銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン

隔週水曜19:00-20:00ON AIR

EVENT REPORT

vol.82015.09.0419:00-20:00

土屋秋恆 × 山崎晴太郎 / REAL TALK SALON

山崎
ラジオを聞いてくださった方も多いと思いますが、本日は水墨画家/現代美術家の土屋秋恆さんをお迎えしております。僕の水墨画の師匠です。ということで、さっそくなんですけど、ラジオはどうでしたか?
土屋
最初に「すぐ終わっちゃう。あっという間なんで」って言われていて、「そうは言うけど1時間もあるし」と思ったけど、本当にあっという間でしたね。
山崎
先生は、しゃべりが得意ですもんね(笑)。
土屋
得意っていうわけじゃないけど、まあ割とね(笑)。
山崎
先生は今、いろいろなところで教室を開かれているじゃないですか?全部で5拠点ですかね?水墨画を教える上で、一番大切にしていることはなんですか?
土屋
そうだね。もう20年近くやっているから、教えていく上での経験値っていうのがあるんだけど、大体教え始めて10分ぐらいその人とやりとりをすると、性格がわかるんだよね。言われたことに対する反応の仕方とか、言われた通りに動かなかったときの反応の仕方とか…。それをずっとデータに蓄積していくと、その系統がわかる。この人には、こういうふうに教えてあげよう、と。
山崎
へえ、そうなんすね。何パターンぐらいあるんですか?
土屋
いっぱいあるよ。無限にある。無限にあるけど、一応、系統立ててはいける。
山崎
一応聞かせていただくと、僕は(笑)?
土屋
ザッキーは、めちゃくちゃ集中するから、言葉遣いが最初は「はい、はい」って言っていたのが、だんだん「うん、うん」って(笑)。途中から「うん、うん」になるの。
山崎
本当ですか?(笑)そんな感じないけどな。そうだったかな?
土屋
集中しすぎるんだよね。
山崎
全然記憶にない。なんか、すみません(笑)。ちなみに、教えるのは楽しいですか?
土屋
すごく教えるのが好きだし、やっぱり、「水墨画は全く初めて」という人がやっていく時に、なんか思いもよらないおもしろいことをやっていたりとか、そういうとこに自分にとっての着想があったりするので。
山崎
水墨画を習いに来る人って、老若男女いると思うんですけど、共通項みたいなものってあるんですか?
土屋
これは、難しいな。共通項…。わからないけど、話、ちょっとだけ脱線してもいい?
山崎
はい、もちろん。
土屋
俺、すごく不思議なことが沢山起きるのよ、自分の身に。不思議なことって、いわゆるスピリチュアルとか、そういうジャンルでくくられるんだけど…。うちの教室に来る人は、そういう話が好きな人、めちゃくちゃ多い(笑)。
山崎
ああ、なんかわかる。スピリチュアルな感じが出てるんじゃないですか?
土屋
俺から?
山崎
出てないな(笑)。でも、確かにそう思いますね。ロジックじゃなくて、なんか墨の奥みたいな、そういうところにみんな魅力を感じているというのはあるのかもしれないですね。
土屋
だから、本当に、自分の絵のどこの部分を好きになってくれて教室に来たのか、っていうのはわからない。誤解されて買ってくれている人もいるかもしれないし。
山崎
いやいや。そんなことないですよ(笑)。これ、純粋な疑問なんですけど、教室をやって、生徒が来てくれるじゃないですか?たとえば、僕も会社をやっていて、「うちに入りたい」って応募が来た時に、純粋に「なんで?」って思うんですよね。思いません?
土屋
思う。
山崎
それを、聞きますか?「お前さ、俺のなにがさ…」みたいな(笑)。
土屋
それ、聞いたらめっちゃ嫌なやつだよね(笑)。生徒さんで習いに来られる場合は、人それぞれいろいろなタイミングと、いろいろな理由があるじゃん。だけど、弟子ってなると、ちょっと話が変わるんだよね。
山崎
ああ。確かに。
土屋
弟子になる時は、なんで好きかとかよりも、覚悟を聞く。俺が若い時から、めちゃくちゃ大変だったから、「絶対そんな簡単にぴょんぴょんぴょんっていかないよ」っていうことで、覚悟だけはものすごく聞くけど…。でも、「俺のどこが好きなの?」とか、あんまり聞かないかな(笑)。
山崎
聞けないですよね。弟子って今まで何人ぐらい採られていますか?
土屋
弟子っていうか、今うちの師範部が大体7人かな。
山崎
それは、やっぱり、イラストとか、なにか絵を描くということの延長に、水墨画を見いだしたみたいな人が多いんですか?
土屋
もちろんそういう人もいるね。うちの教室に19歳から来ていた子は、慶應高校、慶應大学を出て、三井住友系の会社に入ったんだけど、1年半ぐらい会社勤めた後に、いきなり俺のところに「話があります」って言ってきて。なんか、子どもでもできたのかと思って「どうしたの?」って言ったら、「全部辞めて、水墨画家になりたい」と。「いきなり、どうした?」と(笑)。
山崎
「ちょいちょいちょい」って(笑)。
土屋
せっかく会社にも入って、親にも喜ばれていたのに。だから、「一応3年は今の会社に勤めなさい」って言って、それで3年勤めて、結局会社を辞めて、今うちの弟子。不思議な人がいるよね。道を踏み外したんじゃないかと思って(笑)。
山崎
責任重大ですね(笑)。水墨画をやっていくのに必要な、なにか共通の下地みたいなものってあるんですか?
土屋
俺が今までやってきた経験で言うと、やっぱりすぐうまくなる人っていうのは運動経験者が多い。というのは、たぶん、言われた通りに体を動かすっていう作業に慣れてるんだろうね。そういう人は、すぐ模倣はできるけど、そこから先の自分のセンスっていうのは、また別の話だと思うけど…。
山崎
へえ、そうなんですね。僕、中学生ぐらいまで書道を習わされていたんですけど、その時の先生も「書道は、運動神経だからね」って言っていましたね。
土屋
それと関連するんだけど、最近になって急に、その感覚が強くなってきて、絵を描く時に靴下を履いて描けないんだよね。裸足のほうがいい。要するに、踏ん張ったりとか、全身の運動感覚というのがすごくあって。さすがにハイブランドのパーティーとかで、裸足で描いているのはちょっとやばいから、そういう時は靴もグリップのものを(笑)。
山崎
先生もずっと運動をやっていたんですか?
土屋
いや、全然。特化してやってはいなかったけど、好きだった。今も好き。
山崎
水墨画をやられていて、水墨画以外に通じる水墨画の心みたいなものってありますか?
土屋
心っていうか、みんな、うちの教室に来て、その後に言うようになるのは、「街を歩いていて、植物を見る時間が圧倒的に増えた」って。というのは、「枝がどういうふうについていくのか?」とか、「葉っぱってどうやってついているんだ?」とか、そういうのを、今までは見流しちゃっていたんだけど、絵を描くようになってから、すごく注意して見るようになった、って。なんか、「季節の移り変わりになにを描くか?」とか。それが水墨画の心っていうわけじゃないのかもしれないけど、そういうのはあるかな。あとは、僕なんかはアクリルを使ったりとか、いろいろするけど、結局「画角構成の中に、どういうふうに間を設けると“和”っぽく見えるか」っていうのがあって。そこに、やっぱり空間と、そのパーツの取り方とか…。水墨画じゃなくても、画角構成で水墨画っぽく見えるというか。
山崎
なるほど。素材は違っても、みたいな。水墨画って、それこそ画角によって、それっぽく見えるみたいな話があって。でも、墨を使ったら、当然水墨画に見えるわけじゃないですか?水墨画の本質ってどこにあるんですかね?
土屋
すごいこと聞くね(笑)。そもそも墨絵っていうと、昔から白描画っていって、要は線で構成される絵というのは沢山あるんだけど、水墨画は、やっぱり濃淡。我々は専門用語で「つけたて」と言うんだけど、面を出すことで、そこに濃淡があって陰影になる、っていう。一言で言うと、墨色の美しさと濃淡のグラデーションの美しさ。それから、筆勢。筆の勢いというのがあって、そのへんが水墨画を構成する要素だよね。
山崎
なるほど。そういう要素が基本的にある中で、他の要素…、それこそ先生はタイポグラフィを入れたりとかもするじゃないですか?それって、真逆からのアプローチだと思うんですけど、「これは自分の領域だ」みたいなものってなにかあるんですか?
土屋
これ、実は、僕の母親とその友達が一緒に、英語を研究するラボみたいな所に行っていて。そこに、日本のガイドブックの英語版があったわけよ。それにね、お寺の写真とか水墨画の上に、横文字のタイポが入っていて。俺、小さい頃からそれがすごく好きで、「格好いいな」って思っていた。
山崎
へえ、そこがルーツにあるんですね。最初にああいうことをやり始めたのって、いつ頃のタイミングなんですか?英語とか、それこそピンクのシルクの鳥とかもそうですけど。
土屋
そもそもずっと古典をやっていて、始めてから10年間は全くいじらなかった。ただ、ライブパフォーマンスでファッションの人たちと一緒にやるようになって、ファッションのコレクションっていうのは、要は毎回違うものになるわけじゃない?毎回刷新されて新しくなるんだけど、俺のことを「すごいね。こんな狂った感じで、ライブで水墨画描くやついるんだ!」って言ってくれていた三田真一とかが、「ずっとおんなじ絵なの?」って言い出して…。なんかあるとき突然、酒を飲んでて、めちゃくちゃ毒づかれて。「ふざけんな」と。「俺は伝統を守ってんだ」って言ったんだけど、なんか周りも「そうだね」ってなってきて(笑)。「あれあれ、やばい」みたいな。その時、今のかみさんが、当時の彼女だったんだけど「いや、そうだよね」って(笑)。
山崎
そこも乗っちゃった」みたいな(笑)。
土屋
「お前もか」みたいになって、それで、すごく腹が立って。だけど、みんなが言っている通りだし、それがすごく自分の中で悶々として。「知るか、ボケ」ってなって、もうマジックで描き始めて。でも、振り返ると、古典だけをやっている時は、色も使っちゃいけないぐらいの勢いでずっとやっていたから…。
山崎
本当に、ストリクトな古典主義みたいな?
土屋
そう。もう自分の感性とか、自分が好き嫌いっていうのを超えて、最後は忍耐力だけでやっていた。そうすると、その時期は俺、桜見ても「きれいだ」って思わなかったもん。色を見た時に、「きれいだって思っちゃいけない」みたいな、なんか変な感じになっていた。
山崎
墨の中に、自分の世界、美意識があるっていうことですよね?
土屋
そうそう。だから、自分の中から色を排除するというぐらい、わけわかんないストイックな方に行っていて…。それを振り切って、色を使って、字も書いて、マーカーもなにもかも使ってやったら、ものすごく人生が楽しくなってきて(笑)。
山崎
なるほど、そうなんですね。やっぱり、なんかすぐに、白黒に置き換えたりとかっていうのはあるんですか?癖みたいなものは。
土屋
昔はね。だけど、今は「どれくらいのトーンまで抑えたら美しいかな」とか、「どれくいのパーセンテージを墨で」とか、「ひょっとしたら全部墨のほうがきれいかな」とか。要するに、「範囲はこれくらいまで」って決まっていたのが「どこでも使っていいよ」になったら、すごく楽しくなった。
山崎
なるほど!僕、抽象を始めて、たぶん初めて顔彩を使ったんですよ。いわゆる絵の具みたいなやつ。その時に、やっぱり最初は、なんか色がどうしても浮くんですよね。そこに墨の比率とグラデーションをつけるから、墨の世界に融合されていく、みたいな感覚はすごく新鮮でした。
土屋
顔彩の顔料だけで描くと、ものすごく、ちゃっちい。安っぽい感じになるんだけど、ちょっと墨を入れて、濃淡を与えてあげると、ものすごく墨の世界に合う。
山崎
あれってたぶん、グラフィックの世界にはないんですよ。その考え方って。
土屋
なるほどね。
山崎
くすむじゃないですか、色が。印刷の発色も悪くなるし。やっぱり色って利かせるためにつくるから。でも、水墨画では、引いてつくっていくじゃないですか?調和みたいな。そこは、すごく新鮮だったんですよね。
土屋
そんなこと、ちゃんと感じてたんだね(笑)。
山崎
感じてましたがな、言わないだけで(笑)。それと、僕は建築もやっているんですけど、掛け軸を描く時に、飾る時を考えて、「いわゆる躙り口から入って、ここから外光が射すから、掛け軸の中の絵はこういうふうに木が伸びる」みたいな話を聞いて、「そこはやっぱり平面の概念ではないんだ」っていうのを思ったんですよね。
土屋
わかりやすく説明すると、壁面っていうのを真ん中で区切った時に、床の間が右にある場合と左にある場合があって、床柱っていうのが必ず真ん中にあるんだけど、ここの右側に滝の絵を飾る場合に、右から左に流れるか、左から右に流れるかで飾り方のルールがある。それはなにかっていうと、部屋の中に水が流れていくようにしないと、人間の意識が「わー」っと外に行っちゃう。玄関から入ってきて見た時に、中に招き入れるように水が流れていく。枝も全部そういうふうに入ってないと、入ってきてすぐ「お邪魔しました」って、帰っちゃう。これはだめなんだよね。実は、この考え方っていうのは、風水とかも全部そういうものにのっとっていて、人間の印象、入ってきた時の暮らしの印象を良くするのが、おそらく風水なんじゃないかな、と思っているんだけど。
山崎
それこそご自宅だったりとか、オフィスだったりとか。いろんな場所に飾るための作品を依頼をされて描くじゃないですか?
土屋
そうなの。だから、絶対に下見させてもらいに行く。
山崎
ラジオでもちょっと話しましたけど、自分の中から「ぐわー」って湧き上がって描く物と、「ここに描いてほしい」っていう、いわゆる昔でいうパトロン型みたいなのが、二種類あると思うんですけど、つくり方は全然違いますか?
土屋
でも、どちらにしても、やっぱり自分のフィルターを通して描くわけだから。これはザッキーの仕事も同じだと思うけど、まずはインタビューとかヒアリングをして、その時に、お客さんが「どういう絵が好きか」っていうよりは、「どういうお酒が好きか」とか、「どんな映画が好きか」とか、そういうようなイメージでつくっていく感じだね。
山崎
逆に、「こういう絵を」っていう、結構ディテールまで注文が入ることもあるんですか?
土屋
ごく稀に。でも、ほとんどは「お任せで」って言われるから、「でしたら、一回いろいろ教えてください」って言って。
山崎
僕は、作家っていうライフスタイルがあまり想像できないので、失礼だったらあれですけど、キャンセルみたいなこともあるんですか?要は、「自由に描いてください」と。それで描いてみたら「ちょっとイメージと違うんだよね」みたいな。
土屋
それはもちろん金額にもよるけど、「何回でも描き直します」っていう場合もある。
山崎
そこは、すごくシンプルなんですね。でも、それって、すごいバランス感じゃないですか?なんかアーティストとか作家とかって言われる人たちって、「そこは突っ張らないと、作家性のアイデンティティが揺らぐ」みたいに思っている人も多いと思うんですけど…。
土屋
そういう人もいると思う。でも俺、自分のこと、そんなに大したやつだと思ってないんだ。
山崎
いやいや、それは違うと思う(笑)
土屋
まあ、わかんないけど。でも、「なにをやったって、俺は俺だ」という意識はすごくあって。自分から出てくるものは、基本的には全部、土屋秋恆の作品だから。全部、自分のものだと。
山崎
そういえば、秋恆って本名なんですよね?
土屋
うん。でも、30歳になるまで、なかなか名前負けしてる感があった。どうしても自分の名前に思えないような。
山崎
すごくきれいな名前ですけど、家もそういう?
土屋
いやいや。もう全然普通のサラリーマンの父親と教師の母親です。
山崎
親御さんは、どう思っているんですか?アーティストとか作家になった息子について。
土屋
うちの母ちゃんっていうのが、ちょっと変わっていて。うちの姉ちゃんっていうのもすごく変なんだけど(笑)。うちの姉は、リクルートにずっと勤めていて。
山崎
優秀ですね。
土屋
そう。でも、25、26歳の時かな?突然、前衛舞踏を始めて、なんか大駱駝艦に入って、体を真っ白に塗って、「ぐー」って言って踊ってるわけよ。今、オーストラリアに住んでいて、向こうで家買って、ずっとアーティストをやっているんだけど。
山崎
そうなんですね。一回、リクルートには普通に入ったのに。
土屋
入った。普通のサラリーマンだった。なんだったら、国立大学を出てる。
山崎
なにがあったんですか、そこに(笑)。
土屋
知らないんだよね。毎年、うちでは正月に姉ちゃんの今年のパフォーマンスのDVDを、家族みんなで見るんだけど、姉ちゃん完全にパンツ一丁で全身真っ白で「うわー」ってやってんの。
山崎
それを、家族みんなで見る。
土屋
胸とか出ているのを見ながら、「ああ、今年はこういう感じか」って言って(笑)。やばいよね。
山崎
それ、すごいですね。なにかそういう教育とかがあったんですか?
土屋
まあ、母ちゃんも割と変わっていて、「海外行きなさい」とか、そういうことをすごく言っていて。よくおもしろい絵を見せに連れて行ってくれたりとか、そういうのはありましたね。
山崎
そういうふうに育てようと思いますか?お子さんを。
土屋
勝手にそうなるんじゃないか、とは思ってるんだけどね(笑)
山崎
と、盛り上がってきたところなんですが、そろそろ時間ですね。直接話を聞きたい人もいると思うので、つづきは下でということで。
土屋
そうですね。こんな話が、最後でよかったんだろうか(笑)。
山崎
いいです、全然いいです(笑)。
土屋
ありがとうございました。
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