2017.07.23
佐藤 信 vol.1
黒テント
そして始めたのが黒テント。小劇場演劇第一世代と呼ばれる、演劇シーン黎明期の伝説の1つとなっている劇団です。小さな劇場を作って、ヒットもしたものの「劇場から出かけていきたい」という発想から誕生したそうですが、劇団が全国を回ると劇場ごとに舞台のサイズなどが変わり、条件が違うことも多いですが、テントだと同じ環境を持っていくので、どこでも同じ芝居ができるという利点もあったのだとか。各地域に押しかけて「ポスター貼ってください」「チケット売ってください」とお願いをして回っていたという黒テント。無茶なお願いにも思えますが、それを手伝ってくれる人たちに恵まれていたようです。また、その頃出会った人たちが日本中にいるのが、最大の財産だと佐藤さんは語ります。
14年ぶりの書き下ろし
14年ぶりに佐藤さんが書いた黒テントの新作が『亡国のダンサー』。「当時しかできなかったこと」と、テントでの旅公演は20年ほどで終了していますが、世代交代をした若い劇団に、久々に芝居を書きたいと書き下ろした作品です。「劇団に芝居を書くのは、他とは違う」と佐藤さん。劇団員の顔も性格も踏まえた上で本を書いていくという事、お客さんが“芝居”ではなく、“劇団”を見に来るという感覚を思い出し、“劇団で芝居を書く”という事の意味を改めて感じたそうです。
演出家とは?
時代によって演出家の役割が変わっているようで、最近まで演出家の役割が強い傾向があったと感じている佐藤さんですが、ご自身のポリシーは「演劇は俳優のもの」今の佐藤さんは、俳優が作ってきたものを観客にどうプレゼンテーションをするのかが演出家の役割だと思うようになったようです。どれだけ演出が良くても、演技がダメなら面白くないし、演出がイマイチでも俳優が良ければ良くなるというのが、佐藤さんの演出のベースになっているとのこと。お父さん(演出家)の下に俳優がいるのではなく、世代ごとに感じているものを相手に合わせるのではなく、意見交換できる関係が良いのではないかとお話しされていました。その言葉を実践するように、ご自身の子供ぐらいの世代である山﨑に対しても、柔らかく接してくださいました。
演劇経験もある山﨑の興味も尽きず、あっという間に閉店のお時間に。。。来週7月30日の放送では、今年6月から佐藤さんが始められた、新しい試みについて、たっぷりお伺いします。