2019.12.01
松田 理奈 vol.2
現在の愛器ストラディバリウスとの接し方
バイオリンに詳しくない人でも1度は名前を聞いたことがあるはずのストラディバリウス。松田さんは、この楽器を使って3年目になるそうです。
この楽器、1717年製ということで、御年302歳!戦禍を潜り抜け、さらに携わった方々の愛情によって、良いコンディションを保っているということで、奇跡的に残った楽器と感じていると言います。
実は、松田さん。この楽器とのコミュニケーションが一筋縄では、いかなかったようです。良さを探りながら演奏し、少し距離感がわかってきた2年目に、別の楽器の音色のイメージを持ったまま弾いてしまった所、グっと音が閉じて鳴らなくなったのだとか。
そこから、この楽器の良さを改めてゼロから向き合い直し、3年目にしてやっと、どう演奏して表現として発したら、このストラディバリウスが喜ぶかがわかってきたと言います。
余談ですが、バイオリンによって鳴りの良い音が違っているので、作曲者がどんなバイオリンを使っている人と近しい関係だったかで、使われる音の数が違ったりするのだとか。音楽を聴くときに、その辺りにもイメージを広げると、もっと楽しくなると話してくださいました。
ストラディバリウスを使う上での暗黙の了解
松田さんが愛用している302歳のストラディバリウス。値段を付けるとすると、5億円以上!実は、松田さんの所有ではなく、とある財団から貸与されているものなのだそうです。オーナーさん曰く「歴史を所有させてもらっている」というほど、歴史的価値の高い楽器のため、貸与してもらう上で、様々な楽器への気遣いが必要になっているようです。
例えば、新幹線は楽器のために必ずグリーン車を利用。トイレに行く際などには、必ず一緒に行動するというルールがあるのだとか。さらに、ケースに関しても軽いカーボンなどのケースでは、雨が降って来たりした際に、湿度を吸収できず楽器に影響が出てしまうため、湿度を調整してくれる木のケースを使用するのが、マナーなのだと言います。
ちなみに、ストラディバリウスほどではありませんが、この楽器を鳴らすための弓や、守るためもケースも相当な金額のようです……。
音の振動を伝えていきたい
先ほどのストラディバリウスなど、長い時代を経てきたいくつかの楽器を演奏してきた松田さんは、「楽器の良さは、媒体を通すと変わってしまう」と感じているのだとか。特に、レコーディングという概念の無かった時代に完成しているバイオリンなどの楽器では、音を鳴らすことで伝わる、空気の振動が最も大切だと考えているようです。
そのため、音楽の魅力を伝えるための、学校訪問のような企画の際にも、広い体育館ではなく、コンパクトな音楽室で演奏することをしていきたいと言います。これは、ご自身が転校などで悩んでいた小学校4年生の時に、バイオリンを演奏して、鎖骨や顎に響く振動に癒され、魅了された経験から、子供たちにもなるべく近い音の振動を感じてもらいたいと思っているそうです。
文化百貨店でバイヤーをするとしたら、この“生音の振動”を伝えていきたいとも話してくださいました。
松田さんは、12月17日の東京の紀尾井ホールで、世界的ピアニストの清水和音さんとのリサイタルを予定されています。ストラディバリウスから放たれる生音の振動に興味のある方は、こちらのURLからチェックをしてみてください。
http://linamatsuda.com/?p=1629
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。次回は、経済産業省から菊地拓哉さんをお迎えして経産省が取り組むデザインの話を伺います。
今週の選曲
松田理奈さんのリクエスト
Fratres / Arvo Pärt