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隔週水曜19:00-20:00ON AIR
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PROFILE

音楽家
haruka nakamura

青森県出身
最新作は「音楽のある風景」
2015年より、PIANO ENSEMBLE編成での全国ツアーを敢行中。ギター青木隼人とのDUOの旅「FOLKLORE」も続けている。
http://www.harukanakamura.com/

RADIO REPORT

vol.142015.12.1119:00-20:00

haruka nakamura × 山崎晴太郎

山崎
ソラトニワ銀座をお聞きの皆さん、こんばんは。アートディレクター、デザイナーの山崎晴太郎です。本日のゲストは、初の音楽家の方です。実は、この番組がはじまった時から、僕がずっとゲストに呼びたいと言い続けていた方で。なぜかというと、単純に、ファンなんですね。ということで、ゲストの方をお迎えしましょう。音楽家のharuka nakamuraさんです。
nakamura
こんにちは。
山崎
こんにちは、ようこそいらっしゃいました。まずは、僕のほうからプロフィールをご紹介させていただきます。harukaさんは青森県のご出身なんですね。最新作は『音楽のある風景』で、2015年よりピアノアンサンブル編成での全国ツアーを敢行されています。また、ギターの青木隼人さんとのデュオの旅「FOLKLORE」も続けられていますね。

普段閉じている感覚が開いていく瞬間。

山崎
僕にとっては、「ついに!」という感じなんですが、実際にお会いするのは3回目かな?こんな機会を、ありがとうございます。
nakamura
こちらこそ、ありがとうございます(笑)。
山崎
昔からすごく好きだったんですよ。CDも、全部持っていますからね。僕は2008年に結婚したんですが、結婚式の大事な場面で使った曲は、ほぼ全てharukaさんの曲です。
nakamura
いや、もう光栄です。
山崎
いえいえ。つい最近も、「THE PIANO ERA 2015」というピアノに焦点を当てたイベントにharukaさんが出演されて、目黒バーシモンホールに行ったんですが、あれは本当にすごかったですね。やっぱり、少し緊張しましたか?
nakamura
いや、結構無理を言って、いつものスタイルでやらせてもらったので。照明もちょっと暗かったでしょ?あの照明をつくってくれているのがchikuniさんという方で、全国を一緒に回ってくれていて、あの日も、「THE PIANO ERA」に合わせるように、新作の照明を置いてくれたんですよ。
山崎
へぇ、そうなんですね。あの灯りには、どんな意図があるんですか?
nakamura
光もそうだし、音もそうなんだけど。たとえば、暗いところに行った時って、目がだんだん慣れてくるじゃない?最初は真っ暗でなにも見えない。でも、だんだん見えてくる。それと同じように、現代人って、ずっと大きい音を聞いているから、耳を閉じているんだよね。閉ざしちゃってて。だから、静かな音のところで耳を澄ましていると、目と一緒で、耳も開いてくる。
山崎
なるほど。敏感になっていくというか、研ぎ澄まされていくような。
nakamura
うん。普段閉じている感覚が開いていくというのを、目と耳でちょっとチューニングしてほしくて。それで、あえて暗くしています。
山崎
おもしろいですね。音楽をはじめた当初から、そういう思考を持っていたんですか?
nakamura
いや、やっぱり旅していくうちに、いろいろな人との出会いがあって、勉強させてもらったのもあります。うちのメンバーには、ソプラノサックスに内田輝という男がいましてね。彼は、クラヴィコードっていう中世のピアノの原型になっている楽器を持って、日本全国を旅して回っていて。そのクラヴィコードってすごく音が小さくて、この会話より小さい音なのね。だから、本当に耳を澄まさないと、最初は「あれっ?これ大丈夫?」って感じるぐらい。でも、40分ぐらい聞いていると、もう普通の音に聞こえてくる。
山崎
なるほど、耳が開いていく感覚ですね。そういった形で今は演奏されていますけど、そもそもharukaさんが音楽をはじめたきっかけはなんだったんですか?
nakamura
もともと母親がピアノの講師だったんだけど、でもまあ、勝手にやっていたかな。一応4、5歳くらいの時に、基礎だけは教えられたんだけど、母親に教えられるって小学生は嫌じゃないですか?
山崎
ああ、そうですね。確かに。
nakamura
周りは女の子ばっかりだし。青森の田舎の育ちだったから、男の子でピアノをやっているような子はほとんどいなくて。それでやっぱり反抗もあって、教えられたものを全然違うように弾いていたんですね。
山崎
「型にはまらんぞ」みたいな感じで。
nakamura
うん。「楽譜の通りに弾きたくない」みたいな。どんどんアレンジして、変えていっちゃう。そういうのを繰り返していくうちに、もう楽譜そのものがなくても、自分で楽しく弾いていた。今になって思えば、あれが曲づくりだったと思うし、今もそんなに変わってない。たぶん一緒ですね。
山崎
なるほど。それが、即興というスタイルにつながっていると思うんですけど、harukaさんが今まで影響を受けた音楽家っていますか?
nakamura
バッハは、すごく好きですけど。今も生きている人だと、キース・ジャレットさんの曲は、本当に沢山聞いていて。『パリ・コンサート』という音源の中に、『October 17, 1988』っていう曲名というか記録なんだけど、これはもうずっと聞いてます。
山崎
それは、どんなところが好きなんですか?
nakamura
それは、ただただ、どストライクというだけで。こんなピアノが、死ぬまでに弾けたら最高だろうなっていう憧れです。

ただ、降りてきたものを通す、透明な存在に。

nakamura
harukaさんの場合は、即興で曲をつくっていくわけで、作曲というような感じではつくらないんですよね?
山崎
うん。家でなにかをつくるっていうのは、本当にここ何年もないですね。だいたい音楽家の人の家に行くと、機材が揃っていて、音響がばっちりでうらやましいんだけど、僕の家にはなんにもなくて。
nakamura
へぇ。うらやましいとは思うんだ?
山崎
うん、うらやましい。やっぱり知識もないし、たぶんそこに傾ける情熱がそもそもないから。家で録音するということに対して、がんばりきれないというか。それに、もともとひとりでやるのがそんなに好きじゃなくて。誰かと一緒にセッションして生まれるものだったりするんですよね、僕の中ではね。
nakamura
なるほど。即興で曲を生み出す時って、どういうふうにやっていくものなんですか?ライブとか、その場でしか生まれないものが出てくると思うんですけど。
山崎
たとえば、『音楽のある風景』という曲だったら、最後にその音楽のある風景に辿り着くように、「でも、そこまでは、全員フリーだよ」っていうやりかたが、今の形になっていて。最後のゴールに向かっていく道筋を楽しんでいて、「つくろう」というよりは、なんか、降りてきたものを、ただ通している感じ。それには、技術よりも、結構気持ちが大事で。自分の自我をどこまで失くすか、という。やっぱり「つくろう」「作曲しよう」ってなると、「自分のメロディーを聞いてくれ」っていう自我が生まれると思うんだけど、僕の場合は、「できるだけ薄いフィルターになりたい」というイメージがあって。
nakamura
なるほど。降りてきたものを、harukaさんという透明なフィルターを通して、お客さんに届けるような感覚ですか?
nakamura
「届けている」というよりは、「共有している」というイメージが強くて。同じ空間と時間を共有する。なるべく自分というものを失くして、自分そのものがピアノになっちゃうような感覚。手放したいという感じ。
山崎
肉体とか手放してしまう?
nakamura
そうそう。一番最初は、思想を手放したいわけですよ。かといって、全てを手放すということは、ほぼできなくて、やっぱり自分の好きなメロディーが出てくるし、身体が覚えたものが自然に出てくるんだけど。でも、できるだけ自我を失くして、身体が動くままに弾きたい。
山崎
harukaさんは今、アンサンブルの皆さんとやられているじゃない?自分ひとりだったら、自分が透明化していく感覚を、そのまま出していけると思うんですけど、アンサンブルだと、その中に、他者と調和していくという行為があって。そこを自由にすると、みんながばらばらになったりはしないんですか?
nakamura
最初はなりかけていたし、飽和もしていた。でも、アンサンブルの4人がものすごくすばらしい音楽家と演奏家さんで。どんどんどんどん、バターをつくっているみたいに混ざっていって、今の形になってきています。もう合わせてくれているんですよ。あっちも即興だし。こっちが弾いているものに対して、「ほう!じゃあこうしよう」とか。
山崎
へぇ、それはすごいな。
nakamura
あの人たちとやれることが、すごく楽しいんですよね。自分がなんとなく「あっ」と思って、ぽろぽろって出たメロディーをちょっと繰り返したら、それをすぐハモってきたり、フルートとかでユニゾンしきたりとか。本当に、すごく楽しい。

波に乗るように、音が生まれる。

山崎
ここまでharukaさんのお話を聞いてきて、たぶんリスナーの皆さんは、「この人の曲、聴いてみたい」と思っているんじゃないかな、と。どうですか?
nakamura
いいですよ。これは、まだ全然出してない曲なんですけど。
山崎
おお、いいんですか?そんな曲を。
nakamura
でも、まだ完成してなくて。それこそ、最近ライブ中に降りてきたピアノのメロディーがあって、それをちょっと録っておいた。一応、「リリーム」という曲名なんですけど。曲名もあるような、ないようなものですけどね。じゃあ、かけますか。
 
ーharuka nakamuraさんの未発表曲をラジオでON AIR。
山崎
いやぁ、すばらしかった。
nakamura
まだ完成してないからね。
山崎
完成度でいうと、どれくらい?
nakamura
うーん、この曲は、これから公開される映画のサントラ用につくっていて。だから、サントラとして、演技をしている後ろでかかっている分にはいいんだけど、曲として聞いた時に…。もう一回、全部録り直すという感じです。
山崎
そうなんだ。それは、どこにゴールがあるんですか?
nakamura
それは難しいね。これは、スタジオで1日好きなようにピアノを弾いて、そのなかで出てきたメロディーに、いろいろな音を足していった状態なんですね。今は、そのメロディーをライブとかでもやっていて、前よりも自分のなかで獲得しているというか、腑に落ちている状態になっているから、それを録りたいな、というのはあります。
山崎
なるほど。まだまだ、広がる余地があるというような感覚?
nakamura
そう。これを録った後に広がったから、もう一度録りたいな。
山崎
先ほどの降りてくる、という話。それはどういう感じなんだろう?
nakamura
うーん、なんというか、最初は、波に入るまでが結構大事なんだけど、波に入っちゃえば、もう次の波がぶわーって来る。サーフィンってやったことある?
山崎
うん、あります。
nakamura
あれと一緒で、海に入るまではちょっと怖いけど、入っちゃえば波がどんどんどんどん来るでしょ?自然に、それに乗っていくみたいなイメージ。
山崎
なるほど。でも、サーフィンだと波が全然来ない時もあるじゃない?音楽でも、やっぱりそういうことはあるんですか?
nakamura
もちろん。必死に起こそうとしても、やっぱり自然なものなので。起きなかったりしますね。
山崎
起きない時ってどうするんですか?
nakamura
みんなとやっている意味というのは、そこにもあって。アンサンブルで、あれだけ心強い人たちがいると、僕に波がない状態でも波を起こしてくれたりする。だから、もし、ひとりでやっていたらどうなるんだろう、とは思うけどね。
山崎
波が出やすいようなコンディションをつくるために、なにかやっていることってあるんですか?たとえば、写真集や映画、小説といったような、音楽以外のインスピレーション・ソースを持っていたり、というような。
nakamura
最近、具体的にそうなった本があって。今日も持ってきたんだけど、森勝見さんという人の『いのちおわるとき』という詩集で。これは、40年前に北海道のある神父様が、障がいをお持ちの方のための施設を建てたの。そこに森勝見くんという少年が入園してきた。もちろん障がいも持っているし、その時、彼はお父さんを亡くされたばかりで、すごく荒れていたんだけど。「みんなで作文を書こう」と言われても長い文章が書けなくて、でも「詩は書けるよ、僕」と言って、詩をいっぱい書いてた。それを神父さんが見つけて、「この詩はすばらしい」となって詩集をつくったのね。それがこの本なんだけど。
山崎
へぇ、なるほど。どれか紹介してもいいですか?
nakamura
ぱらっとめくったところのがいいんだよね。うーん、これいいんじゃないかな。ぱっと開いたところにあった、『生まれる』って詩。短いし。
山崎
じゃあ、ご紹介しましょう。「『生まれる』。人は生まれてくるたびに増えていく。生きていくたびに汝と彼らは死んでいく。人はその運命である。」
nakamura
うん。もう、そのままなんだけど。
山崎
魂がぐっと入ってくるような。ピュアというか。
nakamura
そう、少年が、そのまま書いているんだよね。こういうのがいっぱいあって。水のように、言葉が流れていくの。こういうのを読んでいるだけで、インスピレーションというわけじゃないけど、吸収してます。

音楽とは、沈黙。

山崎
この詩集もそうですけど、自分の世界観を、あえて広げようとしている部分はあるんですか?
nakamura
ううん。自分で探すということは、ほとんどなくて。旅もそうなんだけど、旅に出れば、こういう本や景色とも出会うし。なんか源みたいなところに向かっていくヒントが、ちょこちょこやってきて、それを得ていく、という感じ。
山崎
なるほど。今、旅というものが活動の軸になっている部分があると思うんですが、そういう姿勢になったきっかけはなにかあるんですか?
nakamura
3年前ぐらいに、青木隼人さんというギタリストの方とデュオを組んだんですよ。青木隼人さんというのは、日本各地をひとりでギターを持って旅して、CDも自分でつくっている人で。青木さんのCDって流通してないんですよ。でも、自分で持っていってお店の人に手渡ししている。お店の人は、「青木さんのCDなら」と言って置いてくれて、ずっと青木さんの曲がかかっているような、すてきなお店が全国にいっぱいあって。そういう旅をしているのを見ていて、もともと憧れていたし、リスペクトもしていて。それが一緒に組むことになって、青木さんの今までの旅の軌跡を、一緒に回るような感じになって…。それから、どんどんのめり込んでいったというか。
山崎
いいですね。これからも、まだまだずーっと旅をしながら?
nakamura
うん、しばらくは。
山崎
止める時もくるんですか?
nakamura
わからない。命終わる時かな。
山崎
なるほど。そんなharukaさんにとって、「音楽」とは?
nakamura
音楽とは…、沈黙かな。
山崎
沈黙。その心は?
nakamura
最初のほうにも言ったけど、耳を澄ますこと、目を開くこと、感覚を開くこと、祈ること。たとえば、川があって、そこから入って、源流とか、源泉へ向かっていくような。そういう作業を、音楽という川でもしている。でも、それは、ほとんど祈りに近くて。耳を澄まして聞くこと、静寂をつくること、だったりするんだよね。だから、できるだけ沈黙に近い状態に持っていきたい。
山崎
ああ、それはharukaさんの曲を聴いていると、すごくわかるような気がします。でも、ここで僕がなにか言いはじめると、番組内で収まらなくなってしまうので、それはまた後で(笑)。ということで、最後にリスナーの方にメッセージを。
nakamura
最近、銭湯に行く人が減っていて。
山崎
ちょっと(笑)。それ前回のゲストの田中さんと同じメッセージじゃないですか。でも、僕とharukaさんは風呂好き仲間なんだよね。
nakamura
うん、ライブ前に必ず入る。今日も入ってきたよ、銭湯。はじめて行った三軒茶屋の銭湯だったんだけど、隣のおじさんにちょっと席を譲ったら、「ありがとう」と言って入浴券をくれた(笑)。そういうすてきな場所なんだけど、やっぱり銭湯に行く人が減っているので、みんなもっと銭湯に行って、銭湯文化を守ってほしいし、身体を温めてください。
山崎
最後の一言ね、先々週と全く同じことを言っているから(笑)。
nakamura
本当に?つながってるよ(笑)。
山崎
つながっているんですね(笑)。ありがとうございました。本日のゲストは、haruka nakamuraさんでした。
nakamura
ありがとうございました。
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