銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン

隔週水曜19:00-20:00ON AIR

EVENT REPORT

vol.132015.11.2719:00-20:00

田中みずき × 山崎晴太郎 / REAL TALK SALON

山崎
ラジオに引き続き、イベントのほうもよろしくお願いします。
田中
はい、よろしくお願いします。
山崎
僕、普段はラジオで「あまり自分のことはしゃべらないようにしよう」と思っているんですが、今日はちょっとしゃべり過ぎてしまって…。やっぱり、お風呂が大好きなんで、つい(笑)。というわけで、反省しています。
田中
いやいやいや(笑)。でもまさか、お風呂の旅に出るほどお風呂好きだとは…。
山崎
そうそう、青春18切符で行く、お風呂の旅。お風呂っていうか、とにかく水が好きなんですね。耳が水の中に入っている状態が好きなので、家のお風呂でも必ず潜りますし(笑)。田中さんは、やっぱりお風呂好きですか?」
田中
もちろん好きです、はい。ただ、潜ることはないですけれども(笑)。
山崎
普通は潜らないですよね(笑)。まあ、あまりお風呂の話ばかりしてもしょうがないので、ペンキ絵のお話を、ということで。田中さん的に、おすすめのペンキ絵銭湯リストみたいなものってありますか?
田中
そうですね。荒川区の南千住駅から歩いて3分くらいのところに草津湯さんという銭湯があって。最近描いた中では、一番古典的なものを描かせていただいたので、皆さんがイメージされるようなペンキ絵を見たい場合には、そこに行っていただくのがいいかな、と。銭湯自体も、本当に昔ながらのお寺みたいな建築で、なにか物語を感じるような、味わいがある銭湯です。
山崎
なるほど、ちょっと所帯的な感じがするような?
田中
はい、昔ながらの銭湯のよさを味わっていただけるところです。そこは、銭湯に慣れていない方や、東京にはじめて来たという方にも、おすすめしたいですね。
山崎
そういえば、銭湯のペンキ絵って、実は男風呂と女風呂でつながっていたりするんですよね?男湯が朝の富士山で、女湯が夜の富士山だったりとか。男湯に描かれている滝が流れていって、女湯では湖になっていたり…。
田中
そうですね。
山崎
でも、そのままだと両方見ることはできないですよね?よく、温泉旅館では、朝と夜で男湯と女湯をスイッチしたりするじゃないですか?銭湯でも、そういうことをやるところはあるんですか?
田中
銭湯によっては、月の半分で交互に男湯と女湯をスイッチしているところもありますね。つい先日、『アメトーーク!』でも紹介されていた戸越銀座温泉さんでは、確か日替わりだったと思います。そういう感じで、実は密かに同じ絵を、男性も女性も見ることができるようになっていたりはしますね。
山崎
なるほど、そういう工夫をされているんですね。でも、せっかく絵があるのに、その絵で銭湯を選ぶというのは、まだなかなかない選び方ですよね?
田中
そうですね、残念ながら。
山崎
普通は、「サウナがあるから」とか「ジャグジーがあるから」とか、そういう選び方になってしまうと思うんですけ、そのひとつの理由が、絵に対する指向性によって選ばれるようになると、銭湯のペンキ絵というものが、より市民権を得たように感じますよね。ある種の鑑賞じゃないですか?鑑賞なんだけど、その鑑賞のプロセスの中には、お風呂に入るという別の目的があって…。そこのお湯と絵が本当にはまった時は、たぶん、すごく気持ちいいですよね。
田中
確かに。私の場合、「明日は気合いを入れなきゃいけない」という時は、早川絵師という数年前に亡くなられた絵師さんの作品が見られる銭湯に行きますね。早川さんの絵は、コントラストがかなりはっきり出ていて、波とかもザブンザブンとあがっているみたいな絵で、見ると気持ちが昂ぶるんです。
山崎
へぇ、そういう違いがやっぱりあるんですね。
田中
逆に、丸山絵師の作品は、見ていると心がすごく落ち着きます。「あっ、静かな海の風景だ」といった感じで。なにか心が波立ってしまった時は、その絵を見に行って、「すーっと落ち着こう」とか。私がついていた中島絵師の絵は、明るい色調で、タッチも動きが見えるぐらにパパパパって描かれる方なので、絵がリズミカルで、明るい気持ちになりたい時に選びますね。
山崎
それは、勉強をしていけば「あっ、これは誰の絵だな」って、一般の人でもわかるようになるものですか?
田中
たぶん、そうですね。色合いだったり、富士山の描きかただったり、あとは絵のタッチですね。岩場の描きかたなど結構な違いがあるので、細かく見ていくと、「あっ、これはこの人だ」ってわかりますね。
山崎
なるほど。田中さんも周りの人たちには、「この絵は、田中風だな」とかよく言われるんですか?
田中
「柔らかい絵だね」みたいなことは言われますね。
山崎
やっぱりそこは、女性的な雰囲気がでるんですか?
田中
そうなのか、どうなのか。自分だと冷静に見られないので(笑)。
山崎
ペンキ絵を描いた後って、自分でもお客さんとして、その絵を見に行ったりするんですか?
田中
やっぱり「どんな反応があるんだろう」と気になるので、「一般客ですよ」というふりをして、見に行くことはありますね。
山崎
そうすると、なにか別の発見があったりしますか?
田中
若い方は結構「絵が変わったね」みたいな感じで、お話しされていたりするんですね。おじいちゃん、おばあちゃんだと気づいていないことも…(笑)。
山崎
それよりも、「足元をしっかり見て」みたいな(笑)。
田中
そのへんのことを銭湯の方に聞くと、「常連さんは、1カ月ぐらいして気づく」って言われたんです。あまりじっくりと眺めるものではなく、「あって当たり前」だと思っているので、1カ月ぐらい経って、おもむろに見たら「変わってた!」みたいな感じのようですね。
山崎
常連さんが気づかないということは、1日で描き上げて、乾いたらすぐにお湯を入れちゃうんですか?数日、営業を止めたりはせずに?
田中
そうですね。銭湯がお休みの日に描いて、もう翌日からは普通に営業するので。
山崎
じゃあ、時間との勝負にもなりますね。やっぱり、富士山はかなり練習されたんですか?
田中
いろいろなところに見に行くのはもちろんですけど、小さな紙に描いたりということは結構しますね。ただ、大きさがどうしても違ったり、やっぱり梯子の上では描き方自体も変わるので、結局は、現場で描くことが一番実になっていきますね。
山崎
先ほどお話しにあった中島絵師に、9年間お弟子さんとしてつかれていたんですよね?その時に言われたことで、どんな言葉が一番心に残っていますか?そういう話って、たぶん技術だけじゃないような気もするんですが。
田中
技術面だと、「空間を広く見せるんだ」とか「細かく描くんじゃなくて、勢いを持って描くんだ」というのはあったのですが。一番、印象に残っているのは、寒かった時に「寒いだろ、上に着なさい」みたいなことを言ってもらったことがあって。弟子入りすると、寒さに耐えて、暑さに耐えて、みたいな感じで働かないといけないんだろうと思っていたんですが、「体調管理をしないと、いい仕事はできないから」って言われたんです。「体調をちゃんと管理して、次の仕事に行くときに、また万全の体調で行けるようにしなければいけない」と。その時に、「仕事ってそういうことなんだ」って思いましたね。一回で終わるんじゃなくて、次も、その次も続いていくものなんだな、と。それは、本当に忘れられないですね。
山崎
なるほど、そうですよね、体が資本ですもんね。
田中
仕事だとついつい無理しちゃうこともあるし、そう思っていなくても、結局無理をしていることはもちろんあるとは思うんですけど。でも、そういう精神性で、「万全の態勢で行くぞ」って、どこか心の中で思っていないといけないんだな、というのはあります。
山崎
今までの諸先輩方って、職人気質なんですか?それとも画家気質なんですか?
田中
基本は職人気質だと思いますね。
山崎
職人気質なんですね。そういう方々も、昔は誰かに弟子入りをされて、その道でずーっとやってきたというような方が多いんですか?
田中
わりと、若い時から絵を描かれている方が多いです。今いるおふたりはそうですね。ただ、ペンキ絵をはじめるまえに私がついていた師匠は、工場かどこかで働いていて、たまたま新聞広告で「ペンキ絵師募集」というのを見てこの世界に入られた、と言っていました。
山崎
そうなんですか。そういう求人、今はないですもんね。
田中
そんな広告を出せるぐらいに盛り上がってくれるといいんですけどね。
山崎
そうですよね。各銭湯が1年にいっぺん替えてくれれば、またニーズは変わりますもんね。
田中
でも、実は今、1年に一回描き替えるような銭湯さんもあって。そういうところは、結構おすすめなんですね。やっぱり全体的に清潔感を気にしていたりとか、「お客さんに楽しんでいただこう」というサービス心があったりするので。
山崎
なるほど、それがいい銭湯のひとつの見分け方にもなるんですね。ちなみに、具体的にはどこですか?
田中
千代田区の稲荷湯さんは、毎年絵を替えていますね。やっぱり若い方が多かったりもするので、それが、コミュニケーションのきっかけになるというのもありますし。
山崎
そういうのはありますよね。ちなみに、ペンキ絵って、お風呂にしか描かないんですか?それとも、脱衣所とか、ファサード部分にまで描くようなこともあるんですか?
田中
「脱衣所に描いてほしい」と依頼されることもありますね。あとは「玄関のシャッターに描いてほしい」とか、そういったお話はあります。たまに、銭湯以外の飲食店に描いたり…。
山崎
なるほど。ペンキ絵という大きなジャンルがあって、その中の重要なパイとして、銭湯がある感じなんですね?
田中
そうですね、はい。
山崎
ここでちょっと、参加者の方からの質問を聞いてみようかな、と。なにか田中さんに質問のある方はどうぞ。
参加者
では、質問をいいでしょうか?日本には今、銭湯ペンキ絵師の方が3人しかいらっしゃらないということで、田中さん以外のお二人は、結構高齢の方だと思うんですが、「今後はこうやって後継者を増やしていこう」というような計画はありますか?
田中
今、やはり銭湯がどんどん減っていて。私たちと同じ30代や40代の人は、銭湯から離れていった世代だと思うんですけど。逆に20代ぐらいになると、銭湯に対して「レトロでおもしろいぞ」という感覚を持っていたりするようなんです。そういう若い世代に対して、逆に新鮮なものとして、ペンキ絵を提示していくことで、銭湯自体のお客さんの層を増やしていく必要があるだろうと思います。
山崎
それが、銭湯振興舎の活動にもつながっていますよね?
田中
そうですね。昔は、銭湯のペンキ絵の下に広告が出ていて、その広告費によってペンキ絵が成り立っていたんですが、現代だと、銭湯を舞台にしたペンキ絵自体を広告として使っていくことで、それをインターネットで流すようなこともできる。そうすると、広告費としてお金が銭湯のほうに回ってきたり、絵師のほうにも回ってきたり、というシステムができるので。昔は広告とペンキ絵というふうに分かれていたものを、ペンキ絵自体をメディアにして、ペンキ絵という媒体を介してネットに情報を出していく。おそらく、銭湯というもの自体が、今の社会のシステムから外れてしまっているので、それを、ペンキ絵とインターネットを使うことで、もう一度経済の仕組みの中に組み込んでいけたらと思っています。
山崎
ビジネスモデルが完成すれば、後継者となる人も入ってきやすいですよね?
田中
そうですね。まずは、自分が銭湯ペンキ絵の世界で、ちゃんと暮らしていけるようなモデルケースという形でやっていければと思っています。あとは、「facebookやTwitterといったものが100年続いていくか?」と言えば、それもわからないので、時代に合わせて対応できるような形を探していきたいですね。
山崎
ラジオでもちょっとお話した、町の中に沈んでいく感覚ってあるじゃないですか?今の時代って情報が溢れていて、その土地についての上澄みの情報にはすぐに辿り着ける。でも、それを「もっと深く知ろう」と思っても、なかなかそこに辿り着けないジレンマがあるように感じるんですね。それで、上澄みの情報だけで均一化されていくから、街の特性がなくなってしまっていて…。だけど、そのディープな情報、街の根幹に触れるための入り口として、銭湯というメディアは、とても優れた媒体なんじゃないかと思いますね。
田中
そうですね。やっぱりその街のいろいろな人がいるというのが、銭湯のおもしろさのひとつでもあって。銭湯自体に、そこのお客さんの好みが反映されていたり、銭湯のご主人やおかみさんが、自分のお孫さんの写真を愛おしそうに貼っていたりとか…。
山崎
そういう、人間くささが出ている場所ですよね。
田中
おかみさんがつくった趣味の物が置いてあったり、そういう人間性がわーっと感じられるというのは、インターネットで情報として出すことが難しくて。その言語化できない情報を体験できる場でもありますよね。それは、これから先も、きっと重要になってくる。やっぱり、文字や映像だけでは伝わらない、体を使って、その場所でしか感じられない文化というものを、いかに提示できるか、というのは大切になってくると思いますね。
山崎
来ればわかってもらえるのに、なかなか来てもらえないから困っているわけで。そこは難しいですよね。特に、そういうマーケットって、女性が成熟させていく部分があるじゃないですか?でも、銭湯とかお風呂とかって、なぜか男のほうがうるさかったりして。そこも、なかなか広がりにくい要因というか。男性って好きなものについて、軽くしゃべらなかったりするじゃないですか?好きなもの同士だけで熱量を込めて語って、そこで終わってしまう感じだから。それもね、もう少し広げていけるような仕組みができるといいな、と思いますけどね。
田中
本当は、女性にもおすすめなんですけどね。わりと女性の場合は、若いお母さんが子どもを連れてきて、髪とか洗っている間に、隣の知らないおばちゃんが面倒を見てくれていたりとか、そういうのもありますし。背後で話をしている常連のおばあちゃんたちのトークが、結婚もあり、離婚もありというような感じで、ちょっと人生の勉強になったり。
山崎
人生の縮図みたいなものを、銭湯で垣間見られる、と。
田中
そうですね。逆に、話したくないなと思えば、周りも察して話しかけたりはしないでくれたりっていう部分もありますし。雰囲気で感じ取ってくれる、というか。
山崎
確かにそうですね。感覚が緩んでいるんだけど、敏感になる空間でもありますよね。裸だから情報がなにもないですよね、その人の。だから逆に、相手の気配をすごく敏感に肌で察してる気がしますね、銭湯では。
田中
他のお客さんをなんとなく、ちらっちらっと見て。それこそ、おばあちゃんが入ろうとして、湯船の高さを越えられるのかなとか見て、「ちょっと助けよう」と思ったり、「大丈夫かな」と思ったり…。あの感じって、たぶん家だったら、もっと殺伐としていて、毎日のことで忙しいので、「はいはい」ってやっちゃうかもしれないところを、知らない人相手だと、さりげなくちょっと優しい気持ちになりつつ、助けたり、助けられたりとかもありますし。あのちょうどいい距離感みたいなものが心地よくて。
山崎
本当にそうですよね。基本、関係のない人だからできるような感じがしますよね。
田中
そう、知り過ぎちゃうと、近すぎてだめになっちゃう、みたいな。
山崎
そうそうそう。いや、本当に今の時代に足りていないようなものが、銭湯にはあるんですよね。それこそ、こないだも 『アメトーーク!』で銭湯が話題になっていましたが、銭湯ブームみたいのが来るといいですよね。
田中
ですよね、ぜひ、ブーム起こってほしいですね。
山崎
ということで、まだまだお風呂について話したいのですが、時間も時間なので、続きは下で飲みながらにしましょうか。
田中
はい、ありがとうございました。
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