2020.02.23
松本智恵子 vol.2
スタイリストの仕事
30歳の時に「全部辞める!」と、次の仕事のアテもなく一大決心をしたという松本さん。その直前に大きな出会いがあったと言います。それは、ヘアメイクの野村真一さん紹介されたという、まだ歌手活動をする前の今井美樹さん。
20歳の今井さんとお仕事をされた事がきっかけで、その後20年に渡り、彼女の仕事を担当されていきます。
「1人の女性の20歳から40歳までを連れ添ってきたのは、凄いことだなぁ」と松本さん。今井美樹さんとの出会いを経ながら、1999年の横尾忠則さんがアートディレクションした資生堂のメッセージ広告などを担当。今なお語り継がれるような広告が多く誕生していた時代の先端でスタイリストとして活動されます。
当時の仕事を振り返ると、「みんなが真摯に自分のスタイルを貫いて生きようとしていた」と言います。そんな強い個性がぶつかり合って生まれたクリエイティブだからこそ、現在にも残っているようす。
映画のスタイリング
雑誌や広告を中心にスタイリングをしていた松本さんが次に歩みを進めたのが、映画の世界。そのきっかけは、園子温監督との出会い。当時、園監督が所属していた事務所の社長が「すごい才能があるの。智恵子さんと合うと思う」と興奮して松本さんの所にやって来た事から、映画のお仕事を手掛けるようになります。
出会った頃は、園監督の初期の時代。園監督がスケッチブックに描いてきた絵をベースに打ち合わせをするなど、ある意味“部活”のような感じだったと言いますが、映画の仕事を初めてする松本さんにとっては、そのノリが魅力であり、そのお蔭でやり遂げられたと感じているそうです。
その後も園監督の『TOKYO TRIBE』や三池崇史監督の『ゼブラーマン』などに参加。つい先日も、園監督のハリウッドデビュー作で、ニコラス・ケイジ主演の映画でも園組の一員として作品を支えていらっしゃいます。
スタイリストとして意識していること
編集部時代から、多くの監督・クリエイターと一緒にお仕事をされてきた松本さん曰く、スタイリストの仕事を「空気をつくる仕事」。同じ“赤”という言葉でも、人によって色合いが違うので、それを嗅ぎ取りながら、存在しなかった世界を生み出していくのがスタイリストの仕事だと言います。
求めているモノ以上のことを用意してサプライズを与える。監督やカメラマンが、引き込まれていくような世界をつくっていくのが、松本さんが考えるスタイリストの役割だということでした。
文化百貨店で扱いたいモノ
番組の最後でお聞きしている、“文化を扱う百貨店でバイヤーをするなら?”という質問への松本さんの回答は「青い大空にポンと浮かんでいて、みんなに愛されている雲」。ファッションを中心に、様々な人と出会い、色々なお仕事をされてきた松本さんらしいお答えでした。
といった所で今回の文化百貨店は閉店となります。次回はWOTA株式会社CEOの北川力さんをお迎えしてお送りします。
今週の選曲
松本智恵子さんのリクエスト
(You Make Me Feel Like) A Natural Woman / Aretha Franklin
Gypsy / The World