2019.05.26
熊本 浩志 vol.1
amadanaを立ち上げるまで
実家が電気屋だったという熊本さん。幼い頃から最新の家電に囲まれ、販促品としてやってくる最新の音楽や映画に触れて過ごしてきたと言います。そんな環境で育った熊本さんは大学を卒業後、大手家電メーカーの東芝へ入社。その中で、イラストレーターの若野桂さんとコラボしたインターネット限定販売のカスタマイズできる電子レンジのプロジェクトを進めるなど、現在のamadanaに通じる活動をされていたそうです。
社内でうまく調整をしながら、新しい家電を発表すべく動いていた熊本さんですが、あるプロダクトを企画していた時に、社内では継続が難しいということになり、わずか3年で独立を決意。リアル・フリート(現amadana)を立ち上げることになります。
一世を風靡した電卓の誕生
日本では、デザイン家電という分野が全くと言っていいほどなかった時代に、デザイン性のある家電を世に送り出そうとしていた熊本さん。「何の会社ですか?」と聞かれ続けて、辟易としていたそうです。そんな時に、ポケットから出して「これを作っています」とすぐ渡せるプロダクトがあれば便利だと思い誕生したのが、電卓。実際に、電卓を渡すと「カッコいいじゃん!」と会話が弾むというメリットがあったと言います。
さらに宣伝広告をかけずにPRをするために、熊本さん自身が電卓を持って、原宿のセレクトショップでサンプリングを実施。オシャレなスタッフが使っているオシャレな電卓ということで広まり、amadanaの存在を一気に知らしめるプロダクトとなります。
コミュニケーションの在り方を変える
5月末に一般発売になるのが、CDプレーヤー。昨年、クラウドファンディングで4200万円もの金額が集まったというプロダクト。デジタル配信が主流となっている音楽市場ですが、「平成の30年間で溜まったCDをもう1回引っ張り出そう」という思いから製品化したと言います。
“頭は合理的だけど気持ちは不条理”というのが、熊本さんが思う人間像。その不条理な部分を形にしていくのが好きで、プロダクトはコミュニケーションツールだと熊本さんは考えているそうです。使った人が他の人に伝えたくなるような、ちょっとくすぐる機能を盛り込むのがamadanaのスタイル。
最新のテクノロジーにこだわるのではなく、“ローテク・ハイデザイン”という考え方で、価値のないモノに価値を付けることでコミュニケーションを変えてマーケットを広げていくという思い出プロダクトをつくり続けていらっしゃる様子です。
クリエイティブに必要なこと
現在は、家電だけに限らず、あらゆるフィールドを舞台にデザインやクリエイティブの力で価値を上げるという作業をされているamadanaは“クリエイティブ総合商社”というキャチコピーを名乗っています。
そんなamadanaグループを率いる熊本さんにとってのクリエイティブは“一石三鳥”を生み出せるモノだと言います。ロジカルでたどり着ける一石二鳥のその先にある「ちょっとぶっ飛ばさないと出てこない」所が重要だと言います。ただ、社内ではハードルを上げて「クリエイティブは一石五鳥だ」と伝えているという熊本さんでした。
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。来週も熊本さんをお迎えして、スポーツ分野での活動のお話しなどを伺います。
今週の選曲
熊本さんのリクエスト
Emeralds / Adeline
山崎晴太郎セレクト
hinein, hinaus? / Christoph Berg Henning Schmiedt