2019.04.28
浦沢直樹 vol.1
漫画を描くこと
1983年のデビュー以降、止まること無く作品を発表し続けている浦沢さん。小学校低学年の時には、ほぼ今と同じような形の長編漫画を描いていたと言います。当時は、プロの漫画家との技術の違いを痛感し、“漫画家になる”という“夢”は抱いていなかったそうですが、大学卒業時、編集者に勧められて応募した小学館の新人賞を受賞し、プロデビュー。“夢を追いかけて”というよりは、子供の頃から日常的に続けていることがシゴトになったという感じのようです。
漫画家という夢を描いていなかったという浦沢さん。学生時代には、陸上やバンド活動に精力的になってのめり込んでいたようですが、気がつくと描いた漫画が溜まっているという状態だったのだとか。漫画が単なる趣味という域を超えたものだということがわかります。
自身の作品について
浦沢さんの漫画の原体験は、4~5歳の頃に手元にあったという手塚治虫さんの2冊の漫画。それが漫画へと向かわせたきっかけともなったようですが、中学生の頃に読んだ『火の鳥』で自身が味わった人生を揺るがすような体験を自分の作品から受けることは出来ないので、永遠に追いつくことができないと感じていると言います。
一方で、後進を含め多くの人に影響を与え続けている浦沢さんの作品。その題材も様々ですが、題材から作品をつくることは無いのだとか。その作品の感情やムードから発想して、その空気感に合うものを題材として選んでいるそうです。
例えば『20世紀少年』の場合、国連の事務総長が「彼らがいなければ我々人類は21世紀を迎えることがなかったでしょう」という言葉だけが、頭に浮かび、そこからストーリーが紡ぎ出されたのだとか。
このように、映画の予告編みたいなものが頭に浮かび「何だコレは?」という所から、ストーリーや題材を探して描いていくのが浦沢さんの作品づくり。ほとんどの場合、連載をスタートする時点で展開やラストシーンのイメージは出来ているようです。
連載中の『あさドラ!』
現在、ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載されているのが『あさドラ!』。その名の通り、ある女性の半世を描いていく作品です。これは、浦沢さんが元々持っていたアイデアがベースになっているのだとか。
東京オリンピックをドラマに絡めたいと思った浦沢さん。そこで1964年頃をドラマの舞台にと考えるうちに、さらにそのストーリーの起点になるものをリサーチした所、伊勢湾台風という戦後最大級の災害の1つにたどり着き、そこから描いていくことになったと言います。
そこからのストーリーはネタバレになるので、浦沢さんの口からは語られませんでしたが、全体の話の流れやラストシーンはほとんど決まっているということ。そこに向けてどう動かしていくのが1番面白いのかを考えながら作品を描いているようです。なぜ、そのように描いていくことができるのか、という問いに、「答えはもうわかっているから」の一言。さすがの一言に山崎もシビレます。
物語を動かしていく上で、重要となるのが役者(キャラクター)。描いているのは浦沢さんご自身ですが、キャラクターが“演技達者”だったりすると、違う展開を生んだりすることがあるのだとか。どのキャラクターが、最初の浦沢さんの想像を超えた演技達者なのかを考えながら読むと、より一層、作品が面白くなるかもしれませんね。
4月26日に19年ぶりの短編集『くしゃみ』も発売されています。1995年以降に描き溜めていた作品をまとめたという1冊。こちらも合わせて、チェックしてみてください。
『あさドラ!』第1巻発売中!
https://bigcomicbros.net/comic/asadra/
『くしゃみ 浦沢直樹短編集』
https://comics.shogakukan.co.jp/book-series?cd=48122
といった所で、今回の文化百貨店も閉店となります。次回も浦沢さんに、たっぷりお話しを伺います。
今週の選曲
浦沢直樹さんセレクト
ガラクタ / 浦沢直樹
山崎晴太郎セレクト
Plastic Energy Man / Papa M