2019.02.17
塩田 健一 vol.1
『月刊商店建築』とは
1956年8月号が創刊という63年もの歴史を誇るストアデザインの専門誌が『月刊商店建築』。内装やインテリアなど、商業空間に関わる方には外すことが出来ない雑誌です。第二次世界大戦から10年が経ち、少しずつ購買意欲が出てきた日本において成長していくであろう“店舗デザインを資料として蓄積していく”という使命を持って創刊された雑誌だと塩田さんは言います。
写真と原稿、そして図面を用いてお店を紹介するスタイルは創刊当時から変わらないもの。店内空間を作るノウハウを日本中で共有して、設計能力を上げていこうとの思いが込められています。
建物そのものよりも入れ替わりが激しい内装なので、当事者も資料を保管していない事も珍しくありません。そう考えると『商店建築』のお蔭で、戦後日本のストアデザインが資料化されたと言っても過言ではないかもしれません。
●創刊当初の商店建築資料
『商店建築』の編集長という仕事
大学、大学院と建築を学んでいたという塩田さん。建築についてのレポートが得意だった事と、元々の読書好きの部分が影響して、建築の現場ではなく、文章を通じて建築や店舗デザインの魅力を発信する『商店建築』に携わりたいと思ったそうです。
現在は塩田さんを含め7名の編集部員で雑誌を作っているそうですが、本当に1から自分たちで作り上げているようです。何を特集するかの企画会議から始まり、掲載するお店の選定、設計者や建築家などへのインタビュー、店舗撮影の立ち合い、原稿化作業、レイアウトに至るまで、すべてが編集者の仕事だと言います。
そんな編集者としての仕事の1番の魅力は、「時代の風を1番に感じられること」だと塩田さんは感じているようです。店舗がオープンする前に情報が入ってくるので、これからのストアデザインの潮流に、いち早く触れることが出来るのが最大の醍醐味なのだとか。そこで感じた流れを、読者に届けるのが役割だとも話してくださいました。
『商業建築』の人気コンテンツ
年に12冊発行される『商店建築』において、年間に2回も特集されているというのが、ホテルとカフェ。この2つの特集の時は、発売部数が伸びるのだそうです。中でも都心部で建設ラッシュが続くホテルの影響は大きいようで、建材メーカーからの出稿が相次ぎ、誌面がどんどん厚くなっているのだとか。(編集部がつくるページ数は変わっていないそうです)
そして、ホテルやカフェの特集と変わらない人気があるというのがオフィス特集。ここ数年、商業空間をデザインしてきた人たちが求められる分野が広がってきており、オフィスもその1つだと塩田さんは言います。また、珍しいものでは、都市型の墓地・納骨堂にもその波はやってきていて、『商業建築』でも昨年に特集を組んだと言います。
人気コンテンツという読者のニーズに応えながら、新しい流れを発信しているのが、『商店建築』が変わらない立ち位置を築いている所以かもしれません。
最近気になるお店
多くの新店舗を見ている塩田さんが最近関心したというのが、2018年末に六本木にオープンした文喫という書店。青山ブックセンター跡地に誕生した書店ですが、本屋、カフェ、フリースペースが同居しているというお店。
様々な機能が同居している店舗は増えてきていますが、メインの“おまけ”のように別の機能が入っていることも珍しくありませんが、塩田さんによると文喫は、それぞれのエリアが単体でも機能するだけのクオリティを兼ね備えているそうです。そのため、来店動機が3つあるお店になっていると言います。
そして、書店としても選書に特徴もあるようです。人気の書籍をメインにたっぷり置くのではなく、人気書籍の隣にはちょっとマニアックな本も並んでいて、そこでしか出会うことが出来ないような本も買うことができるのだとか。
時代の風を真っ先にキャッチする塩田さんオススメの書店・文喫。六本木界隈へいらっしゃった際には、ぜひチェックをしてみてください。
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。来週も『月刊商店建築』編集長の塩田健一さんにお話しを伺います。
今週の選曲
塩田さんのリクエスト
Hotel California / Eagles
山崎晴太郎セレクト
Memories of Nanzenji / Mark de Clive-Lowe