2017.08.13
柳家 権太楼 vol.2
登場人物が出来上がるまで
落語を演じるには“自分が舞台監督だったら、どういう演出をするのか”という総合プロデュースをしないといけないと語る権太楼さん。セリフだけ覚えていても深みが出てこないので、セリフを全部覚えたあとに、全部捨てると言います。そして、捨てた後に出てくる感情をどう表現するのかがポイントということ。登場人物の心理を考えて1つ1つの言葉の背景を分析しながら稽古をしているうちに、権太楼さんの場合は、それぞれのキャラクターが勝手にしゃべりだしてくるそうです。そして、「こいつら面白ぇな」と思えたら、演目が腹に入ってきた証拠なのだとか。
また、「今日やるのと明日やるのは、同じネタでも全然違う」とも権太楼さんは話します。その日その日の登場人物が動き出すようで、勝手に動き出す時はノッている時。その時は、何も考えなくても次から次へと言葉が出てくるそうです。ちなみに、「次、何だっけな?」と考えている落語家は、あんまり上手ではないとのこと。寄席の際に、少し気にかけてみると面白いかもしれません。
個性は守破離で生まれる
高座での動きが特徴的だと言われる権太楼さん。東京落語は茶道と似ていて“静”が美というのが昔からの感覚なのだそうですが、“少しは動いた方がわかりやすいだろう”という事と、“自分の心の叫びだから押さえなくても良いだろう”と、大きな動きをするようになったそうです。今でこそ、権太楼さんのオリジナリティとして認識されていますが、“守破離”を経てたどり着いた個性のようです。
まずは、師匠のマネをする“守”。そして、自我が出てきても自然と“破れる”まで待ちます。破れると元に戻ろうとするものなのだそうですが、戻れないことに気付いて“離れていく”ことになって、オリジナリティが生まれてくると言います。しかし、守破離を意識しすぎて、自分で壊しては元も子もないので、権太楼さんは「守って、守って、守れ!」と伝えているのだとか。そうして、己のスタイルが出てきた時にプロとして食べていけるのが落語の世界ということです。
最後に“落語家とは?”という山崎からの難しい質問に、「男が一生かけても成り立たないかもしれない」とのご回答。登山家、冒険家と一緒で、1つの山を登ったから満足するものではない。次の山に行くにも、尾根伝いではなく、1回下りないといけない。登ったからと言って、本当に上ったのかもわからない。ずっと登り続けなければいけないので、ずっと稽古で鍛え続けなければいけない。
こんな風に芸の道をお話しいただいた所で閉店のお時間となりました。1つの道を極めていくうえでの金言をいただき、山崎もお盆明けからより一層、走り出しそうです。柳家権太楼さんの出演情報などは、Webサイト、Twitterで発信されていますので、高座をご覧になりたい方は、ぜひチェックしてみてください。
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