2019.05.12
中井康之 vol.1
現代美術とは
あまり触れたことのない方には難しく感じるかもしれない現代美術。様々な定義があるようですが、中井さんによると“網膜から脳膜へ”刺激を与えるもの。視覚だけでは理解するのが難しく、作家がその作品を描いたバックボーンを想像し繋がった瞬間に面白さがわかってくるものだと言います。
学芸員のシゴト
そんな現代美術を中心に扱っているのが中井さんが副館長を務める国立国際美術館。中井さんを含めた学芸員さんのシゴトは、展覧会(アートイベント)を0から作り上げて行くことなのだそうです。
ある作家で展覧会を実施しようとした場合、その作家のすべてを調べ、作家と共に展示構成を考えていくという内容がベースとなるようです。その作家の展示したい作品が別の美術館に収蔵されていたら、書面で貸し出しの依頼のやり取りをしたりしながら、実施が決まってから、2年~3年がかりで1つの展覧会をつくっていくので、常に数本の企画が同時に動いていると言います。
国立国際美術館では、基本的に1つの展覧会は1人の学芸員で担当。インターンや学芸補佐員にフォローしてもらいながら、図録やポスター、展示、PRに至るまで、プロデューサーのような立ち位置で、作り上げていくそうです。
展覧会の裏話
先ほど少しご紹介した他の美術館への貸し出し依頼ですが、思うように進まないことも珍しくないようです。ゴッホの有名な『ひまわり』は、ゴッホ美術館が今後、貸出を行わないと発表したそうですが、それは作品保護のため。長距離の移動となると湿度の関係などで、痛むようで、貴重な作品を借りるには、相当ハードルが高いようです。
また、中井さんが以前に企画された『アヴァンギャルド・チャイナ―〈中国当代美術〉二十年』では、中国から作品を持ち出すこと自体がハードルが高く、通常移動の際にかける保険の他に、デポジットのようなものが必要になったそうです。
こういった困難に対して、学芸員さんが様々な手を使って調整しながら、実現しているのが展覧会だということです。
そんな展覧会ですが、展覧会自体は期間が過ぎると終了して無くなってしまいます。どういうコンセプトで、どんなモノが介していたのかという記録的な側面を持っているのが、会場で販売されている図録。来場者としては、魅せられた展示の思い出となる図録ですが、制作者からすると、記録という面を持っているアイテムだということです。
今、注目のアーティスト
今のアーティストを数多くチェックされている中井さんに、注目している日本人アーティストについても伺いました。中井さんが気になっているというのは、柳瀬安里さんというまだ大学を出たばかりという若手の映像作家。『線を引く』という作品で表現されていた内容が印象に残っているそうです。
『線を引く』についての中井さんの細かい考察は、こちらのサイトをご覧ください。
https://artscape.jp/report/curator/10153586_1634.html
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。来週も国立国際美術館・学芸課長兼副館長の中井康之さんに現代アートのお話しを伺っていきます。
今週の選曲
中井さんのリクエスト
(Just Like)Starting Over / John Lennon
山崎晴太郎セレクト
Tears of Unicorn / Masayoshi Fujita