2019.04.14
後藤 治 vol.1
文化財とは
子供の頃からお寺や神社が好きだったという後藤さん。五重塔を建ててみたいという夢から、建築の道を志したと言います。昭和63年に文化庁に入庁し文化財の保護業務に就かれますが、その時点で神社や仏閣は、文化財として認められているものが多かったため、近代のモダン建築に携わるようになったそうです。
歴史的な建造物は、法隆寺や姫路城などの国宝を頂点に、重要文化財、登録文化財といったものに分けられます。後藤さんが文化庁にいた頃に出来た“登録文化財”は、ちょっとした古い建物でも認められる可能性があるそうで、歴史のある建物の価値の底辺を広げるような意味合いと同時に、登録された建物が壊された際にどのような理由だったのかをデータ化していくことで、次の時代に建物を遺していくための情報収集の側面もあるのだとか。
印象的な文化財
後藤さんが携わった中で、最も印象に残っているというのが、東京日本橋にある三井本館を重要文化財に登録する作業。重要文化財となると、規制がかかるため所有者の同意が必要になりますが、三井不動産が現役で使用していた建物だったため、交渉が難航したそうです。
そのため、企業側で自社の歴史的価値を遺したいと考えている人たちとプロジェクトを組んで重役を説得しながら、文化庁に対して改造できる範疇を広くとるように調整をしたりして、ようやく重要文化財への登録に繋がったと言います。
そんな経験をしてこられた後藤さんによると、遺っている建物は“運が良い”のだとか。天災や人と良い出会いがあった建物だから、遺ることになったと感じているご様子です。
辻静雄食文化賞を受賞
建築関係のお仕事をされている後藤さんのキャリアの中で異彩を放つのが、辻静雄食文化賞という食に関するアワードでの受賞。『食と建築土木──たべものをつくる建築土木(しかけ)』という本の共著者として受賞されています。
この著書は、伝統的な食品づくりに関わっている小屋や仮設物を取り上げる雑誌の連載をまとめたという1冊。干す、燻す、貯蔵、発酵といった昔ながらの食品づくりを行う上で欠かすことが出来ないハードを建築の視点から紐解いたと言います。
その製法をいつ頃から採用しているのかは、取材の中でわかったようですが、そのルーツを辿るといつになるのかわからなかったり、伝統的な製法だと思っていたことが意外と新しい技術だったりと、予想できない出来事も多かったそうです。
食と建築との関係性に興味のある方は、ぜひご覧ください。
https://www.livingculture.lixil/publish/post-169/
つい買ってしまうモノ
本日、最後にコレクションしているモノについて伺いました。ハチミツを集めているという後藤さん。世界のどんな国にも蜂がいて、ハチミツを売っているので、海外に行った際には必ず購入すると言います。
各国のハチミツを味わってきた後藤さんですが、「あまり大差がないから、どこが美味しいかわからない(苦笑)」とのこと。その国の風土をハチミツを通して感じるだけで、満足されている様子の後藤治さんでした。
といった所で今週の文化百貨店は閉店となります。次回も後藤さんをお迎えしてお送りします。
今週の選曲
後藤治さんのリクエスト
Strong Man / Wynton Kelly
山崎晴太郎セレクト
Haru / 坂本龍一、Fennesz