2019.09.15
橋爪 勇介 vol.2
アート業界におけるジェンダーフリー
様々な問題で話題になった“あいちトリエンナーレ”ですが、参加アーティストの男女比を半々にするという事で、アート業界では話題になっていたと橋爪さん。というのも、アート業界の男女バランスはかなりいびつなものがあるのだとか。
Web版『美術手帖』によると、全国の美術館の学芸員は女性74%:男性26%ですが、館長となると女性16%:男性84%と逆転の数字が出ていると言います。これは日本だけではなく、世界のアート業界においても同じような現状があるようで、海外の美術館などでは、そのギャップを積極的に埋める動きがあるそうです。
この問題に対して、Web版『美術手帖』で今年から連載が始まったシリーズが「ジェンダーフリーは可能か?」というもの。橋爪さんが直接手掛けられているものではありませんが、現在のアート業界の側面がわかる連載なので、興味のある方はぜひご覧ください。
「ジェンダーフリーは可能か?」記事一覧ページ
https://bijutsutecho.com/magazine/series/s21
アート業界とAi技術
他の業界と同じく、アートでもAiに注目が集まっているようで、ニューヨークでは「アート+テックサミット」というイベントが行われ、Aiがアートにどう活用できるのかが議論されていると言います。
すでにAiが制作した作品がオークションに出され、落札されているということで、アートの領域でのAiの進化も目覚ましいものがあるようですが、活かし方はそれだけでは無いと橋爪さんは考えているようです。
美術館の運営や管理の部分にAiが活用されることで、多忙を極めるキュレーターの負担が軽減されたり、来館者のエクスペリエンス向上にも繋がっていくのではないかと話してくださいました。
今、注目のアーティスト
「注目しているアーティストは何組かいるものの、なかなか1人の名前を挙げるのは難しい」という橋爪さんですが、ちょうど個展を開催しているタイミングというアーティストを紹介していただきました。
その名は、アキイノマタさん。3Dプリンタを活用して、ヤドカリや亀など生物と共に作品をつくっているというアーティスト。透明な宿を3Dプリンタで作り、そこにヤドカリが住むというような作品をつくっていらっしゃいます。
見た瞬間のインパクトがあり、他にあまりいない作風のアーティストなので、面白いのではないかと橋爪さん。来年1月13日まで十和田市現代美術館で『AKI INOMATA: Significant Otherness 生きものと私が出会うとき』という個展が開催されているので、気になる方は、旅行がてら訪れてみてください。
http://towadaartcenter.com/exhibitions/aki-inomata/
アートへの入り方
アート自体や作品に興味を持ったらとにかく観に行って体験して欲しいと橋爪さん。SNSやWebメディアなどで、情報をキャッチアップするだけではなくて、カラダを動かすことで得られる気づきや感動があると言います。
実際の作品のサイズだから伝わる空気感や、細かいディテールなど、画像だけでは伝わり切らない部分があるので、目で見てカラダで感じてもらいたいということでした。
文化百貨店で扱ってみたいもの
“文化を伝える架空の百貨店でバイヤーをするとしたら?”という番組恒例の質問への橋爪さんの回答は「透明なボックスの中で記者が記事を書くブース」。普段、記事を書いているところを見られる機会が少ないと思うので、仕事風景を公開したら面白いのではと話してくださいました。
ちなみに、橋爪さんは取材先の近辺のスターバックスで記事を書くことも多いのだとか。カフェで資料を置きながらPCに向き合っている人がいたら、編集者やライターかもしれません。
といった所で今週の文化百貨店は閉店となります。次回は海外からのお客様、メキシコ出身でニューヨーク在住のアーティスト、クラウディア・ペニャ・サリナスさんをお迎えして、こちらもアート談義をお送りします。
今週の選曲
橋爪さんのリクエスト
You Must Believe In Spring / Bill Evans Trio
山崎晴太郎セレクト
Memory Itself / Goldmund