2020.01.19
タナダユキ vol.2
小説と脚本の違い
映画『ロマンスドール』は、12年前に発行されたタナダさん自身が書かれた小説が原作となった作品。ダ・ヴィンチの編集長から「小説を書いてみないか?」と誘われ、低予算映画用に書いたもののボツになったプロットを見せたところ、編集長が気に入り連載が決まったと言います。
小説、脚本どちらの執筆も好きだというタナダさんですが、脚本の場合は映像化するために実現可能な事を書かなければいけない一方、小説は何でもできる部分が魅力の1つだと言います。
また、多くのスタッフが製作に関わる映画の場合は、悩んだ時にたくさんの人に意見を聞けるというメリットがあるようですが、小説の場合は基本的に担当編集者と自分だけが作品に関わる少人数制。そのため、小説の場合は編集者との関係性の構築が重要になってくるようです。
テーマやセリフの決め方
自身のオリジナル作の場合、日々の生活の中で少しずつ蓄積されてきた疑問などを形にしていくような感じで、テーマが決まって行くというタナダさん。“何かを描こう”と、特に意識する所から始めることは無い様子です。
その一方で、セリフにはこだわりが強いようです。「こういう事を言わせたい」や「こう言わせたいけど、言わずに感じさせる」という部分を常に意識して、執筆にあたっていると言います。
今作『ロマンスドール』の場合、1番最後のセリフが書き始めの方で浮かんだようで、その言葉を言えるようになる人生を逆算してストーリーを組んでいったそうです。
映画『ロマンスドール』
1月24日に公開となるタナダユキ監督の最新作『ロマンスドール』。高橋一生さんが演じる主人公の哲雄はラブドール職人という珍しいシゴトをしている人物。これは、ある時、タナダさんが見た映像で、シリコンのラブドールのクオリティの高さに衝撃を受けたことがきっかけになっているそうです。
“人の形”と書く人形。それは、人の想いが入っているモノだと感じ、作品のモチーフになり得ると考え、原作の執筆に至ったと言います。
絶対的に他人である2人が家族となり、良い時や悪い時もあるというのを夫婦という関係を通じて描いていきたかったというタナダさん。話のリアリティを維持したまま、「キレイに撮りたい」という想いが強かったようです。特にラブシーンについては、生々しくではなく、命が散ることの美しさ・儚さ・力強さをキレイに撮るという意識が大きかったそうです。
「遺された人間は、どう生きるのか?」
今作では、これを1番描きたかったというタナダユキ監督の最新作『ロマンスドール』。作品や上映スケジュールなどは、下記からご覧ください。
https://romancedoll.jp/
文化百貨店で扱いたいモノ
番組の最後でお聞きしている、“文化を扱う百貨店でバイヤーをするなら?”という質問に悩みながらも、タナダさんが出したのは「埋もれている昔の映画や本がすぐに観られるお店」という答え。
特集上映などの企画がなければ、なかなかたどり着けないような作品や、今よりも前衛的な作品など、若い世代だけではなく、タナダさん自身も知らないような作品を気軽に観られる場所があれば良いと話してくださいました。
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。次回、1月26日の放送は、久しぶりに山崎晴太郎1人で、音楽たっぷりでお送りします。