銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン

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PROFILE

デジタル・コミュニケーション・コンサルタント
市川 渚

ファッションデザインを学んだ後、海外ラグジュアリーブランドのPR、有名クリエイティブエージェンシーにてコミュニケーションマネージャーを経て、現在はフリーランス。ファッションとデジタル テクノロジーの間に立ち、2つの分野の橋渡し役としてデジタルコミュニケーションのコンサルティング等に従事。2015年10月には「DiFa」編集長に就任。(※2016年4月末にDiFa編集長を退任)その他にもファッション関係のウェブサービス運営や記事執筆、セミナー/大学講師など活躍は多岐にわたる。

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RADIO REPORT

vol.172016.02.1219:00-20:00

市川渚 × 山崎晴太郎

山崎
松屋銀座屋上、ソラトニワ銀座からお送りしております。銀座四次元ポケットプレゼンツ、山崎晴太郎の銀座トークサロン。アートディレクター、デザイナーの山崎晴太郎です。それではここでゲストの方をお迎えいたしましょう。デジタル・コミュニケーション・コンサルタントの市川渚さんです。ようこそ。
市川
こんにちは。ご無沙汰しています。
山崎
ご無沙汰しております。まずは、簡単に市川さんのプロフィールをご紹介させていただきます。デジタル・コミュニケーション・コンサルタントであり、WEBマガジン『DiFa』の編集長も務められています。ファッションデザインを学んだ後、海外ラグジュアリーブランドのPRや有名クリエイティブエージェンシーでのコミュニケーションマネージャーを経て、現在フリーランスとしてご活躍中です。ファッションとデジタルテクノロジーの間に立ち、ふたつの分野の橋渡し的な存在として、デジタルコミュニケーションのコンサルティング等に従事。2015年10月には、『DiFa』の編集長に就任。その他にもファッション関係のWEBサービス運営や、記事の執筆、セミナー、大学講師など、活動は多岐に渡るということですね。(※2016年4月末にDiFa編集長を退任)

テクノロジーを女性のリアルな生活の中に。

山崎
「お久しぶりです」から始まりましたが、出会いは先ほど紹介した『DiFa』というデジタルファッションに特化したWEBマガジンの立ち上げでしたね。僕はアートディレクターとして携わらせてもらいましたが、その後、『DiFa』の調子はどうですか?
市川
メディアとしては、おそらく「いいね」と言われるような状況なんじゃないかと思います。
山崎
いろいろな試行錯誤をされているみたいですね。
市川
運営側は結構大変ですね。少ない人数で運営しているので(笑)。
山崎
今、体制としては何名ぐらいですか?
市川
3人です。
山崎
えっ、3人!それは大変だ(笑)。でも、周りの人からの評判はいいですよね。
市川
そうですね。メディアのコンセプトとして、最初から「コアになるユーザーの人たちの心を、まずはがっつりとつかみたい」というのがあったので。そこはできているのかな、という手応えを感じています。
山崎
スタートアップって、いろいろなトライ・アンド・エラーはあると思うんです。どのあたりが評判がいいとか、手応えがあるなというのはありますか?
市川
これはメディア全般がそうだと思うんですが、すごく「物」にフォーカスした記事より、なにかしら「人」が介在しているような記事に対して、ユーザーからわかりやすい反応がありますね。
山崎
それは、その人の周辺にいる人が反応しているという感じですか?
市川
と言うより、目新しいデバイスを取り上げるようなメディアなので、単純に物ありきで紹介するよりも、「人が使ってみてどうだったか?」というようなことが入り口になるという意味ですね。
山崎
なるほど。まだ、物だけを語っても、みんなが自分ごと化しにくいと言うか、距離があるということですね。渚さんは今日もApple Watchを着けられていますけど。
市川
これ、時計として便利ですね。
山崎
本当に?
市川
時計として便利です。
山崎
いやいやいや、ほら編集長だし、いろいろと。
市川
時計として便利です(笑)。
山崎
かたくなですね(笑)。毎日使っていますか?
市川
そうですね。これは本当に私の趣味で買ったものなので、毎日使っていますよ。スポーツの時は、ここのバンドをシリコンベルトに替えたりしています。
山崎
充電とか大変じゃないですか?
市川
女性って、そこはあまり気にならないのかなと思っていて。なぜなら、指輪とかも帰ったら外すじゃないですか。その横に充電器も置いておけばいいんですよ。
山崎
なるほど。そこに置けばいいだけだから。
市川
そうそうそう。私、一度も気になったことがないですね。
山崎
そうなんですね。僕はだめなんですよ。ピアスとかも外さずにずっと同じものをしているから。指輪も外さないし。
市川
男性はおっしゃいますね。女性の場合は、ファッションアイテムだからこそ、毎日替えたりするわけじゃないですか?だから逆に、そこの点では、女性に向いているのかなと思いますね。
山崎
それはおもしろい視点ですね。ちなみに、『DiFa』編集長という立場を最初に依頼された時は、どんな感じだったんですか?
市川
突然、某誌でファッションエディターをやっている友人からLINEで「なぎ、編集長興味ない?」って言われて。最初は意味がわからなくて「どういうことなの?」って聞いたら、「ファッションとデジタルのメディアをつくりたいと言っている知人がいて、編集長を探しているんだけど」って言われて。よくわからないけど、「聞くだけ聞いてみようかな」という感じでしたね。
山崎
結構、眉唾的なスタートだったんですね(笑)。それを、なぜ引き受けようと思ったんですか?
市川
とりあえず「この分野で今、編集長をやれる人は、おそらく私しかいないかな」って思ったんですね。それと、今フリーランスになって3年目になるんですけど、発信されたものに対して反応していく側ではなくて、自分でメディアを持って、発信できる側になるというのは、自分の仕事としてもプラスだなと考えたのもありますね。
山崎
なるほど。デジタルとファッションの融合って、伝えるものの前例がないじゃないですか?それを伝えるうえで、なにかルールなどを決めていたりはしますか?
市川
『DiFa』というメディアは、女性に向けて発信しているんですね。例えば、Apple Watch単体で興味を持つ女性って、存在はしていても、「へぇ、Apple Watchなんだ。ふーん」というくらいの関心の人が多くて…。
山崎
そうですよね。
市川
そこで、私がApple Watchを身に着けていることで、「へぇ、そうやってみるとかわいいね」って感じてくれる人が出てくるんですよ。そうやって自分自身で体現したりとか、女性のリアルな日常に全てを落とし込んであげるというのは、編集の方針として意識しているところのひとつですね。
山崎
なるほど。その時に、意識をしている女性像というか読者像みたいなものはあるんですか?
市川
そうですね。うちのメディアでは「デジタルファッショニスタ」っていう、カタカナで呼んでいるんですけど、その言葉ももうちょっと考えなきゃなと思いながら(笑)。要するに、好奇心旺盛で、自分がお洒落をすることに対してすごく興味がある。尚且つ、デジタルだったりとか、新しいものに対してのチャレンジ精神も持っているような人たちですね。年齢やテイストでターゲットを切ると言うよりは、そういう姿勢のある人たちという感じです。もちろんそれは、男性でも構わないんですけど。

デジタルとファッションの原体験。

山崎
毎日なにかデジタル的なニュアンスをファッションに取り入れないといけない、といような感覚はありますか?
市川
いや、そこまで義務感は持っていないですけど、もともとそういうものが好きなのでナチュラルに取り入れていますね。
山崎
なるほど。最近はどんなウェアラブルを使われていますか?
市川
Apple WatchかAndroid Wearのどちらかは必ず身に着けていますし、RINGLYも使っていますね。あと、WISEWEARっていうバングル形のスマートジュエリーをちょうど今、オーダーしているところです。
山崎
市川さんみたいな女性の方がデジタル系って、結構珍しいですよね?
市川
私の場合は、子供の頃からインターネットとかパソコンが大好きで。それで、そういう人間がたまたまファッションも好きになっちゃっただけなんですよね。
山崎
自分の中での軸足ってどっちですか?両方と言いたい気持ちはわかるんですけど、全ての梱包を解いていった時に、最後に残るとしたら?
市川
インターネット。
山崎
あ、インターネットなんだ。なるほど。
市川
たとえば、インターネットを禁止されて、「外でお洒落なファッショニスタやってなさい」と言われるのと、「ファッショニスタはやめてインターネットやってなさい」と言われるのだったら、「じゃあ、インターネットやってます」って言うと思いますね。
山崎
それはなにか、きっかけとかあったんですか?
市川
もともと、エンジニア家系なんですよね。すごくものづくりが好きな家庭で。なんでも「自分でつくれ」というような家だったんですけど、みんな新しいもの好きなところがあって。すごく昔の話ですけど、はじめてキーボードを叩くようなデバイスに触ったのはワープロでしたね、懐かしの。
山崎
懐かしい、ありましたね。
市川
ワープロに「外字」っていうドット絵を書いて絵文字を作る機能があって、それでキティちゃんの絵とか書いて、テープに印刷して遊んだりしていましたね。あれは、たぶん小学生ぐらいの時かな。
山崎
それは早いですね。よく男性の場合は、Windows 95が出てきて、それでエッチな画像を見ようとして、みたいな話がパソコン系の原体験になっていたりしますけど、女性の場合は別のベクトルで原体験があるわけですよね。市川さんの場合は、なにがそんなにイノベイティブだったんですか?
市川
当たり前ですけど、当時のパソコンって、まだインターネットにつながっていなかったじゃないですか?その時も、コンビニをつくるゲームとかシムシティとかが好きで、よく遊んではいたんですけど。それがある時、「インターネットにつないでみよう」という話になって。そうしたら、知らない人たちとコミュニケーションが取れるようになって、「うわぁ、なんだこれ!」とびっくりしたんですね。当時って、自分で情報を発信するプラットフォームの1つとしてジオシティーズがあって、あれって趣味によってコミュニティがわかれていて…。
山崎
ありましたね、ジオシティーズ。番地がわかれていましたね。
市川
そう、番地がわかれていて。当時、すごく好きなアーティストがいて、その番地に家みたいな感じでホームページを建てておくと、いろいろな人が来てくれるんですよね。
山崎
掲示板とか、キリ番とかありましたね。
市川
そうそう。そこで、知らない人に会えて、しかも自分と趣味嗜好が同じ人に会えるというのが、本当に驚きというか、楽しくって。それが私のインターネットの原体験ですね。
山崎
なるほど。インターネットの「つながる力」に惹かれたわけですね。
市川
そう。それまでは、地元の小学校、中学校という、すごく狭い世界にいて、その中でイジメにあったりもしていて、「もう嫌だ」とか思っていたんですけど(笑)。その世界を、インターネットがパッと開いてくれたんです。未だに仲のいい友達のひとりは、私が中学2年生くらいの時に自分がつくったサイトで出会った子ですよ。しょっちゅう、一緒に飲みに行っています(笑)。
山崎
そういう流れでパソコンやインターネットにはまった人って、そのままエンジニアとかそっちのほうに行く人が多いじゃないですか?でも、市川さんの場合は、そこからファッションという全く違うベクトルに進んだわけですよね?
市川
そうですね。中学3年生くらいから、原宿とかに行き始めて…。当時、今で言うきゃりーぱみゅぱみゅ的な、ああいう原宿カルチャーに生きていた人間だったので、ファッション的には。日中はファッション、夜はインターネットみたいな感じでしたね。
山崎
それは原宿ファッションと言うか、今で言う青文字系みたいな感じだと思うんですが、そっちに惹かれた理由みたいなものはあるんですか?それこそ、毎日ネット漬けで、服はお母さんが買ってきたのを着る、というような人もいると思うんですけど。
市川
ファッションは、もともとうちの母が文化服装学院を卒業していたので、小さい時から自分が想像した服をつくってもらったりしていたんですね。小学生の頃「安室ちゃんみたいなスカートがほしいけど、サイズがないからつくって」という感じで。
山崎
なるほど。もともとファッションに対する嗜好もあったんですね。
市川
そうですね。それがすごく今に通じているというわけではないんですけど、やっぱり「欲しいものがあったら自分でつくれるんだ」と思うようになったのは、母の影響だと思います。
山崎
さっきも似たような質問をしましたけど、その感じだったら、普通はつくるほうに進みませんか?
市川
そうですね。19歳くらいまでは完全にデザイナーを目指していました。当時って、モード界では、すごくクリエイティブなファッションが流行っていた時代で。おもしろいデザイナーもいっぱいいて、学生ながらにみんなそういうものをつくろうとしたがる時代だったんですけど。自分には、決定的に才能がないなとわかってしまった。
山崎
あぁ、なるほど。見切りが早いですね。
市川
いかにきれいにつくるかとか、いかに要領よくつくるかとか、そういうのは得意だったんですけど。「私は全然、新しいものをつくれていないじゃん」みたいなことを思ってしまって。
山崎
ゼロ・イチの感じですかね?
市川
そう。それで自分はたぶん、1の要素を10にするようなことのほうが得意なんだなと思って。格好よく見せるとか、演出するとか。それでスパッと止めましたね、つくるほうは。
山崎
へぇ、潔いですね。そこはなんかジレンマとかなかったですか?
市川
ないです。そこは潔く、ダーンってシャッターを下ろして、「さあ、次!」みたいな。

ふたつの分野の融合を、よりビジネス的な視点で。

山崎
ファッションとデジタルで、それぞれの原体験があった中で、そのふたつがつながりはじめたのはいつ頃からですか?
市川
社会人になって、はじめはPRをやっていたんですね。それが22歳の時だから、9年ぐらい前なんですけど。PRをはじめて4年目くらいに、日本でもtwitterとかが話題になってきたタイミングだったと思うんですけど、そのあたりからなんとなくデジタルというキーワードをファッション界隈でも耳にするようになったような気がします。5〜6年くらい前ですかね。
山崎
それは「自分が好きでやっていたことが、結構使えるんじゃないか?」という感じだったんですか?
市川
いや、むしろ「ようやくか、遅いよ」みたいな。
山崎
なるほど。そういうキャリアの積み方って、あんまりないですよね。普通は、すでにあるものの中で自分をチューニングしていく人がほとんどだと思うんですよ。でも、市川さんの場合は世の中になかったものを描いていく。それって、さっきの話とは逆で「ゼロ・イチじゃん」と思うんですけど。
市川
まぁ、でも、基本的にはあるものなんですよね、世の中に。私が新しいものをつくり出している感覚っていうのはやっぱりなくて、あるものをどう組み合わせていくか、みたいな話なのかな。
山崎
デジタル・コミュニケーション・コンサルタントでしたっけ?
市川
某ハイパーなんとかクリエーター並に怪しいんですけど(笑)。
山崎
いいと思いますよ(笑)。字面でわかりますからね。ちなみに、先ほど軸はデジタルのほうというお話がありましたけど、「ファッションに支えられた」みたいな体験ってありますか?
市川
ファッションを好きになってなにがよかったか、と考えると、やっぱり自分に自信がついたというのが一番ですかね。もともとすごく人見知りで、子供の頃から知らない人とは誰ともしゃべれない感じだったんですよね。だから、PRに進んだというのもある意味、「そういうところにいかないとだめになるぞ」という対処療法的な感じだったんですけど。
山崎
PRって、まさにフロントですもんね。
市川
そう。そこにいられるのも、ある意味、ファッションという仮面を被っているからなんですよね。
山崎
なるほどですね。今はどうですか?その仮面は素顔になりましたか?
市川
いや、今もそうです。
山崎
でも、当時と比較して環境が全然違うじゃないですか?それって、常にフロントでキャッチアップし続けているという感じなんですか?最近は、SNS疲れというような話も聞きますけど。
市川
そうですね。意識して「もう、私はデジタルデトックスするわ」みたいなのはないですね。やっぱりインターネットがつながらない環境にいると、すごく不安になります。
山崎
なるほど。それは、どういうふうにネットワークと向き合うのがいいんですかね?「疲れた」とかってなっちゃう人は、結構近づき過ぎてしまっているのかな、と思うんですけど。
市川
なんでしょうね。私の場合は、リアルな世界で生きている自分がいるからこそ、インターネットにもいる理由があるという部分が大きいので、ひとつのツールとして使うという感覚ですね。やっぱり、客観視するというのは、何事に対しても大事じゃないですか?その視点は持っていたほうがいいとは思います。
山崎
自分を俯瞰して見られるかどうかってことですか?
市川
自分もそうだし、ネット自体も。たとえば、今読んでいる記事があったとして、でもそれをあんまり信じすぎずに、一歩引いて見る、というか。ちょっと冷静になってみるというのは大事な気がしますね。
山崎
今の毎日って、デジタルとファッションを割合でわけると、どんな比率になりますか?
市川
今はデジタルが濃くなっちゃっているので、意識的にファッションを求めているところがありますね。
山崎
それは、もともと本質的にデジタルのほうが好きだからですか?
市川
いや、仕事内容としてデジタルに寄っちゃっている感じがあるので。仕事としては両方ともフォローしないといけないんですけど、純粋にファッションブランドの展示会とかに行って、いいものを着て、いいものを触っている時というのは、やっぱり至福の時間なんですよね。
山崎
そういうのもありますよね。やっぱりファッション業界の中に、デジタルが浸透してきている感じはありますか?
市川
いや、まだまだナチュラルに存在している感じはないですね。
山崎
そうですよね。「デジタルをやらなきゃ!」という感じで出てくるイメージですよね。そのへんは、今後どうなっていくと思いますか?
市川
やっぱり、時間をかけて溶け込んでいくんだと思います。
山崎
ファッション業界の場合、デジタルが入り切らないという可能性もあると思いますか?
市川
いや、そこは他の業界やジャンルと同じだと思います。業務フローひとつをとっても、デジタル的なツールを使ってすごく効率化ができるなかで、それをやらないというのは、ファッション産業が衰退していくことにつながると思うんですよね。
山崎
なるほど。そういう部分もやっていきたいという思いもあるんですか?
市川
やっぱり、業界自体に対してデジタルを活用した分野で何かしら貢献していきたいというのはあります。ものづくりとか、一般消費者に向けてと言うよりは、業界の無駄なところだったりとか、賃金の安さ、利益率の低さとか、ビジネス的な問題を解決していくようなことを、もっとできたらいいなと思いますね。
山崎
ビジネス感覚みたいなものが結構強いんですね。
市川
単純に無駄が嫌いなんですよ、とにかく。無駄と面倒臭いことが嫌いなんです(笑)。

デジタルも、ファッションも、ひとつのツールでしかない。

山崎
話は変わりますけど、市川さんは大学でも教えられているんですよね?
市川
そうですね。去年の4月から半期半期で授業を持っていたんですけど、ちょっといったん今年は、お休みをしようかなと思っています。京都精華大学というところで、ブランドPRという授業を行っていたんですけど。
山崎
そういう授業があるんですか、大学に。ブランドPR?
市川
そうです。京都精華大学にはファッションコースというのがあるんです。ファッションをつくるための授業は充実しているんですけど、ブランディングやPRという視点が全く足りていないという背景があって。知人を介して、そこを足してくれないかというお話をいただいたんですね。
山崎
なるほど。ファッションって、ブランディングとかビジュアルコントロールが最も高いレベルで求められる業界じゃないですか?それを、どのへんから握りはじめるんですか?
市川
だから大変ですよ。その視点に気がつかない人は、永遠に気がつかない。でも、これだけ「ビジュアルコミュニケーションが大切だ」と言われている時代に、その視点がないと成功はできないですよね。だから、そういう部分を学生時代のうちに基礎から教えるという感じです。
山崎
プレスをやっていた時の経験や今の経験を学生に伝えるという感じですか?
市川
そうですね。
山崎
それは、なんでやろうと思ったんですか?
市川
やっぱり、今になって思うのが「いいものをつくるのなんて、みんな同じだよ」という感覚があるんですよね。でも、そういうことを学生時代に知れなかった、という思いがあって。もっと早い時期から気がついていれば、いろいろなことができただろうなと思うので、今の私が知っているような視点を持った人材をファッション業界に増やしたいという感じですかね。
山崎
業界をメタ化して見るような視点なんですかね?
市川
それはあると思います。昨今、すごく暗い話ばっかり聞くじゃないですか?「ファッションなんてどうでもいい」とか「みんなノームコアでなんでもいいんだ」とか。そういう話を聞くと、やっぱりなんだかんだ言って、ファッションが好きなので、どうにかしたいって思いが湧きますね。
山崎
逆に、テクノロジー業界に対して、そういう思いが湧いてくることはないんですか?
市川
それもあります。テクノロジー界隈で「ファッションでなにかやろう」というプロジェクトって多いじゃないですか?そこにコンサル的な形で入らせていただくことも多いんですけど。ファッション、ということに対して、なにかしらの明確な方向づけをしていくことで、例えば、ファッション側の方にも素敵、面白いと受け取ってもらえるようなプロジェクトが増えると良いなと思いますね。
山崎
業界の境目って、思っているより厚いですもんね。
市川
今、アートとテクノロジーって、完全に融合しているじゃないですか?だから、長い時間をかければ、ファッションとテクノロジーも仲良くなれるんじゃないかなって思っています。
山崎
なるほど、すばらしい。最終的にやりたいことって、なにかありますか?
市川
今、やっぱりファッションとデジタルが両方わかる人というのが少ないようで、ありがたいことにいろいろな相談をいただくんですけど、一人だと動ききれない部分もあって…。今後は、もうちょっと人を育てるようなこともしていきたいなと思いますね。
山崎
エージェントとか、そんな感じになっていくのかもしれないですね。
市川
そうですね、人を育てて、もっと業界にどんどん送り出して、業界に貢献していくみたいなことを将来的にはやれたらいいのかなって思っています。
山崎
なるほど。そろそろ時間もなくなってきましたが、デジタルとファッション、このふたつの本質はなんだと思いますか?
市川
やっぱり、デジタルも、ファッションも、それぞれひとつのツールでしかないということがすごく大きくて。もちろん、どちらも掘り下げればいろいろな要素があると思うんですけど、それを各々どう使うか、というところが一番大事なのかなと思いますね。だから、デジタルとファッションを混ぜ合わせようと無理をするのではなく、「その先に、なにをしたいのか?」という部分に目を向けてもらえたらなと思います。
山崎
明確な目的を持って、ツールとして利用していくことが大切ということですね。ありがとうございます。この後もまだまだ、リアルトークサロンのほうで市川さんのお話をお伺いしたいと思います。
市川
ありがとうございました。
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