2018.07.15
田中里沙 vol.2
審査員のシゴト
東京2020エンブレム委員会や伊勢志摩サミット・ロゴマーク選考会などのメンバーとして、デザインの選考に関わる機会も多い田中さん。会によって議論して決める場合もあれば、投票で決定する場合もあるということですが、“親しみやすさやわかりやすさ”という部分と“どんな風に世の中に浸透していくか”という事を想像しながら、選んでいると言います。
元々、ロゴやキャッチフレーズが専門という田中さんが考える、ロゴやエンブレムの重要さについても伺いました。
「一目でわかる」
これが、最初の役割で、理念やビジョンが共有されやすく、求心力が有るものが大事だといいます。また、何回か見るうちに企業を想像してもらえるような浸透力も必要だと話してくださいました。
事業構想大学院大学
田中さんは、2016年から事業構想大学院大学の学長も務めていらっしゃいます。2012年に開学した事業構想大学院大学は、新しい事業を構想するというコンセプトの大学院だけの大学。2年通うと“事業構想修士=MPD(Master of Project Design)”という修士号を取得でき、2年の間に、事業の構想を考え、自身の経営資源に気づきながらアイデアを固めていくのだそうです。
Designには図案・設計・構想という意味があり、“大きな絵を描く”という部分がデザインに近いだろうという事で、Designという言葉を含んだ修士号にしたようです。
産官学の連携で、多様な企業や自治体・人と共同研究をして優良事例を作っていきたいと考えているという事業構想大学院大学。日本全国の自治体の首長が視察に訪れているということなので、生徒さんの構想が実際に自治体で実践される機会も増えていきそうです。
■事業構想大学院大学が取り組む「ランナーズ・ヴィレッジ」構想
https://www.mpd.ac.jp/runners_village/top/
地方創生への想い
事業構想大学院大学で「産官学一体での取り組みを強化していきたい」と話していらっしゃった田中さんは、それ以外でも地方創生の場で活躍をされています。
“経営資源に気づいて、人が行きたくなる仕掛”を作り、関係人口を増やすこと、地方創生にとって必要だと考えているそうで、他の地域と比べてPRするのではなく、歴史を踏まえた物語を伝えることが重要とも言います。
そして、田中さんは、その工夫のためには、クリエイティブの力が大事になってくると考えているご様子。地域や行政に足りがちなマーケット発想を補い、プロデューサー的な立ち回りをするにはクリエイターが最適なのだとか。
そういった想いから、毎年2月に事業構想大学院大学が東京ミッドタウンで実施しているのが『地域×デザイン』。日本のGDPの半分を生み出している地方(地域)とクリエイターを繋げる、このような取り組みを広げていきたいと話してくださいました。
■地域×デザインとは
https://www.mpd.ac.jp/lds/outline2018/
文化百貨店で扱いたいモノ
田中さんにも番組恒例の「文化を伝える架空の百貨店で、自身がバイヤーとして扱うとしたら?」という質問をぶつけてみました。
お子さんがスポーツの部活を頑張っているという事で、田中さんの悩みは“差し入れ”なのだとか。そこで差し入れというコンセプトの一角を作って、様々なシチュエーションに合わせた差し入れの品を提案したら便利なのにということでした。
また、子育てを卒業された先輩ママが、生活を豊かにしたり教育に役立つようなモノをママからママへ伝承していくようなのも面白そうだと話してくださいました。
といった所で、今回の文化百貨店も閉店となりました。デザイン、そしてクリエイティブで世の中に伝えるという意識を広げる活動をされている田中さんの姿に、背筋が伸びる思いがした山崎でした。
次回は、テレビ美術制作会社勤務・作家 ・コラムニストの燃え殻さんをお迎えしてお送りします。
今週の選曲
田中里沙さんのリクエスト
YMM / Suchmos
山崎晴太郎セレクト
THE OTHER WAY / CHANTAL ACDA