2017.11.16
朝吹 真理子 vol.1
小説を書き始めるまで
文学、学術一家に育った朝吹さん。小さい頃は、お父様の仕事についてはよく知らなかったそうで、ご本人曰く「文学少女ではなかった」のだとか。しかし、作家となる片鱗は当時から出ていたようです。小学校の頃にクラスの友達と芝居やろうという話になったものの、誰も何も思い浮かばなかったので、朝吹さんが『イタコとフラメンコ』という戯曲を書き、みんなで演じて遊んでいたそうです。それが書くという意味では最初の体験だったと朝吹さんは言います。とは言え、そこから書き続けたわけではなかったようです。ひょんな事から現代詩を読むようになった時に、吉増剛造さんのファンになったという朝吹さん。その吉増さんにファンレターを送ったところ、なぜか吉増さんのパーティーに呼ばれることになり、そのパーティーでしたスピーチがあまりに突飛で新潮社の方が面白がってくださり、「小説を書いてみない?」と声をかけられたことが小説家へのきっかけになったとのこと。
朝吹さんにとっての言葉
読む時と書く時の言葉について、朝吹さんは「読むように書く。書くように読む」と言います。どういう事かというと、小説を書いている時は、“自分も今書きつつある物を、自分が最初に読んでいるというような意識”なのだそうです。また、好きな本を読んでいる時は、“目の前で書き上がってくるのを読んでいる感じ”なのだとか。ライティングをされない方には掴みにくい感覚かもしれませんが、作家同士では、他の人が書いた本を読んで「あの部分、自分が書いたかと思った」という話が出ることもあるそうで、どうやら作家さん“あるある”のようです。ちなみに、そんな朝吹さんが影響を受けた作家というのが音楽家の武満徹さん。音楽より先に散文で知ったということですが、言葉の1つ1つが美しくて、流れるような感じが音楽を聞いているようだという事で大切に何冊も読んでいるそうです。山崎もリスペクトしている武満さんの名前が出て、一気に親近感が沸いた様子でした。
連載が終了したTIMELESS
今月まで約2年に渡って連載されていた『TIMELESS』。主人公のウミさんという女性と同級生のアミくんという男性による現代の男女のお話。恋愛感情のないまま、子供をつくろうとなり、結婚をするということになり。これまでは、文芸誌に掲載されることを第一に考えていたという朝吹さんですが、今回の『TIMELESS』では、連載中から単行本になるイメージを持っていたとそうです。朝吹さんにとって「小説と出会う窓」だと言う装丁についても、色々と想像を膨らませている最中とのこと。2018年前半に刊行予定ですので、書店に並んだ際には、そのルックスにもご注目ください。
同世代で芸術への造詣も深い朝吹さんとあって、山崎も首の痛みなど忘れてしまう30分となりました。来週も朝吹さんにお越しいただき、色々な話をお聞きします。次回のご来店もお待ちしています。