2019.12.08
菊地 拓哉vol.1
経済産業省デザイン政策室
菊地さんが配属されている経済産業省のデザイン政策室は、デザインの振興やデザイン業界の活性化をミッションとする部署。デザインを通じて、経済の活性化や豊かな社会を実現していくために、国が出来ることを模索しているといいます。
日本におけるデザイン政策の起点は、戦後間もない1957年に遡ります。当時、日本製品が欧米製品の模倣品と批判され国際問題となっていたことを踏まえ、日本オリジナルのプロダクトを推進していくために、グッドデザイン賞の前身となる“グッドデザイン商品選定制度”を創設。その翌年の1958年に、当時の通商産業省内に、デザイン課が編成され、国としてデザインの振興が本格的にスタートしたようです。
デザイン領域の広がり
番組MCの山﨑がデザインを生業にして15年強。その中で、デザイナーの役割や動きが変わってきていると感じている様子ですが、菊地さんによると「デザインの対象領域の広がりが大きいのではないか」との考察が。
グラフィックやプロダクトのデザインから始まり、次いでコンピューターやインターネットの浸透によって、インタラクションデザインが加わり、最近ではビジネスモデルやコミュニティのような目に見えない複雑なエコシステムにまで、デザインが求められてきているようです。
デザイン経営という考え方
近年、様々な製品やサービスがネットワークに接続され、企業と顧客との関係性が変化していく中で、これまで以上にデザインの重要性が高まっています。こうした背景のもと、経済産業省と特許庁が昨年5月に発表したのが『「デザイン経営」宣言』というレポート。この「デザイン経営」とは、経営層の中にデザインの責任者を配置したり、ビジネスの上流からデザイナーを参画させることにより、デザインを経営資源として有効に活用していく手法なのだとか。「デザイン経営」を推進することにより、企業のブランド力とイノベーション力が向上し、企業の競争力の向上に寄与するとして、その必要性が語られているそうです。
気になる方は、こちらのページからレポートをご覧ください。
https://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180523002/20180523002-1.pdf
デザイン思考の捉え方
昨今、デザイナーに特有の問題発見・問題解決の考え方である「デザイン思考」をビジネスに取り入れることの重要性が謳われるようになりました。実際に、新しい事業を起こしている企業では、このデザイン思考を共通言語とし、既存の枠にとらわれない革新的な製品やサービスを生み出していることも少なくないようですが、一方で、デザイン思考を取り入れることはなかなか難しいもの。
菊地さんは、デザイン思考は、座学で学ぶものではなく、実際のプロジェクトに取り入れながら体得していく必要があり、さらに、武道などでいう「守破離」のような段階があると捉えているようです。
デザイン思考は万能ではないものの、これを身につけた人材が増えていくことで、人間を起点にしたイノベーションが生まれやすくなるのではないかと話してくださいました。
経済産業省では、隔年で国や地域のデザイン政策の取り組みを紹介する『デザイン政策ハンドブック』を公表しています。デザイン政策の全体像が気になるという方は、ぜひご覧ください。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/human-design/file/2018handbook/zentai.pdf
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。次回は、仏師の神鳥明創さんをお迎えします。
今週の選曲
菊地さんのリクエスト
アンパンマンのマーチ / ドリーミング
山﨑晴太郎セレクト
Tears / Nautilus