2017.07.30
佐藤 信 vol.2
演出のスタイル
演劇を観て「もっと役者ができるのでは?」と思うことが多いという佐藤さん。その大きな壁が“演出”だと感じているそうです。今の佐藤さんは「演劇は即興」だと考え、同じ演出をしないようにすることで、役者が活きる環境を作っているようです。以前インタービューで、演劇について「芝居を見せるのではなく、芝居をやっている所を見せる」と語っていた佐藤さんですが、その真意は、うまくいった時も、うまくいかなかった時も、どちらの状況でもお客様に楽しんでいただきたいという思いだそうです。
若葉町ウォーフ
佐藤さん曰く“終活”として今年の6月からスタートさせたのが、若葉町ウォーフ。築50年のビルを改装して、1階が劇場やギャラリーになるスペース、2階がスタジオ、3階に20床のベッドがあるという表現空間と宿泊場所が一体化した施設。以前からやりたかったものを実現したということで、アーティストが自ら活動できる環境を作るべきだと考え、そのベースとなる施設を誕生させました。活動していくうえで、助成金やスポンサーを探すのも大切ですが、自らの経験から本末転倒になる時があると佐藤さん。まず、アーティストの活動を作り出して、みんなが手助けしたくなるような仕組みを作りたいとの思いで立ち上げたということです。そして、佐藤さんが考える“世代間のバリア”“国境のバリア”“ジャンルのバリア”“伝統と現代との間のバリア”、社会に根付いているこの4つのバリアを飛び越えた、「何が生まれるかわからない場所」を目指しているそうです。ニューオリンズやリバプールのように若葉町という地名が飛び出していくことが願いとのことでした。横浜以外から人が来て、ここで上演や展示を行って活動の幅を広げるきっかけになればということですが、若葉町は成田と羽田から乗り換えなしで行ける場所なんです。空港から乗り換えなしで行けるのは、海外の人から、かなり魅力的なはずだということで、本当に国境のバリアを越えた、様々な表現者が集まってくる場所になっていきそうです。
http://wharf.webnode.jp/
今後の活動予定
秋にウォーフで、サミュエル・ベケットの「Happy Days」を上演予定。ベケットの戯曲は、ト書きが細かいことから、写真を見ただけで、どの作品のどのシーンなのかがわかるのだとか。そんなベケット作品のセリフを排除して、ト書きだけを忠実に再現するという実験作です。ぜひ、目撃してください。
佐藤さんの活動については、Twitterで情報を発信されていますので、こちらをチェックしてください。
https://twitter.com/macotosatoh
佐藤さんの活動をお聞きして、黒テントに始まり現在のウォーフと「場」が人生の中心にある方だと感じた山﨑でした。来週は、落語家の柳家権太楼さんをお迎えします。