2018.12.02
東 俊一郎 vol.2
デザインワーク
大学で教鞭をとりながら、自らのデザインの仕事も行っているという東さん。自身の創作の場合も、いい機会だからと授業を絡めた形で進めることも多いようです。教育と創作となると棲み分けが難しい印象もありますが、研究を通じてのリサーチや自分の気になるデザインの勉強など、繋がっている部分も多いと言います。
そんな東さんですが、最近では創作よりも教育への影響を大きく考えるようになっているご様子。それは、日本大使館の仕事を行った際に、その後の波及効果は人を巻き込まないと生まれないと感じたことがきっかけだったそうです。常に学生を受け入れて刺激を受けながら、自身の経験をフィードバックしていくのが、現在の東さんのものづくりの形となっているようです。
その他にも、Post Urban Living Innovationという千葉大学とメキシコの8大学が提携して行っている日墨の若手人材を育てるプロジェクトにも関わっている東さん。このプロジェクトでは5年間で500人の学生を交換留学させながら、企画を立ち上げ、そこからベンチャーを立ち上げ製品化することを目標に動いているそうです。
http://design-cu.xsrv.jp/puli/
スペインでのリサーチ活動
メキシコに渡る前には、スペインを拠点にしていた東さん。不況が続くスペインにおいて、デザイナーがどのように生きているのかというのを個人的に興味を持ってリサーチに行ったのだとか。
スペインの人の特徴として、土着意識が強く、家族と一緒に生活を共にする中で、デザイナーとして生きていくという考えが多いと言います。そんな環境かつ不況という事で、チャンスを求める人たちがストリートに飛び出し、自分をアピールしようとしているそうです。
中でも東さんの目を引いたというのが女性デザイナーの作品。穴の開いた外壁や、金網に花のステッチアートを施しているというもの。遠くから見るとモザイクタイルか、花の絵を描いたようにしか見えないものの、近づいて見てみると刺繍という作品。その脇に、自身の名刺を置いて、自身のPRをしているというもの。
オランダの仕事のないデザイナーからコンセプトデザインが生まれたように、無い環境から何かを生み出そうとするクリエイターの知恵と意識の高さは、共通のものがあると山崎も関心している様子です。
メキシコの色彩文化
現在、東さんが拠点を置いているメキシコは、ルイス・バラガンに代表されるようにポップで明るい色彩のイメージが強い印象がありますが、その辺りについても伺いました。
メキシコは植物だけで2万種も生息するという世界でも最も多様性のある地域。その影響で、自然界に色彩が溢れているそうで、マヤ文明やアステカ文明の頃から街には色が溢れていたと言います。その影響が現在まで続いている事が、1つの要因になっているようです。
また、スペインの征服から独立し革命を経て行く際に、入植者が生活していた大規模な区画が切り売りされていったそうですが、その時に新しい建物を作らずに、元々の建築物の壁を塗り分けて持ち主を分けたことも、メキシコの街並みをカラフルにしている要因だと言います。
そんな街並みは世界遺産にも指定されているため、国策として街並みの保全をしメキシコらしい集落を残すという動きもあるようです。政府が色を決め、勝手に塗るということもあるのだとか。日本では考えられない施策ですが、豊かな自然から育まれた文化を強制的とは言え、守ろうとする動きは盛んなのだそうです。
文化百貨店で扱いたいモノ
番組恒例の“文化を扱う架空の百貨店でバイヤーをするなら?”という質問に対して、東さんの回答は「メキシコの色彩をどんどんアピールしていきたい」。メキシコの文化のテーマの1つとして混在というものがあり、色彩も混ざっていると言います。
そんな色とりどりのメキシコの品や、東さんがコレクションしている顔料を置いたりする一角を作れば、日本古来のグレーや茶色の幅広さが目立ち、面白いコントラストを表現できるのではないかと話してくださいました。
といった所で、今回の文化百貨店も閉店。「治安が悪い」という印象のメキシコですが、そこで6年間生活しているからこそ見える有意義な話をどんどん発信して、日本との交流を深める一助になりたいという東さんのお話しで、日本にいるだけではわからないメキシコの魅力を感じることができた2週間でした。
次回は、ナオランジェリー デザイナーの栗原菜緒さんをお迎えしてランジェリーの世界についてお伺いしていきます。
今週の選曲
東俊一郎さんのリクエスト
Bailar Contigo / Monsieur Periné
山崎晴太郎セレクト
A Catalogue Of Afternoons / Max Richter