2019.07.07
高橋 久美子 vol.2
詩の原体験
高橋さんにとって、詩との出会いは中学校の授業だったそうです。書く事に魅力を覚えたのは、国語の先生の影響。毎回、授業が始まる前に、藁半紙が配られ、そこに先生が出すお題に沿った詩を自由に書くということがあったのだとか。ただ書くだけではなく、先生が「ここが面白い」と返してくれるというやり取りもあったようで、その経験が詩を書く原点になったと言います。
また、詩人という存在を意識したのも中学生の頃。谷川俊太郎さんの『朝のリレー』を教科書で見て、「何て美しいんだ、この言葉は」と感動したことも大きな転機だったようです。
詞と詩
作詞と詩、どちらも言葉を紡ぐ作業ですが、高橋さんの中では意識が違うようです。作詞は、自分ではない第三者が歌うので、なるべくその人を意識して書くという一方、詩は自信が100%感じたことを書くので、丸裸に近い感覚だと言います。
とは言え、作詞の際に歌い手の事を知り過ぎるのもよくない場合があるのだとか。知り過ぎると、想定内のことしか書けなくなってしまうので、マネージャーさんから情報を得て、そこから想像していき歌い手の想定外のことを書いた方が面白いと考えているようです。
翻訳家としてのシゴト
最近では絵本の翻訳もしている高橋さん。手掛けた作品『お母さんはね』は、原作のタイトルにも本文にも“mother”という単語は一切出てこないと言います。読み終えた高橋さんが、「この世に生を受けている人はみんな、お母さんから生まれてきた」という事に改めて気付かされたことから、このタイトルの翻訳になったそうです。
出版社の方の「詩を書いている時の高橋さんの感性で」というアドバイスを基に、原作のストーリーから飛躍しながらも、メッセージの本質を伝えることに意識を置いて翻訳をされているご様子です。
小説を生み出す苦しみ
高橋さんが、エッセイなどの“有るモノ”を書く方が得意だと感じさせられたというのが、正反対とも言えるフィクションの小説を書く時。「主人公が勝手に動き出すっていうカッコイイことを言ってみたいけれど、動かない時もある」のだとか。
そうやって煮詰まっている時にリフレッシュになるというのが、作詞の依頼。1年がかりになることもある小説と違って、作詞の納期は3日ぐらいなので、達成感が早く生みの苦しみから、その時だけは逃れられると話してくださいました。
といった所で、今回の文化百貨店は閉店となります。作詞、エッセイ、翻訳、連載、ラジオ番組などなど、幅広く活動されている高橋さんの最新情報は、オフィシャルサイトでチェックをお願いします。
次回は、GINZA SIX内にあるギャラリー・THE CLUBのマネージングディレクター山下有佳子さんをお迎えします。
今週紹介したイベント
リュック・タイマンス展@イタリア・グラッシ館
https://www.palazzograssi.it/en/exhibitions/current/luc-tuymans-la-pelle/
今週の選曲
高橋さんのリクエスト
そのいのち / 中村佳穂
山崎晴太郎セレクト
When You Run with Your Father / Slawek Jaskulke