2019.07.21
山下 有佳子 vol.2
世界から見た日本のアート市場
日本には古美術の時代からアートに対する文化が成り立っている土壌があるものの、世界のアート市場を見てみると、マーケットが小さいというのが現状のようです。アートとお金を結び付けないという面も日本ならではとのことで「このアートいくら?」という質問を直接しない人が多いのも、日本独特の風習なのだとか。
こういったマーケットの小ささや、情報伝達ツールの発信に伴うギャラリーとアーティストの関係性の変化によって、アーティストは世界に出て行くべき環境にもなってきているようです。
海外のアート業界との接点も多い山下さんによると、アーティストが世界に出て行くために必要なのは“情報力”と“メンタリティー”。日本と海外とでは、圧倒的に入ってくる情報量が違うので情報を入手して精査する力と、海外の人たちとビジネスとして渡り合って行く精神性が必要ではないかと話してくださいました。
現在のアート業界のトレンド
アーティストが好きに制作していそうに見えるアート業界ですが、山下さんによると「社会を映し出す鏡」だと言います。そのため、時代の移り変わりに寄り添う形で、トレンドが生まれているようです。
山下さんが感じる、最近の流れは“マイノリティ”。黒人アーティストやエスニシティといった所や、女性アーティストへの再評価という現象が増えてきていると言います。
そういった流れの中で、山下さんが注目しTHE CLUBでも個展を開いたアーティストがコア・ポア。イラン系のイギリス人で、現在はロサンゼルスを拠点に活動しているという30代前半のアーティストで、その作品はルーツのイランを反映したペルシャ絨毯をベースに様々な時代や国がリミックスされているというもの。
こういったクロスカルチャーのアーティストが、どんどん出てきているのが、現在のアートシーンのようです。
ちなみに、コア・ポアが拠点としているLAは、勢いのあるアーティストが続々と出てきていて、現在注目の場所なのだとか。
THE CLUBで開催されたコア・ポアの個展情報は、こちら
http://theclub.tokyo/ja/exhibitions/kourpour/
今後実施してみたい企画
様々なアーティストやアート関係者と接点のある山下さんが、やってみたいと温めているというのがキュレーターにフォーカスをした企画。というのも、海外では“Independent Curator”と呼ばれる、美術館に属さないフリーランスの若いキュレーターが出てきていて、面白い人物が多くいるのだと言います。
THE CLUBを海外のアートシーンに、気軽に触れられるような場所にしたいと考えている山下さんらしく、海の向こうで盛り上がっている新しい感性を、ぜひ日本に紹介したいということでした。
そんな山下さんがマネージングディレクターを務めるTHE CLUBで8月24日まで開催されているのが『ニコラス・ハットフル こころの温度』。ロンドンを拠点に活動している35歳の若手アーティストのアジアで初の個展です。最近の若手では少ないというシュールレアリスム絵画のアーティスト。銀ぶらで暑くなったらGINZA SIXでゆっくりとアートを見ながら涼むのはいかがでしょうか。
http://theclub.tokyo/ja/exhibitions/nicholas/
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。次回は、雑誌『Pen』の編集長・
安藤貴之さんをお迎えします。
今週紹介したイベント
虫展 −デザインのお手本− @ 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー
http://www.2121designsight.jp/program/insects/index.html
今週の選曲
山下さんのリクエスト
7 Seconds(feat. Neneh Cherry) / Youssou N’Dour
山崎晴太郎セレクト
Tearjerker / Chilly Gonzales, Jarvis Cocker