銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン銀座四次元ポケットpresents 山﨑晴太郎の銀座トークサロン

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MINI REPORT

2017.12.03

朝吹 真理子 vol.2

文化百貨店、師走の1回目12月3日のゲストは、先週に引き続き小説家の朝吹真理子さんです。

『きことわ』が生まれたきっかけ

朝吹さんは、日常のひょんなことから小説のアイデアが浮かぶと言います。スーパーに行くときにチラシの裏に買うものリストを書くそうですが、ある時、粗く書いた「卵」という字が背を向け合っている女の子2人の横顔に見えて気になったのだそうです。その後、フランス語で卵「oeuf」と筆記体で書いた際、eとuが離れてしまって、髪の毛が繋がっている2人の女の子に見えたのだとか。卵を漢字とフランス語で書いた際に、相反する印象を感じたところから生まれたのが、芥川賞受賞作『きことわ』だったようです。

小説家としてのスタイル

自分が好きな本を読んでいる時に、投瓶通信のように海から自分の元に届いたような感覚で呼んでいるという朝吹さん。自身が書いている小説も海に放っているような気持ちで、どこかの誰かにたどり着いたら良いなと思っているそうです。そんな書き方だからなのか、読者に“どう感じて欲しい”ということも無いのだとか。1枚のレコードアルバムのようなものだと思って小説を書いているとのことで、自著については、どこから開いてもどこで閉じても良いと思っていると言います。
また、物語の結末は山のかなたに薄っすらと見えていて、それに向かって、けものみちを歩いていくというイメージで書いているとのこと。前半に書いていたことが、後半に「こういう意味だったんだ」と気づくこともあるそうで、“作品について、一番考えて書いているけど、一番知っている人ではない”というのが、朝吹さんのスタイルのようです。

目で聞く音楽

日本語の「漢字とカナとルビがある所のが楽しい」と語る朝吹さん。文字は視覚の印象が大事で、目で聞く音楽という感じで書いているとも言います。漢字とカナの使い分けも、「読むときに心地よいであろう」という感じで、開いたり閉じたりしているとも話します。文字としての情報を伝えるためには統一した方が良いと思っているものの、それよりも目で追っている時のリズムを重要視して、前の行と後ろの行で同じ言葉でも漢字とカナと表記が異なるようにすることもあるようで、朝吹さんの視覚面へのこだわりも垣間見ることができました。

最近読んで面白かったもの

ご自身も本をよく読むという朝吹さんに、最近読んで面白かった作品についてもお伺いしました。何度も同じ本を読むタイプという朝吹さんが、真っ先に挙げた作家が吉田健一。吉田茂総理の息子さんということでも知られた作家ですが、「不思議な文章」なのだそうで、繰り返し読んでいるそうです。あとは、山田風太郎の『人間臨終図鑑』を最近、読んでいるとも言います。年齢ごとに、どんな人がどんな風に死んだかというのが網羅されているという作品で、著名人の“死にざま”が描かれているもの。死は唐突だし、不条理に平等に訪れるということを実感させられる本なのだとか。気になる方は、ぜひチェックしてみてください。

文化百貨店で扱うとしたら

番組恒例の質問には「香りが好きなので、香木とか香水とかを扱う一角」とのご回答。ジャケ買いみたいな感じで瓶が可愛かったり。本のタイトルのように名前が可愛かったら買ってしまうぐらい香りに関するものがお好きなようです。朝吹さんの作品の世界を匂いから感じられる一角になるかもしれませんね。

といった所で、今回の文化百貨店も閉店となりました。次回は俳優の津田寛治さんをお迎えします。12月10日の放送もお楽しみに。

小説家

朝吹 真理子

1984年 東京都生まれ。
慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。
2009年 処女作の「流跡(リュウセキ)」を『新潮』に発表し、小説家デビュー。
同作で2010年第20回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を史上最年少で受賞。
2011年3作目である「きことわ」で第144回芥川賞を受賞。
同年、第7回 VOGUE JAPAN Women of the Yearに選ばれる。
2017年11月、「きことわ」以来、7年ぶりの長篇小説「TIMELESS」を連載完結。来年2018年前半に刊行予定。