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PROFILE

博士(政策/メディア)
渡邊 恵太

1981年東京生まれ。博士(政策・メディア)。インタラクションの研究者。知覚や身体性を活かしたインターフェイスデザインやネットを前提としたインタラクション手法の研究に従事。2009年慶應義塾大学 政策メディア研究科博士課程修了。2010年よりJST ERATO 五十嵐デザインインタフェースプロジェクト研究員。東京藝術大学非常勤講師兼任を経て2013年4月より明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 専任講師。Cidre Interaction Design株式会社 代表取締役社長。
ロボット扇風機『AirSketcher』でグッドデザイン賞を、待ち時間に合った動画コンテンツを流す『CastOven』でMashup Awards 7の優秀賞を獲得するなど、多数の受賞歴あり。
http://cidre.tokyo/

RADIO REPORT

vol.52015.07.1019:30-20:30

渡邊恵太 × 山崎晴太郎

山崎
ソラトニワ銀座をお聞きのみなさん、こんばんは。アートディレクター、デザイナーの山崎晴太郎です。本日のゲストは、最近話題になっている本『融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論』の著者、渡邊恵太さんをお迎えしております。僕もこの本を読ませていただいて、すごい本だなと感動して。それまでまったく面識がなかったんですが、Facebookで「ラジオに出てくれないかな」とつぶやいたところ、とある方がご紹介してくれて、本日ゲストとしてお迎えすることができました。ということで、明治大学教員の渡邊恵太さんです。こんばんは。
渡邊
こんばんは。
山崎
まずは、プロフィールを簡単にご紹介させていただきますね。ユーザーインターフェイスやインタラクションデザイン研究における気鋭の若手研究者ということで、2009年に慶應義塾大学の政策メディア研究科博士課程を修了、2010年よりJST ERATO 五十嵐デザインインターフェースプロジェクト研究員、東京藝術大学 非常勤講師を兼任されて、2013年4月から明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科の専任講師をされています。さらに、Cidre Interaction Design株式会社の代表取締役社長もされているんですね。さまざまなプロジェクトも手がけられていて、ロボット扇風機『AirSketcher』でグッドデザイン賞を、待ち時間に合った動画コンテンツを流す『CastOven』でSmashup Awards 7の優秀賞を獲得するなど、多数の受賞歴がある方です。

分野を越えた、「融ける」という感覚。

山崎
先ほどもちょっとお話しましたが、『融けるデザイン』を読ませていただきました。
渡邊
ありがとうございます。どういうきっかけだったんですか?
山崎
たしかFacebookかなにかで、誰かが読んで紹介していたのを見たのがきっかけだったかな。普段はあまりデザイン書って読まないんです。
渡邊
そうですよね。出版の方に「デザイナーはデザイン書のところで本を買わないよ」って言われて。それで、デザイナーの人は買ってくれないだろうなと思っていました。
山崎
僕は、昔から自分の中のデザインテーマとして、人の心をどう動かすか、だったり、“身体性”みたいなところに興味があって。そういう分野の名著みたいなのは、結構読んではいたんです。まさに渡邊さんの分野というか領域だと思うんですけど、それで気になって買ってみたら面白くて。タイトルが『融けるデザイン』ということで、人と機械やコンピュータの境界線であったりとか、文系と理系の境界線であったりとか、仮想と現実の境界線であったりとか、そのような既存の境界線が融けて融合していくというイメージが強かったんですけれども。この「融ける」という感覚って、研究のテーマとしてずっとあったものなんですか?
渡邊
本の中の内容で結構、日常に溶け込むとか、コンピュータをいかに生活に溶け込ませるか、みたいなテーマが何度も出てくるので、最初はさんずいの方の「溶ける」がイメージとしてあったんですけど、ちょっとこれダサいかな、という議論があって。それで、「分野の融合」みたいな意味での「融ける」もあるよねって話になり、この漢字で『融けるデザイン』にしようと。
山崎
なるほど。ちなみに先ほど「デザイナーはデザイン書を読まないんじゃないか」みたいなお話をされていましたけど、それでもデザインとタイトルにつけたのは何かこだわりがあるんですか?
渡邊
僕、デザイナーじゃないのにデザインとか言っちゃっていいのかな」みたいな思いもあって、タイトルは本当に悩みましたね。発売が2015年の1月だったんですけど、前の年の6、7月に実はAmazonには上がっていて、そのときは『すべては体験に収束する ―デザインはどこにあるのか?』というタイトルだったんですね。デザインって言ってしまうのが本当にいいのかどうかってすごく悩んだんですけど、でも出版社の方から「いや、もうデザインで行きましょう」という言葉をもらって、こういうタイトルをつけたような記憶があります。
山崎
ちなみに、UI(ユーザーインターフェイス)やUX(ユーザーエクスペリエンス)がご専門だと思うんですが、ラジオを聞いている方に簡単に説明すると、どういった内容ですか?
渡邊
昔は“見やすさ”とか“分かりやすさ”というのは、グラフィックデザインの領域だったと思うんですけど、今度はそこにコンピュータや機械が入ってきた。そうすると、使いやすいと言っても、別にボタンが押しやすいから使いやすいってことだけじゃなくって、ボタンを押した上で、かつ、その画面がどうやって切り替わっていくのか、使う人が迷子にならないようにしてあげるというようなデザインを考える必要があって、そこに生まれる分野がインターフェイスデザインということかなと。
山崎
本の中では、道具の透明性みたいなところについていろいろ言及されていたと思うんですね。簡単に言うと、人がある道具を利用しているときに、その道具自体が意識から消えていくというか、自分の身体と一体化するというか。ペンのたとえ話をされていたと思うんですけど。
渡邊
ペンとか……あとは、マウスの話が途中から中心になってきますね。
山崎
そうですね。要は、初めて使う道具って、道具を恐る恐る使って、道具に意識が集中しているんだけれども、透明性を獲得していくにしたがって、その道具というものがどんどん身体に近づいていって、その先のもたらす行為のほうに集中する、みたいな話だと僕は認識をしたんですけれども。透明性という視点でご自身が「これがマスターピースだな」とか、「この道具だな、一番は」っていうのは何かありますか?
渡邊
ちょっと、あまのじゃく的な答えかもしれないんですけど、自分の身体ってまさに透明化していますよね。だから、それがマスターピースなんじゃないですかね。
山崎
なるほど、身体が。
渡邊
まぁ、でも日常的に使うものとしては、何でしょうね。靴とかっていうのは割とわかりやすく透明化していて。ちょっと違う靴を履くと全然意識が変わって、またしばらく履いていると慣れて、っていうようなところはありますよね。
山崎
逆に、使いにくいインターフェイスを人間側が飲み込んでいく、みたいなこともあるんでしょうか?たとえば、料亭で使われるような包丁とかもたぶんそうだと思うんですけど、最初って全然切れなかったりするじゃないですか。でも、そこに自分の中に取り込んでいくための型みたいなのがあって、人間が逆に道具に寄っていくというか、長い時間と鍛錬を重ねて自分の身体を透明に溶け込ませていくというか。
渡邊
身体側から寄っていくというのは、研究の関係上「そうするとやっぱり訓練だよね」みたいになってしまうので、あまりやってきていないのですが、でも、あるとは思いますね。今度、『融けるデザイン』の選書フェアをやるんですけど、選んだ本のなかのひとつに合気道の本を入れたんですよ。合気道って、やっぱり流れの中で相手の力をうまく使う武術なので、相手と“融け合う”というイメージにつながるなと思って。
山崎
なるほど、確かにそうですね。
渡邊
合気道は、物と人間じゃなくて、人間と人間なんですけど、でもそこにはデザインのヒントがいっぱいあるなと思って、読んでいて結構感動しましたね。その本には「合気道は動く禅だ」というよう話が書かれていて、いかに動きを止めないで力を使うかといった、先ほどの型というような話とは、また違うかもしれないですけど。機会があったら、ちょっと合気道をやってみたいなという気になりました(笑)

人間とそれ以外のものをつなぐということ。

山崎
最近はどのようなことを研究されているんでしょうか?
渡邊
最近の研究を一個持ってきているんですけど、ちょっとラジオだとどうしようもなく伝えにくいのですが…。
山崎
今、渡邊さんがiPhoneの画面を開いています。
渡邊
出ました。これは『ライブテクスチャ』というもので、iPhoneの画面などで動くものなんですけど。iPhoneをちょっと傾けてもらうと……、動いているのが分かりますかね?
山崎
おお、動きました!
渡邊
これは、仮想の光源があって、それでiPhoneを傾けると連動して光が動くというものなんですけど……、今度は光の連動を止めたので、これで動かしてみてください。
山崎
あ、感じ方というか、見え方が全然違いますね。
渡邊
今までテクスチャとしてリアルなものって静止画のきれいな壁紙を張っていたんですけど、ライブテクスチャは、iPhoneの傾きに応じて光の反射の仕方やきらめき方が変わるんです。腕時計とか、アクセサリーとか、たぶん自分につけたときにキラキラしているのがうれしいし、その自己帰属した反射が、実はすごい気に入っているんじゃないかなということで、こういうことをやっています。わかりやすい例でいうと、ビックリマンシールって世代的にピンときやすいかなと思うんですけど。
山崎
ありましたね、はい。僕も集めてました。
渡邊
キラキラシールって、コンピュータ上でやると、アニメーションではもしかしたらできたかもしれないけど、何かそれってうれしくなくて。やっぱり手に持って、ピカピカしてラメってる感じが出せると見ているだけで全然飽きない。グラフィックではあるんだけれども、ちょっとした光の反射をインタラクティブにすることによって、所有感が少し高まるんじゃないかなっていうようなことを最近は研究しています。」
山崎
おもしろいですね。ラジオで伝えづらいのが非常に悔しいんですけど、傾けるとキラついてるんですよね。これだけを言葉で聞くと、「へー」って感じだと思うんですけど。自分でやると全然違いますよね。質感というか、なんだろう…。
渡邊
これは本の中でも紹介しているんですけど、ダミーカーソルをいっぱい出して、その中で自分のカーソルを人はどうやって認識しているのかっていう実験をやったんですね。そうしたら、「動きの連動が一番重要である」という結果が得られたんですよ。複数の同じ色・形のカーソルがある中でも、動きさえ自分の手と連動していれば、自分のカーソルが見つけられるってことが分かったんです。つまり、動きの連動こそが“自分が持っている感”なんだということが分かって。この応用でいけば、アクセサリーとか持ったときにキラキラするっていう、そのキラキラ感からも、“自分が持っている感””が生まれるということなんですね。
山崎
なるほど、自分との連動性なんですね。
渡邊
そうです。“自分が持っている感”が生まれるんだとしたら、コンピュータやスマートフォン上の画面でも、自分の手の動きに連動したキラキラ感をグラフィックで表現できれば、そのグラフィックは、より身体に近づいてくるんじゃないかというところに注目した研究です。これ実際は、うちの1年生の小渕君という学生がつくったんですけど(笑)、これを学会で発表したら、インタラクティブ発表賞を1年生なのに受賞して、いや、もう驚きましたね。
山崎
すごいですね。こういう研究を、いくつも同時に走らせている感じなんですか?
渡邊
そうですね。他にはロボットの研究などもやっています。ロボットって言うと、『ASIMO(アシモ)』とか『Pepper(ペッパー)』みたいな二足歩行の人型をイメージされるかもしれないんですけど、冒頭でご紹介いただいたロボット扇風機『AirSketcher』とか、家電も一種のロボットだろうみたいなことで研究しています。
山崎
なるほど。『AirSketcher』について、ちょっとご紹介いただいてもいいですか?
渡邊
『AirSketcher』というのはAir sketch(エア・スケッチ)ということで、風をデザイン、スケッチするというコンセプトのものなんです。ロボットは賢くなるかもしれないけど、まだ賢くなるにはちょっと時間がかかるから、ロボットに人間が賢さを教えてあげるというか、動きというものを教示してあげるという研究から生まれたもので、結果的には扇風機に落とし込んだんですけど。この『AirSketcher』には、扇風機の真ん中にARマーカーを認識するためのカメラが付いているんですね。それで、マーカーを見せると、その場所に扇風機の頭を向けて、風を送ってくれるんです。反対に、「ここは赤ちゃんが寝てるから風を吹かないで」というようなことも、マーカーを使って指示できるようにもなっていて。マーカーの表側が「オン」、裏側が「オフ」という指示なんですけど、これを使って扇風機に人間が動きを示してあげることで、その通りに風を送ってくれる。なので、1台で複数台あるかのような役割にもなりますし、レストランなどにつければ、「私の席は風要らない」というようなことを、机の上に置いたARマーカーで指示できるというようなことも可能です。
山崎
お話を伺っていると、研究の幅が広いですよね。言うなれば、世の中のものってすべてはインターフェイスというか。
渡邊
そうですね、はい。インターフェイスデザインということを考えると、相手が人間であれば、そこに相容れないものが存在することによって問題が発生するので、その解決ということで、いろいろなことをターゲットにして研究していますね。

未来のインターフェイスに求められる、自己帰属感。

山崎
ところで、インターフェイスとインタラクションって、どういう関係性になっているんですか。
渡邊
インターフェイスが提供されることによってインタラクションが発生し、体験も発生していくっていう感じですね。
山崎
インターフェイスが、いちばん手前という感じですか?
渡邊
インターフェイスって、人間と対象の関係性という意味で抽象的にも捉えられますけど、普通はインターフェイスと言ったときは、割と物側の状態のことを言うので、それが提供されてインタラクションが発生するという流れですかね。人によってイメージが違うのかもしれないですけど、僕としては。
山崎
外殻とかそんな感じのイメージですか?物が持っている。
渡邊
難しいですね。外殻なんだけれども、結構、動的な外殻ですね。
山崎
なるほど。インターフェイスやインタラクションの未来って、渡邊さんはどうなっていくと思われますか?
渡邊
ちょうど今、知覚心理学という授業を持っていて、今日も講義をしてきたんですけど。その中で、人工知能の話をしていて。シンギュラリティと言われる2045年がその技術的特異点になるというような、いわゆる、コンピュータが人間を超えるみたいな話なんですけど。そうすると、もしかしたらインターフェイスってあんまり関係なくなって、人型みたいなロボットがいて、話をしたらその通り文章を書いてくれたりするのかな、なんて思うんですけど。でも、何か人工知能が描く未来って、確かに非常に魅力的でおもしろいし、そうなってほしいなってこともあるんですけど、そうすると「じゃあ人間は何をするんだろう?」と考えるんですね。実は「人間の生きがいとか楽しみみたいなものまで奪ってしまうんじゃないだろうか?」と。何でもやってくれるからといって、じゃあゲームを自動的にやってくれる人工知能って、全然うれしくないじゃないですか。
山崎
それは、嫌ですね。
渡邊
そうすると、じゃあゲームのインターフェイスとか、人が楽しむっていうことに対するインターフェイスは提供しないといけないし、考えなきゃいけない。仕事や効率化に対するインターフェイスっていうのは、人工知能がある程度やってくれる世界になったとしても、「自分がやっているぞ」っていう感覚というのは、むしろこれからますます大切になっていくんじゃないかなと。そうすると、本にも書いているような“自己帰属感”みたいなことが、インターフェイスの未来として、実はもっともっと重要になるんじゃないかと思いますね。つまり「自分がこの世界に生きて楽しんでいる」という感覚をつくりだすことが、未来のインターフェイスなんじゃないかなと。
山崎
なるほど、ありがとうございます。もう少しお聞きしたいところですが、ぼちぼちお時間なので、最後にリスナーの皆さんにメッセージをお願いできますか。
渡邊
メッセージ…。そうですね、インターフェイスやインタラクションという言葉を聞いたのが、もしかしたら初めての人もいるかもしれないんですけど、そういう部分をちゃんと見抜ける消費者になってほしいなと思いますね。やっぱり、いい製品はそのへんがよくできているので。あとはもう少し大きい話としては、これから人工知能みたいなものが出てきても、あまり恐れずに「結構テクノロジーも人間にフレンドリーに近寄ろうとしているんだよ」ということを知ってほしいなと。
山崎
ターミネーターのような世界じゃないんだよ、と(笑)。
渡邊
そうですね。「私は技術怖い」「嫌い」みたいに思わずに、文系的な発想も含めて、結構近寄ろうとしていること、そういう研究があることを知ってほしいなと思います。
山崎
ありがとうございました。本日はゲストに渡邊恵太さんをお迎えしました。
渡邊
ありがとうございました。
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