2017.11.05
山田 悠介 vol.2
香道の嗜み方
香道でよく行われるのは「組香」と言われる、10人ほどで集まって香りを聞き分ける遊びだと山田さんは言います。3つほどの香木の香りを覚えた後に、ランダムにその3つが出てくるので、思ったように順番を書き、最後に答え合わせと採点のようなものがあるというものだそうです。普段の生活の中で、香木の香りに触れる事がないので、最初は難しいという方が多いということですが、クリエイティブ系など感覚を使ってシゴトをしている人は、繊細に嗅ぎ分けられたりすることもあるのだとか。ちなみに、香雅堂を含めお香屋さんは稽古場を持っている所が多く、またカルチャースクールにも教室もあるようなので、香道を試してみたいという方は、その辺りを調べてみるのが良いということです。
空間づくりのための香り
香雅堂では、香道とゆかりが深い茶道の流派である宗和流とのコラボしたお線香を販売されています。その宗和流の家元はお茶席に入る前の待合で焚いて話のタネにしたり、自身が運営されているバーで焚いたりと、空間づくりに香りを利用されているそうです。そんなお香も制作されている山田さんと山崎が、コラボレーションします!山崎がデザインしている12月に金沢にオープンするホテル「雨庵」のために、山田さんと一緒に香りを作っています。ホテルのコンセプト“雨”をイメージして欲しいとお願いしたところ、「きちんと雨っぽい香り(山崎)」に仕上がっている様子です。今回は、そのサンプルをお持ちくださいました。ベースは白檀で、その上にシナモン、ウコン、ターメリックといった漢方薬、さらにリュウノウなど植物の種子を入れ、最後に現代的な香料を入れることで、ホテルなど不特定多数が集まるところでも多くの人が和むように配合しているのだとか。雨庵に入った所からラウンジで使用される予定なので、気になった方は、ぜひ雨庵を訪れてみてください。
伝統と革新
香雅堂のHPには、“伝統”と“革新”という言葉が書かれています。これについて、山田さんは「革新という言葉を使うと誤解を招くかもしれませんが、すべてを壊して新しいものを生み出したいわけではないのです」と話します。東京が本拠地となっている古くからの系譜を持つ唯一のお香の店と自覚しているという香雅堂。京都を意識してながらも1000年の文化をリスペクトしているとも言います。京都が51:49で伝統が多いとすると、自分たちは49:51で革新を強めるというぐらい微妙な匙加減での伝統と革新を意識していると山田さんは香雅堂のポリシーを教えてくださいました。
そんな山田さんが伝統と革新をマッチさせたのが、化粧品の香りの監修。新しく発売する商品に和のテイストを加えたいと依頼を受け、“化粧をする行為”と近いのが練香、薫物だと思ったそうで、平安時代の貴族の香りを化粧品に昇華させたそうです。平安時代、香料を粉末にして練り固めて薫物を作っていたと言います。独自のレシピで作った薫物を手紙や髪や着物に焚き染めることで、自己表現をしていたようで、その行為が化粧に近いと感じた山田さんは、薫物の香りをもとに化粧品の香りを作るように話をしてプロジェクトが進み、すぐに売り切れるアイテムが生まれたということでした。
文化百貨店で扱うとしたら?
みなさんにお聞きしているこの質問について、“聞香”という文化をメインとしたお店を作りたいと山田さん。香木の純粋な香りを最も丁寧な形式で愉しむのが、聞香ということですが、「その香りが本当に素晴らしい。もっと広く魅力を知ってもらいたい。」と、どこまでも香りへの愛情が伝わる山田さんのお話しに、「和の香りにポテンシャルがある」と感じた山崎でした。