2018.11.11
JOTARO SAITO vol.1
着物の捉え方
漢字ではなくカタカナで“キモノデザイナー”と名乗っている斉藤さん。これは、“古き良き”という伝統文化としての着物ではなく、現代の普段着としてのキモノを表現しているというご自身のポリシーを表現した肩書のようです。
そのため着物を中心としたスタイルの提案になるということで、「着物をマキシ丈のワンピース、帯は幅広のベルト」といった風にも捉えているのが斉藤さんならではの感性かもしれません。
キモノデザイナーとしての矜持
染織作家のおじい様に、キモノ作家のお父様を持つ斉藤さん。幼い頃から家業を継ぐことを意識されていたようで自然と着物業界に入られたそうです。20歳で業界に入ってみると、周りは40歳ぐらいの人たち相手にするという環境。その中で「本当に作りたいモノを作って理解してもらえるのか?」という葛藤があったようです。
丁度いい塩梅を探りながら手掛けた最初のコレクション。受けの良さそうなモノを用意したにも関わらず、評判が悪かったそうです。置きに行ったことで、まったく人に響くモノにはならなかったという反省から、2年目のコレクションからはやりたいようにやるように、生地や柄をオリジナルで制作し、見せ方にもこだわったところ周りからの評価も売り上げも変わっていったのだとか。
その傾向は今でも変わっていないようで、いかにもなデザインのモノよりも尖ったデザインの方が先に売れていくのだそうです。
イノベーターとしてのキモノデザイン
3代に渡り着物業界に革新をもたらしている一家という稀有な環境で育った斉藤さんのキモノづくりは、価値観の再構築といった様子を持っているようです。
手描きの京友禅の場合、絵を描いて蒸して定着させてから地染めをしてまた蒸して………と何度も作業を繰り返したのちに刺繍や絞りを入れていきます。その作業を仕上がりに合わせて、順序や回数を指示していくのも斉藤さんのお仕事。
伝統的な手法を用いて制作されていますが、仕上がりについて最近は「わざとハズす」ことがカッコイイのではないかと考えているご様子。これまでの概念なら、仕立てた時に柄が合わさるのが定番でしたが、それをズラしてみたり、織と染めを併用してわざと染めない部分を作ったりと、様々なチャレンジと提案を実践しているようです。
キモノを真の晴れ着に
普段着の着物を取り戻すために試行錯誤されている斉藤さんのインスピレーションの源は、雑誌や映画、そして音楽のタイトルという日常に転がっているモノなのだとか。それには、特別な空間で頭を凝らすよりも、日常の中で感じて考えた方が正しい着物が出来るという考えがあるようです。
「着物が特別な衣装になったことで、画一的で没個性の代名詞になった」という風に感じている斉藤さんは“晴れ着”の名を体現する、着た人の個性がにじみ出るキモノづくりを実践していきたいと話してくださいました。
ついコレクションしてしまうモノ
番組でいつもお聞きしている、「つい買ってしまうモノは?」という質問に、「GINZA SIXに出店してから買い物を忘れていた…」という斉藤さんですが、つい買ってしまうのはキャンパススニーカー。あのテクスチャーが好きで、いつか自分のファブリックでオリジナルを作りたいという夢も語ってくださいました。
といった所で、今回の文化百貨店も閉店です。次回も着物の最先端事情について斉藤上太郎さんに伺っていきます。強烈なファッションが印象的な大物海外アーティストのお話しも!
今週の選曲
斉藤上太郎さんのリクエスト
Talk it Out feat. Nieve & Jean Curley / Cradle Orchestra
山崎晴太郎セレクト
WONDA BOSS AND FIRE GEORGIA / 東京塩麹