて後輩が増えて、何かをつくり上げてみたいっていう欲はすごく増えたよ。
山﨑
じゃあ、どっかでそういう機会があるかもしれないね。
川久保
いつかトライしてみたいなとは思うね。
山﨑
そうだよね。逆に、「こういう役者でいよう」みたいなことは意識してる?例えば、「演出家に使いやすいようにしよう」だったり、自己ブランディングにもつながる話だと思うんだけど。
川久保
現時点ではわからないかな。その時々で、こういう人になりたい、こういう憧れの人がいるから、こういうふうになっていきたいとかあったんだけど、今はもう何か1周して目の前のことを全力でやることしかできなくて、本当に新しいこととの出会いが、まだあまりに残っていて、「これもまた、あの時と同じ繰り返しだ」とかじゃなくて、何か新しいことと出会い続けているから、俺が決めることじゃないのかなって思うところもあるし。かといって、こういうことはやりたくないとか、こういうものをやりたいんだとか強いこだわりはどんどん、どんどん強まっていってるし、やっぱり自分が天才じゃなかったから、本物になりたい気持ちがすごく強くて、本物の演出家と熱い演劇をやっていきたいというのはあるかな。
山﨑
なるほどね。僕ら飲み屋でこんな話ばっかりしてるね、いつも(笑)。
川久保
本当に、酒が進む話ですよ(笑)。ちょっと逆質問になっちゃうけど、晴太郎もいろいろなものに携わってきて、自分も変化してきたと思うし、年齢も30代ということで、今、新たに感じることってあると思うんだけど、どんなふうになっていきたいとかってある?
山﨑
いや、ほぼ一緒だよね。僕も、天才になりたかった天才じゃない人なんですよ。だから、やっぱり泥臭く1段、1段を登らなきゃいけないし、爪痕を残さなきゃいけないっていうのは本当、同じ感覚を持っているし、まあだからこうやってつながっているんだと思うしね。だから、今の話と一緒で、僕も最近は、自分がやりたいことと、自分が求められてることは違うんだっていうことは思っているんだよ。やっぱり昔はさ、もうちょっと職人気質じゃないけど、何か絵を1枚書いて、「どうだ!」みたいな人に憧れてたけど。
川久保
そうなんだね。でも、晴太郎が自分のことを天才だと思ってないっていうことが意外だな。なんか大学生の頃から、話す話がやっぱり壮大だったじゃん。だけど、そういうのって、あの頃にしか言えなかったことにするんじゃなくて、あの頃、言ってたこととまた変化はしていくけど、同じぐらい青臭くいたいっていう気持ちもすごくあって。でも晴太郎って、そうそうたる受賞歴もあったり、各方面で評価されているじゃん。それでも、そう感じてるっていうのは、やっぱり意外だね。まあ、でも確かに求められてるものと自分がやりたいことのずれっていうのは、俺も感じることで。そういうものを、いろいろ考えながら40代に向かって走っていくんだろうね。
山﨑
そうそう。お互いに、走ることをやめるっていうことはしないはずだから。結果、また戻ってくるかもしれないしね。40歳過ぎて、「やっぱ俺、天才だった」って(笑)。

頭で考えるより、身体で感じること。

山﨑
ちょっとね、僕の話になってもしょうがないんで、役者としての話を聞いてみようと思うんですけど。川久保さんの役作りって、どんな感じなんですか?
川久保
役作りって言葉ほど、曖昧なものってないなと思っているんだけど、もちろん形から入ることもある。例えば、髪型を変えてみたり、体重を増減させてみたり、この間は医者の役だったんだけど、まあそういうものを勉強してみたり。だけど一番は、台本に表現されているものからもらうことがすごく多くて、それをただ演じるというだけで、どんどん、どんどん役に寄っていくというか、その中で自分で調べたりすることもあるけど、俺の中では頭で考えてることより、体で感じて役作りをすることのほうが圧倒的に多くて。
山﨑
知識型っていうよりは、何か身体型みたいな感じのつくり方だ。
川久保
そうだね。その中で外から入れる知識もあるけどね。
山﨑
時代背景が分からないとそもそも、みたいな話もあるもんね。
川久保
そう。だから、そういう外から与えられたものもそうだけど、内から出る役作りっていうものは、やっぱすごく重視している気がするな。他の役者がどうやっているかは、本当にわからない。
山﨑
まあ、それぞれだよね。
川久保
そうそう。天才って言われる人ほどね、何か頭で考えてる人もいたりとかするし。どんな形があるんだろうね。でも、俺も1~2年後に真逆のこと言ってるかもしれないよ。
山﨑
1回読めば全部入っちゃうんですみたいな。
川久保
それこそ、この間、大竹しのぶさんの「情熱大陸」を見ていたら、一緒に『ピアフ』をやっていた時の映像が結構、使われてて。あの人なんかは憑依型だとか言われているけど、結構、計算して冷静な彼女というのを俺はすごく感じていて。だから、あの人なんかも、もちろん憑依してるように見えて、頭ではどこか冷静につくっているところも、すごくあるんだろうなって思った。
山﨑
まあ見る目線みたいなものも必要だしね。そうそう、『ピアフ』良かったね。
川久保
『ピアフ』ね。晴太郎が見に来てくれたことが本当にうれしかったよ。あれは俺も見に行ったことがあった舞台で、演出の栗山民也さんっていう人が、すごくやりたい演出家の1人だったの。だから、あの芝居に誘ってもらったのは本当にうれしかったね。それに、やっぱり大竹しのぶさん。まあ、「しのぴー」って呼ばせてもらってるんだけど(笑)。
山﨑
仲いいもんね。
川久保
そうそう。プライベートでも仲良くさせてもらっていて。ああいう、自分のステージを一個上に上げてくれるような圧倒される舞台に呼んでもらうっていうのは、すごくうれしかった。あの舞台も、やっぱり役作りにしてもすごく悩みに悩みきったし、千秋楽までずっと悩んでたというか。だけど自分なりの正解を置いてきたとは思うんだけど。
山﨑
でも、毎回、そういうくさびみたいなものが打たれているっていうのは素晴らしいなと思いますけどね。
川久保
そうだね。本当、くさびだらけだよ。毎回、自信なくしてさ、終わる頃に自信を築いて、次のときにまた自信なくしてっていう繰り返しかな。でも、その波が右肩上がりになっていてくれたらいいんだけどね。
山﨑
さっき、この演出家の人とやりたいと思っていたって言ったけど、それは、何を感じて「ああ、この人とやってみたいな」ってなるの?
川久保
演劇を見に行ってからかな。やっぱり演劇を見に行ったときに、最高だったなという舞台だけじゃないのも事実で。見に行ったときに、「うーん、俺にはあまり合わない舞台だな」って思うこともあるけど、かと思えば、「うわ、ノックアウトされたな」って、「こりゃすごいや」っていうものがあって、その人に自分が演出されたらどうなるんだろうって思い描くときは、やっぱり圧倒的に憧れちゃう。その演出家と一緒にやりたいって思っちゃうかな。
山﨑
なるほど。それは演出に対して思うの。それとも元ネタに対して思うの?
川久保
やっぱり演出。でもね、演劇にとって一番大切なものって、もちろん演出もあるけど、やっぱり脚本のパワーってすごくて、ストーリーが面白ければ、無条件で面白さにぐっと近づくから、この脚本をやってみたいというのは、この演出家とやってみたいっていうと同じぐらいあるかな。
山﨑
ちなみに、これまでの役者人生の中でいろいろな方に会ってきたと思うけど、尊敬する人はいますか?
川久保
これがまた難しいんだけど、尊敬する人ばっかりで。それは芝居の部分で尊敬するのと、人柄も含めてパーフェクトだなっていう人と、人柄どうしようもないけど芝居になると天才だなっていう人と、いろんな種類があって。それぞれにすごく憧れを感じる人がいるんだけど、やっぱりさっきの話の延長になっちゃうんだけど大竹しのぶさんは憧れかな。もう性を飛び越えて、「こんな役者になったら、どんな景色が見えているんですか!?」みたいなのは思う。しかもとても謙虚で、新しい人と出会っても、すごく丁寧だし。
山﨑
人としても素晴らしいみたいな。
川久保
ばらしっていう稽古場に組み込んだセットに見立てた機材とか、木材とかを解体する作業があるんだけど、それしに来たアルバイトの子たちにも「ありがとう」って言ったりするからね。そういうふうになっていきたいなとは思うよね。
山﨑
そういう人には、なれそうな感じはあるけどね。
川久保
でも、かと思えば破天荒などうしようもない人間だけど天才っていう、そのパターンにもやっぱり憧れるよね。勝新太郎みたいなね。でも、そっちにはなれないから、人と人との出会いを大切にしていくっていうのは、すごく重視してるかな。
山﨑
なるほどね。すごく個人的な話だけどさ、たまにLINEしてるじゃん。僕はどちらかというと雑な方なんだけど、あれって日常のスタンスみたいなのが出ると思っていて。やっぱり拓司は丁寧だなってよく思う、昔から。
川久保
文字ってさ、温度が伝わらないじゃん。電話ですら擦れ違う時があるけど、文字ってもっと分かんないから、より1個高めのテンションでいってる。それは意識しているかな。

同じ世代のエネルギーを形に。

山﨑
今までいろいろなドラマとか舞台に出てきたと思うけど、死ぬまでに出たい脚本ってあるんですか?
川久保
何だろうな。でも、やっぱり何だろう、同世代の役者と何か新しいものをつくり上げてみたいっていう気持ちが最近すごく沸いてくるというか。今までは与えられることのほうが多くて、年上の人とか先輩との付き合いも多かったし。だけど今は、同じ世代の人、それこそ晴太郎と一緒に何かをつくり上げるとか、自分たちの生命力とか、アイデア、パワーを表現や形にしていきたいっていう気持ちがすごく強まっていて。それは、ここ数年の一番大きい変化かな。
山﨑
なるほどね。
川久保
今まであった、『シェイクスピア』みたいな戯曲に出たいっていうこともあるけど、発信してみたいっていう気持ちが、すごく強くなった。今までは、やっぱりできなかったし、することにおこがましさを感じてたというか。この間も同い年の俳優が引退するっていうのがYahoo!ニュースになっていたんだけど、やっぱり辞める人のほうが圧倒的に多いわけで、同い年の俳優の球数で言ったらどんどん減っていく。そんな中で実際に絡むことは少なくても、一緒にがんばっていきたいという感じがあって、そういう仲間と何かやってみたいっていうのは、死ぬまでにやってみたいことの一つかな。
山﨑
やっぱり、徐々に表現欲みたいなものが上がってきたんですかね。
川久保
そうだね。これまでは、与えられることのほうが多かったから、自分が演出してみたいとか、そういう欲もどんどん出てくるし。
山﨑
それは、あるよね。ちなみに今、一番、表現したいことはなんですか?
川久保
自分の言葉とか、自分の発信することで誰かが「救われたな」とか思ってくれたりということをつぶさに感じるたびに、俺この仕事をやっている意味って本当に大きいなって思うんだよね。前に地方に公演に行った時があって、「就活が決まったんです」ってファンの男の子が来てくれて、「実は僕、本当にしんどかったんです」と。「いろいろなことで思い悩んでるときに川久保さんの芝居と、いろいろな言葉を見て救われたんです」って言われた時に、俺は自分勝手にやってきただけだったけど、それを見て救われる人いるんだって思って、本当に励みになったんだよね。だから、何てまとめたらいいのか分かんないんだけど。
山﨑
いや、でも分かる。やっぱりね、人の心を動かすもんね。
川久保
そう。だから、表現したいことって、もしかしたら芝居だけじゃなくて自分の発信すること全部かもしれない。目を合わせて、握手して話したこと、全てがいろいろな人のパワーになってほしいなって思っていて。最初は何かきれい事みたいで、ちょっとこういうのって嫌いだった時期もあったんだけど、今は本当に人を笑顔にしたり、幸せにするっていうのが目標になった。
山﨑
それはね、すごく分かる。その感覚は、よく分かるわ。
川久保
あとは、小さいところで言うと、文字っていうパワーにすごく魅力を感じていて。やっぱり文字に起こしていろいろなものを表現してみたいっていうのは、すごく今は強い。ブログっていう簡易的なものはあれど、やっぱり本とかも出してみたいなって思うし、自分で戯曲を書いてみたいなっていうものもあるし。文字にするということに、今、すごく魅力感じている。
山﨑
それ、ちょっと楽しみですね。いろいろな方向性が、まだまだ広がっていきそうで。それで、いろいろやってみて発信していくと、またさっきの話みたいに、新しい舞台につながっていくかもしれないしね。
川久保
そうそう。何か形になったらいいなとは思いながら、そこも興味があるところかな。

そして、新たな表現の舞台へ。

山﨑
これから多分、またいろいろな舞台に出られると思うんですけど、来年は舞台『ロミオとジュリエット』だね。
川久保
そうそう。これなんかも不思議な縁でもらった話なんだけども、まず俺、ミュージカルがすごく好きなの。見る側としてね。ミュージカルって、好き嫌いが分かれる分野だと思うんだけど、俺は見ると「うわあ!」ってなるの。
山﨑
なるほど。でも確かに、好き嫌いが分かれるよね、ミュージカルは。
川久保
だけど、ミュージカルに出てる人って、やっぱり音楽大学を出ていたり、元歌手だったり、歌にすごく懸けてきた人たちで、俺とは別の世界なんだって、どこか諦めてたところがあったの。でも、ミュージカルを見るたびに、「やっぱりやってみたいな」ってずっと思っていて。蜷川さんの『ガラスの仮面』をやった時に、やっぱり歌がぼろぼろで、レッスンもかなり通ったんだけどうまくいかなくて、人前で歌うことが怖くなった時期もあったんだけど。でも、「やりたいのに、やらない手はないだろう」と思って、そこからレッスンを積んで、オーディションも受けて、もう何十本も落ち続ける中で、やっと引っ掛かってくるようになった。そのうちの一つが、この『ロミオ&ジュリエット』。これはね、自分の中でも本当に身の引き締まる思いというか。
山﨑
積み上げてきたから、そこまでの階段を。
川久保
そう。まあ言ったら、このストーリーの中でメインどころではないの。やっぱりロミオとか、マーキューシオとか、ティボルトとかが、メインだからね。だけど俺は何かひとつ、特別な爪痕を残してやるっていう気持ちがすごく強くて、どきどきしてる。今までは「僕、ミュージカルの経験少ないんで、精いっぱいがんばります」みたいな、自分の中で保険掛けちゃっていたけど、今はもう違うから、やっぱり何か自分としての爪痕を残しておかなくちゃいけないなっていうふうに。しかも、これすごく大きな企画なのよ。赤坂ACTシアターって日本で何本の指に入るかぐらいの劇場で、TBSが入っていろいろなCMもやってる中で俺が食い込んでいく、これはがんばらなきゃいかんですよ。
山﨑
勝負どころですね。
川久保
そう。本当に、これ勝負どころの一つ。
山﨑
本当に素晴らしいですね。そしてですね、ぼちぼち終わりの時間も近づいてきたんですけども。ちょっと、「情熱大陸」のリハーサルだと思って答えてもらっていいすか。川久保さんにとって表現とは?
川久保
僕にとって表現とは、ただ体からそのまま湧き出るもの。これまで、自分の表現というものに対して、頭の中ではいろいろとこねくり回してきて、自分なりの札を付けてきたのよ。「俺にとって表現とはこれだ」ってすごく付けてきたけど、今ね、息子からもらうパワーだったり、後輩からもらう責任感、それこそ上の人から怒られて粉々になるものだったり、全てが混ざって今、俺って無なんだよね。だから多分、自分にとって表現って、もう、ただ自分から出てくるものでしかないっていうのが、今現時点での結論なんだよね。
山﨑
なるほど、器みたいな感じなのかな。
川久保
でも、来年違うこと言ってるかもしれないですよ、晴太郎さん(笑)。
山﨑
言ってそう(笑)。
川久保
そうそう。変化し続けていけたらいいかな。
山﨑
いや、でもやっぱり変化していくんだと思いますよ。その表現とか、デザインもそうですけど。やっぱり、社会の中に伝える相手だったりとか、その自分の中から絞り出すものって同じじゃいけないと思うんですよ、僕。可変しないってことは、自分が止まったっていうことの証明でしかないような気がするので。って、なんで僕がまとめてるんですかね(笑)。
川久保
でも本当に、そうだよ。
山﨑
では最後に、リスナーの方にメッセージをお願いします。
川久保
川久保拓司として役者を人生の半分ぐらいやってきましたけれども、これからもっともっと自分もいろいろなことに出会いたいし、それを見ていろいろな人を勇気づけたり、パワーを分けられたらいいなと思っているので、僕の芝居を見てもらいたいと思う反面、皆さんの応援のおかげで本当に前に進めています。これからも応援よろしくお願いします。
山﨑
はい。この時間は俳優の川久保拓司さんをお迎えいたしました。本日はありがとうございました。
川久保
ありがとうございました。

GUESTSGUESTS 一覧を見るMORE