銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン

隔週水曜19:00-20:00ON AIR

EVENT REPORT

vol.72015.08.2119:30-20:30

黒川雅之 × 山崎晴太郎 / REAL TALK SALON

山崎
本日のゲストは、黒川雅之さんです。黒川さん、ラジオはどうでした?
黒川
なかなか楽しみましたよ。1時間、あっという間に過ぎました。
山崎
良かった。すぐでしたね、本当に。なかなかああいう風にお話できる場もないので、僕も楽しかったです。黒川さんはいつも思想がどんどん、どんどん変わっていくじゃないですか?そのなかで、僕がちょっと詳しく聞いてみたいなと思ったのが、こないだご挨拶に伺った時、「モダニズムに一度、溺れきった」みたいなことをおっしゃっていたんですよ。覚えていますか?
黒川
覚えてない(笑)。
山崎
本当ですか?すごく衝撃を受けたのは、黒川さんは今、モダニズムっていうよりは野生とか、“自然思想”みたいなところにいるんですけど、「一回モダニズムのど真ん中に、どっぷり浸かった」みたいなことをおっしゃっていました。
黒川
何年前かな?ポストモダンって言われた時代。あの時代に、何人かの人たちが、「いかにもこれがモダン」というのを破って、「次の建築だ」「デザインだ」って主張していた時代があるじゃない?僕はどう見ても、どう考えても、そっちにいけないの、体質的に。そうすると、「そうか、俺はモダニストだ」って、そのうちに「そうなんだよ」って開き直り始めるわけですよ。だけど、ひょんなことから中国へ行き始めて、「中国の人たちが求めている自分たちの根っこ探しのお手伝いをしようか」っていう気持ちと、僕も『八つの日本の美意識』っていう本を書いた手前から言うと、中国という場にある日本の母親のような文化、これを極めてみたくなるじゃない。それで、古典思想、老子や孔子や荘子だとかっていうのを読んでいるうちに、ピンピンとくるものがいくつかあって、そこで「僕はこれについて書けるかな」と思い始めて、どんどん深まっていった。地政学とも言うべき世界地図を見ながら、その中でどのように文化が伝播して、「なぜキリスト教やイスラム教は、中国に入ってこなかったんだろう?」とか、そういうことを解析、分析しているうちに、「待てよ、ヨーロッパの文化とどう違うんだろう?」と思いはじめて、たぐっていったら何てことはない。「ヨーロッパの文化、すなわち、近代史の思想はキリスト教の思想にそっくりだ」ということに気づいたの。そこから、おもしろくなってきたわけですよ。西の文化がはっきりと見えてくると、僕がやろうとしているのがなんなのかわかってくる。
山崎
でも、それこそモダニズムに、どっぷりと「僕はモダニストだ」というふうに入っていって、掘って、掘って、掘っていった先で、中国に行き着いて、今までの自分ではない道みたいなところに、次の道みたいなものが生まれるわけじゃないですか?
黒川
いや、たぶん、僕は最初から、中国に行って見つけてきた“野生の思想”のような世界にいたんですよ。いたからこそ、それが見えてきたんだと思うんです。だけど、そこに言葉のあやみたいに、たくさんのまやかしが今の考え方に流布しているんだ。たとえば、安全っていいことだよね?安全、安心って経済産業省が大好きだけど。
山崎
ええ。安全、安心、信頼みたいなところですよね。
黒川
でしょ?それとか、安定はいいことだよね?そういう、いいことばっかり並べて、「それが近代のいいことだ」っていうふうに、僕ももちろん思っていたわけですよ。だけど、“野生の思想”から考えていくと、逆の概念ばっかり出てくるんだよ。だから、近代のど真ん中にいたと思い込んでいたけど、「実はそこにいたんじゃなかった」ってことに気づくわけですよ。
山崎
なるほど。
黒川
だから、近代の思想を破って、「近代の次のポストモダンを探そう」なんて思わなかったけど、“野生思想”をやっていたら、気づいたら近代の先にいたんです。「え?実は、もう近代を通り過ぎた先にいた?」という感覚なの。
山崎
なるほど。決して「近代を越えてやろう」みたいな感じではないんですね。
黒川
越えてやろう、そんなのないですよ。「何だ、あんなところに近代、いっちゃってた」っていう感じ。この感覚はなかなか醍醐味なんだよ(笑)。そしたら、次から次へと、いろいろな「いい」と思っていたことの逆ばっかりが見えてくるんだよ。「経験、積まなきゃだめじゃない。経験、生かしなさいよ」って、経験を大事にしてたおやじさんたちは、結局ベンチャービジネスができないんですよ。ベンチャービジネスで成功して、さまざまなメーカーのITの世界で成功した人たち、みんな経験のない0から出発してるわけですよ。新しい経験をつかみ出していくわけですよね。
山崎
そうですね。
黒川
だから、「経験を大事にする」という当たり前の思想は、みんなやめたっていうことじゃない?なにも意味を持たなかったでしょう?
山崎
ええ。
黒川
それから、今のドローンなんて、飛行物体としては最も不安定飛行体なんだよ。エンジンが止まったら、ドンと落ちるんだから。
山崎
そうですね。真下に落ちてくる感じです。何の慣性も働いてなくて。
黒川
そうそう。プロペラの飛行機は、とりあえず滑空しながら、とにかく場所を探して着陸できますよ。グライダーなんて、もう最初からエンジンないんだから、風だけが頼りじゃない?でも、グライダーが一番安定してるでしょ?
山崎
そうですね、ええ。
黒川
でも、安定の思想っていうのは、安定しているだけで機敏な対応ができないんですよ。なぜ日本の家電メーカーがだめになったかって、あれは安定思考でいたからだよ。だから、これからコンサルティングする時、「どうしたら不安定な企業にできるか?」とやりなさいよ。その代わり、収入の30%ぐらいはこっちに回せ(笑)。
山崎
いやいや(笑)。でも、不安定でいい。うーん、なるほど。
黒川
人間の体も実は不安定で、ちゃんと立っているように見えて、本当にちゃんと立てている人っていないの。立ちながら、みんな揺れているんだよ。どうして揺れるかというと、人間の体は、ドローンと同じだけの不安定構造なんだよね。206個の骨が人間の体にはウワーッとあるけど、それらはみんな何の接続もしていなくて、空中に浮かんでいて、骨だけだとグチャグチャってなるでしょ?なぜそうならないかというと、600ぐらいの筋肉がそれをガーッとあちこちで突っ張っているんですよ。しかも、ただ静的構造体、安定構造体として突っ張っているだけじゃなくて、常に筋肉はあちこち動かしながら調整しているんですよ。常に調整しているから、微妙な笑顔でカメラ目線をしたり、演技したり、さまざまなことができる。「人間はほとんどドローンと同じ」と言っていい。あのプロペラが止まったらズドーンと落ちるように、人間もピストルで撃たれるとストンと落ちるわけですよね?
山崎
崩れ落ちるっていうやつですよね。
黒川
崩れ落ちる。これが人間のすごいところで。それを分析すると、まず骨。それから、それをコントロールするエネルギーである筋肉と、そのふたつでさまざまな行動ができる。ドローンのプロペラみたいなものになるでしょう。「あっちに行くべき」とか「あいつが来たら隠れよう」とか、そういうことを判断する目や耳や皮膚感覚などが、いわゆるセンサーです。たくさんの優れたセンサーが、ドローンに付いているわけです。それをどう判断するか。「この場合は逃げるべきか?」「こっちに行くべきか?」っていうのを計算するコンピューターが、ちゃんと積載されているわけですよ。構造体と、それから、センサーとコンピューターと、それを伝える神経細胞ももちろんあるわけですけど、それがあってはじめて不安定構造体なのに、機敏に対応できる生き物になる。これがドローンであり、人間なの。
山崎
なるほど。
黒川
実はロボットっていうのは、人間をコピーする発想なの。その究極が、今のところドローンになるんだろうな。だから、これからのすべての会社は、ドローンにならなきゃいけない。だから、人間みたいな工場にしなさい。ひとりの人間みたいな会社にしなさい、っていうことですよ。
山崎
なるほど、確かに。会社って、法人だから人なんですよね。でも、「ちゃんと人になれていない会社が多いな」というのはデザインの仕事をしていて感じますね。要は、会社をある人格と考えて、その人が着る洋服に例えてみると、今日はビーチサンダルを履いてサーファーみたいな格好をしているのに、ある日別の展示会に出たらいきなりスーツでパキッとするような会社が多いんです。それって周りから見ると、人の人格が見えないように、会社の人格としてすごく不安に思えて、「この人、本当はどういう人なんだろう?」と不安に思ってしまう。だから、「この会社はどういう人で、なにを考えているんだろうというのを整理しましょう」というのをよく説明しますね。それは、文字とかもそうで、タイポの世界でよく言われるのが、「タイポグラフィーは声色だ」と。その人がどういうしゃべり方をするか?「文字の大きさは声の大きさである」と。「文字の詰め方はしゃべる速度ある」という思想でタイポグラフィーを組みなさいって教わったんですよ。全然違うジャンルなんですけど、そのへんって全部つながっているのかな、と。
黒川
なるほど。
山崎
突き詰めていくと、人間の本質みたいなところに、紐づいてくるというか、そんな感覚があります。
黒川
だよね、だよね。なぜ晴ちゃんが、このイベントを計画したかっていうと、多分、ラジオの耳だけで聞いている番組っていうのに、君自身が不満を感じたんだよね。「耳だけじゃ、俺、気に入らないよ」って。「じゃあ、全人格が対面できるような場をつくろう」って、こういう時間を設けたんだよね?
山崎
そうですね。
黒川
こういうのも結局はセンサーが、耳っていうセンサーだけじゃだめで、「皮膚感覚や視覚を含んだ関係でコミュニケーションしたい」という、君の願いみたいなものが見えているんだろう、きっと。でも、そのへんが晴ちゃんの若くて、甘いとこだけど(笑)。
山崎
(笑)。
黒川
人間と人間っていうのは、しょせん孤独なんですよ。しょせん伝わらないの。とある小説家が「読者は絶対に小説家が思ったように読んでくれない」って言うんだよ。全く違う読み方をする。「この恋愛小説、おもしろいわ」とか、勝手に違うストーリーだけ読んだり、さまざまな考え方で100%誰もかれも、同じ意見は伝わらないんですよ。それを「じゃあ、なんなの?小説」って思うけど、「だけど、がっかりするな」って言うんですよ。「読者は小説家の書いた小説を読むことで、刺激を受けて自分の小説を書いていく」って言うんだよ。
山崎
なるほど。
黒川
コミュニケーションっていうのは、本当に伝わることではないんですよ。たくさんの誤解を含みながら、コミュニケーションっていうのは相手を挑発することなんです。今、僕がしゃべっている内容でさえ全然、違うように理解しているはずだよ。わかっちゃいない。だけど、それはある意味で触発されて、知らないうちに自分の思想をつくっているはずだよ。
山崎
確かに。黒川さんは、それだけいろいろなことを思考されて、ご自身の中で思考の進化があるわけじゃないですか?ラジオでもちょっとお話しましたけど、それによって作るものとか、選ぶ素材だったり、工法だったりって、変化していくものですか?
黒川
ほとんど関係ないですけど、たぶん、これはたぶんなんだけど、僕は直感的にものをつくりながら思想を探しているんだと思うんです。探しているから言語化ができているんじゃないかと。僕、大学時代に絵をよく描いていたの。200号のでっかいキャンバスを前に、「なにやろうか」って考えるじゃない。一番感動的な瞬間だけども、一番恐怖の瞬間だよ。
山崎
ええ、そうですね。
黒川
なにを描いてもいいんだけど、なにを描いたらいいかわからない。その恐怖と不安の瞬間の中で、自分がまず行動することを決めるわけだよ。思想による行動じゃなく、なんの考えもなく行動する。お金がないから一番安い鉛で作った、白いジンクホワイトっていうのを使って。「白いキャンバスに白い絵を描いてどうすんの?」と思うけど、一番安いからそれをガンガンと付けて、真っ先にビャッとすると、沈黙を破るように、真っ白の空間をいったん行動で壊すんですよ。そうすると、そこからなにか始まるんだよ。
山崎
なるほど。
黒川
動きやすくなっていくんだよね。それで描いていく。僕は描くものをイメージして、ミニチュアをスケッチして、それをそのまま写して…ということをやらないから、絵を描くこと自体がまずなにかを探してる。そうやって描きながら、僕が描きたいものはなんなのか見つけていった。だから、建築の設計も、発見してから設計をするんじゃなくて、設計をすることが発見の方法なんですよ。「これでいいんだ」っていうふうに思って、なにもわかんないまま、とにかく行動することで、いくつかが見つかっていく。この行動が設計すること、デザインすることであり、それで見つかってきたことがロジックだから。「必ず論理は作品の後に付いてかなきゃいけない」って、僕は学生たちに言うわけ。でも、どこの学校の先生も「お前、コンセプトなしで、よく設計できるな」って学生に教えてますよ。
山崎
確かに。コンセプト至上主義みたいなところ、ありますもんね。
黒川
そう、そう。とにかくもっと感情のほとばしりで設計して、「なぜ、俺、こんなの作ったの?」「こういうことかな?」ってネゴしていく。「こういう作り方しなきゃだめだよ」って、できるだけ先生のいるところで話すの。要するに、先生に言いたいんだけど、先生に言うと角が立つから(笑)。
山崎
生徒を使って(笑)。それって、先ほどコミュニケーションの話がありましたけど、絵を描くとか、建築をつくるっていうことも、言語とか、思考を超えた自分自身とのコミュニケーションみたいな感じもあるんですか?
黒川
すべては自分のためなの。「こういうふうな結婚式場、設計してください」って言われても、僕がイメージの中で結婚するわけですよ。僕が結婚するし、僕が司会者にもなるし、僕がプリーストにもなる。そして、自分のほしい空間っていうのをつくっていくわけです。「マーケットがどうか?」とか「若者はどんな結婚をしたがっているか?」っていうことはあんまり考えようとしない。要するに、自分の考えだけが一番信じられる。一生懸命アンケートを採ったって、何人に聞けば正しい答えになるの?5人?10人?100人?5,000人?10万人?聞いたって、たかだか10万人じゃない。だから、一番いいのは僕の中にすべての人間がいること。これは、実は“野生の思想”なんですよ。僕の中に他者がいるんですよ。僕と他者が会話するんじゃなくて、僕が生まれたときから、たくさんの他者が僕の中に住んでいるんです。それを“情”と言うんです。僕の中にある他者だから、「縁を切ろう」と思っても切れない。だから、切れない縁のことを“情”って言うんですよ。
山崎
なるほど。黒川さんがテーマにされている”野生の思想“って、自然と密接に結びついている話ですよね?
黒川
人間が求めるのは、近代思想のせいもあるけれど、“生”、生きるっていうことを求めている。でも、自然には大事なものとして“死”がある。「必ず生まれたら死ぬ」っていうのを認めないで、「私は自然っていうものを理解している」とか、あるいは、「体の中に、心の中に自然を持っています」って言えないはずですよ。死ななきゃいけないんですよ。
山崎
なるほど。
黒川
その“死”というのをもっとまともな考え方として、僕たちが受け入れることができるようになったら、あるいは、そういう死生観やそういう幸福論。“死”という概念を中に入れた幸福論が出てきたときに、人間がエゴイズムをやめて、自然を主体にした時代に移るはずなんだけど、まだみんな“死”を嫌がっているんだよ。僕も嫌だけど。そのへんは大きいですよ。“死”というものをどうつかまえるかは。
山崎
なるほど。
黒川
これ、ちょっと見てみたいけど、簡単に(笑)。
山崎
見てきたら教えてください(笑)。つづきは下で飲みながら話しましょう。
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