2020.01.12
タナダユキ vol.1
映画監督を目指したきっかけ
中学、高校の時には演劇に興味があったというタナダさん。上京した後も、舞台への憧れがあったようですが、“自然なやり取り”を表現する際に、どうしても声を張り上げなければならない舞台と違い、映像であればそんなに大声で演技する必要がないなど、自身の表現したいことを考え出した時に映像の方が向いていると感じたのだそうです。
映画監督を目指すにあたって、タナダさんは「まずは、作ること」が大事だと考え、経済的にもスケジュール的にも無理のない範囲で通える学校を探して入学。そこで最低限のノウハウを学んだのちに、初監督作品『モル』を制作。PFFアワードでグランプリとブリリアント賞を受賞し、映像制作の世界へと踏み込んでいきます。
“監督”になっていく道
タナダさんは、PFFアワードでグランプリを獲得し、劇場公開もされたものの、すんなり監督としての仕事が回ってきたわけでは無いと語ります。アワードをきっかけに知り合った方を通じて、様々な人に会いながら「撮らせてください」という営業をしていく中で、メイキングや音楽ドキュメンタリーといった、自からの企画ではやらなかったであろう作品を手掛けるようになり、幅が広がったとのこと。
現在では、映画だけでなくテレビドラマやCMなども手掛ける人気の映像作家という印象のタナダさんですが、大切にしているのは「普通に生活をする」ということだと言います。
予算の潤沢な大作にしろ、低予算作品にしろ、「スーパーの底値を知っていること」が大切だと思うとタナダさん。それを知った上で、どんな話をやるのかが重要だと感じているようで、そのために普通の生活を大切にすることを心がけていらっしゃるようです。
作品のつくり方
昨今の映画では、オリジナル作品と原作ものの大きく2つに分かれます。オリジナルの場合には、プロットやあらすじを信頼できるプロデューサーや映画会社に見てもらうところからスタートするそうですが、テーマは「普通に生きていく中で落ちてくる」とタナダさんは言います。
これはアイデアが降ってくるという事ではなく、日常の中での“湧き出てくるような怒り”が原点になるのが多いようです。そのため、どんなに嫌な目に遭ってもネタに出来るという所で、映画をやっていて良かったと感じることがあるのだとか。
また、多くの人が関わる映画なので、いい意味でも悪い意味でも、仕上がりが「何か違う」と思うことも。ただ、ネガティブな要素が重なっていたとしても、色んな工程を経ていく中で最終的にポジティブに変換していける事も多いので、タナダさん自身、編集や仕上げの作業が好きなのだそうです。
現在の日本の映画業界
約20年に渡って映画業界に関わっているタナダさん。自身がデビューされた当時と比べると「中規模の予算の映画が無くなってきた」と感じているようです。いわゆる単館系と呼ばれる、新人や中堅どころが魅力を発揮しやすい規模の作品が無くなり、大規模で本格的な作品か、低予算作品の2極化が進んでいるような印象をお持ちのようです。
作り手からすると大作か低予算の両極端になっている映画業界ですが、「観る人にとっては関係が無い」ので、そこで同じ勝負をしなければならないのは簡単ではないと感じているようでした。
ただし、自身も観る側の人間でもあるので、観る人の目線を忘れずに作っていきたいと話してくださいました。
最新作『ロマンスドール』
タナダユキさんの最新映画、1月24日に全国公開になるのが『ロマンスドール』。ご自身が書かれた同名小説を原作にした待望の新作です。
あらすじ
一目惚れをして結婚した園子(蒼井優)と幸せな日常を送りながら、
ラブドール職人であることを隠し続けている哲雄(高橋一生)。
仕事にのめり込むうちに家庭を顧みなくなった哲雄は、
恋焦がれて夫婦になったはずの園子と次第にセックスレスになっていく。
いよいよ夫婦の危機が訪れそうになった時、園子は胸の中に抱えていた秘密を打ち明ける……。
ラブドール職人の主人公・高橋一生さん演じる哲雄と、その妻・蒼井優さん演じる園子の夫婦が、お互いに噛み合わない努力の先に何を見つけるのか・・・変わりゆく男女の感情をリアルに映し出す大人のラブストーリー。タナダさん自身「よくできた」と感じる満足な仕上がりになっていると語ってくださいました。
本作については、来週の放送で詳しく伺います。
劇場情報などは、こちらのサイトからご覧ください。
https://romancedoll.jp/
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。来週は、『ロマンスドール』の話をたっぷりと伺っていきますのでお楽しみに!
今週の選曲
タナダユキさんのリクエスト
おかんむり / 在日ファンク
山﨑晴太郎セレクト
Shore / Fluctuate