2018.09.09
三潴末雄 vol.2
世界で影響力のある日本のアーティスト
日本から世界へ飛び出していく現代アーティストも多くなっている時代ですが、その中で三潴さんが1人名前を挙げるとするならば、村上隆氏だと言います。
『TIME』誌の“世界で最も影響力のある100人”にも選ばれている村上隆氏。スーパーフラットというコンセプトを立ち上げ、それに合致するアーティストを選んで海外で展覧会を行うという事を、キュレーターでなくアーティストである村上氏が実現させた事や欧米に対して日本のアートへ興味を持たせたパイオニアとしての実績も踏まえて、外せない人物だと考えている様子です。
実は、三潴さんは最初期の村上氏と縁もあったと言います。村上氏が大学院を出てまもない頃に三潴さんのギャラリーにポートフォリオを持って訪ねてきたそうです。その際に、昼食代の代わりとして、三潴さんは村上さんの作品を購入。そんな出会いから三潴さんは、村上氏から「僕の作品を2番目に買った人」と認識されているのだとか。
海外でのギャラリー展開
世界中のアート関係者との交流もある三潴さんは、これまでに何度か海外でギャラリーを展開されてきました。
最初に出したのは北京。798芸術区で、欧米のギャラリストや美術館の館長と話をした時に、「Far East(東京は遠い)」と言われ、アジアのアートの中心が北京になるのではないかと危機感を感じたそうで、北京に出すことを決意。その後、シンガポールが文化事業の1つとして、ギルマン・バラックスにギャラリーや美術館を招致するのに声を掛けられ、出店してきたと言います。
そんな三潴さんが、次に出す場所はニューヨーク。20年来、出店したいと思っていた場所で新しいチャレンジが始まると言います。今回は、ミヅマアートギャラリー単体ではなく、3つのギャラリーでスペースをシェアしていくというもの。SOHO、チェルシーに次いで、アート熱が高まっているLower East Sideに10月にオープン予定ということです。
現在とこれからのアート業界
現代のアートシーンで頭角を現すためには、ビジュアル的な強さのほかに、“多作で制作スピードがあること”と、“西洋美術を少し研究している”という面が必要だと三潴さん。それなりに作品が出回っていて、かつコンセプトが出ている作家はマーケットの受けが良いと言います。
しかし、売れているアーティストが後世に作品が残り続けて行くかというと、必ずしもそうとは限らないのがアートの世界。今後、AIが発展していくと人間の身体性や、手を実際に動かして作り上げた作品の価値が高まるのではないかと三潴さんは考えているご様子。
多作の作家よりも、制作に時間がかかりながらも、圧倒的な手仕事やアーティスト本人の技術を結集させたような作品が後世の人を感動させられるのではないかということで、そういう時代に耐えられる作家や作品を残していきたいと話してくださいました。
文化百貨店で扱いたいモノ
番組恒例の“文化を伝える架空の百貨店でバイヤーとして扱うとしたら?”という質問への三潴さんの回答は、「アート熱病になる薬」。アートコレクターが発するコレクター熱がどんどん高まって、どんどん作品が欲しくなるような薬を扱いたいということでした。
「日本の現代アート、文化を支えるのは、日本の人たち」という言葉が大きく響いた、三潴さんとのお話しでした。
といった所で、今回の文化百貨店も閉店となりました。次回は、香道志野流二十一世家元継承者の蜂谷宗苾さんをお迎えします。
今週の選曲
三潴さんのリクエスト
夢中人 / フェイ・ウォン
山崎晴太郎セレクト
INTO THE DARKER ARCHITECTURE OF YOURS / Tim Linghaus