2018.11.25
東 俊一郎 vol.1
メキシコにたどり着くまで
鹿児島県出身の東さん。与論島、沖永良部島という島で高校まで過ごした後に鹿児島大学へ進学しますが、建築を学ぶつもりはなかったのだとか。現場を見てみると、人とのコミュニケーションを通じてモノが出来上がることに魅力を感じて、建築の道を志すことになったそうです。
そこから、東京の事務所やスペインでの生活を経て、現在はメキシコのモンテレイ大学で教鞭をふるっている東さん。きっかけは、モンテレイ大学のデザイン学部棟が竣工されたことだったようです。7年前に竣工されたその建物は、安藤忠雄が設計。それに伴って、海外から教員を集めているという情報を聞き、自ら手を挙げたと言います。
各国から教員が集まっているようですが、日本人は東さん1人。さらに、授業を受けるのも基本的にはメキシコ人の学生という事で、文化の違いを感じることも多々あるようです。
ルーツは建築にある東さんですが、1年生~3年生がとるカリキュラム住宅や店舗の設計を教えているようです。ただし、日本と同じぐらいの人口にも関わらず、国土が5倍もあるということで、土地に対する考え方が違うのだとか。家のサイズも、北部で220㎡が目安、富裕層だと500㎡以上の住宅も珍しくないというのがメキシコの住宅事情。生徒に指導をしながらも、東さん自身も当初はサイズ感の違いに戸惑っていたようです。
サイズへの戸惑いは逆もしかり。メキシコの学生を日本に連れてくる機会もあるそうですが、カプセルホテルや民家を見て狭さを感じる学生ばかりなのだとか。狭すぎてカプセルホテルで一夜を過ごすのは嫌がりそうですが、“体験”として面白がって泊まる好奇心旺盛な学生が多いようです。
家、土地への捉え方が違うように、国民性の違いも感じる東さんは言います。メキシコ人は、すごく明るくて自己主張が豊かという反面、スペインに征服されていた歴史もあってかお願いされたらNoと言わない部分もあったりと複雑なキャラクターを持っていると感じることもあるようです。
また、ものづくりに関しては、1つのことを突き詰めていく職人気質というよりは、感情的なモノを重視する気質が強いというのもメキシコの特徴であるようです。そして、プロダクトについては外国崇拝が強く、日本やアメリカ、ヨーロッパから来たモノへの信頼が高く、自国産への評価がまだまだ低いというのがメキシコの現状のようです。
そんな流れをデザインから打破しようという思いで作られたのが、東さんが所属するモンテレイ大学のデザイン学科であり、そんな風潮はメキシコ全土に広がっているようでデザイン関連のイベントが盛んに行われ、若手のデザイナーが育っているそうです。
東さんがオススメしてくださったメキシコの若手デザイナーがHector Esrawe。プロダクトデザイナーでありながら、アート的なプロダクトを生み出している数少ないデザイナーだということです。
https://esrawe.com/2018esrawe/en/home/
ついコレクションしてしまうモノ
メキシコで古びた骨董屋さんを巡ることが好きだという東さん。そこで、ドアの取っ手やつまみを見つけるとついつい欲しくなってしまうのだとか。不格好だけども、可愛らしい1点モノばかりなので、2度と出会えないという思いから数が増えて行くようです。
周りからは「何に使うの?」と言われても、一期一会を大事にしている東さんでした。
といった所で、今回の文化百貨店は閉店となります。来週も東さんにメキシコの建築を中心にお伺いしていきます。
今週の選曲
東俊一郎さんのリクエスト
Cuando Calienta el Sol / Luis Miguel
山崎晴太郎セレクト
far island / Quentin Sirjacq