2020.03.22
上野留美 vol.1
編集者になるまで
お父さまの影響で、幼少期からビートルズやサイモンとガーファンクルなどの洋楽を中心に聞いていたという上野さん。子供の頃からタンスの前で「これが着たい!」と主張するファッション好きだったそうです。そういった環境もあったのか、小学校高学年頃から雑誌もかなり見るようなっていて、就職を考える大学生の時に自然と自分が発信する側になりたいと思い編集者を志したと言います。
いざ就職し、『フィガロジャポン』を志望したものの当時は創刊して間もなかったため新人の枠がなく、製作に関する部署で紙の発注や印刷会社とのやり取りをする担当となります。一見、遠回りをしたようにも思えますが「ここを経験しているから、何がやれて何が出来ないかがわかる」と上野さん。
雑誌社でのキャリアのスタートが、今の編集長というポジションになっても役立っているようです。
女性誌と男性誌の違い
製作というセクションを経て、編集者となった上野さんは『フィガロジャポン』と『Pen』、2つの編集部に在籍されてきました。女性誌と男性誌、同じ雑誌でありながら構成などで意識する部分は全く違うようです。
男性誌の中でも“特集主義”を掲げている『Pen』の場合は、ほぼ特集と連載だけという作りで、1つの事柄を掘り下げていくスタイル。いわば1つの味を楽しむ“丼物”のような構成です。
一方、『フィガロジャポン』を始めとする女性誌の場合は、男性誌に比べて特集記事の分量は少なく、色々な情報を掲載する傾向が強く“幕の内弁当”のような構成ということが多いと言います。
こういった2つの編集部の文化を経験して、『フィガロジャポン』の編集長に就任された上野さんは、独自の考え方で雑誌とWebを運営されているようです。
30周年を迎えたフィガロジャポン
1826年にフランスで創刊された新聞社、ル・フィガロが1980年に『マダムフィガロ』という土曜日に新聞と同梱される週刊誌が起源となっている『フィガロジャポン』。本国の10年後に、日本で創刊されます。
本国版は“マダム”という言葉がフィーチャーされているように、日本版よりも富裕層向けの誌面になっていると言います。一方で、日本版はパリやパリジェンヌのエスプリを届けるという意識で、「生活や人生において大事なことへのヒントを伝える」ような想いで創刊されたのではないかと上野さん。
編集長となってからも、その当時の想いや30年という歴史の中で培ってきた『フィガロジャポン』のイメージは大事にしながら、フィガロが伝えてきた“ロマンティックさ”という部分を忘れないようにしていると言います。
ファッションや旅、そしてロマンティックさを大切にしながら紡いできた『フィガロジャポン』。3月19日号は30周年記念号となっています。毎年3月は創刊月ということで、パリを特集しているそうですが、今回はパリの街のガイドだけではなく、そこに住むパリジェンヌの素敵さも含めて伝えるという趣旨になっているようです。
ファッションはもちろん、食をはじめとするライフスタイルに、パリジェンヌの暮らしぶりをといったフィガロが培ってきた部分へのリスペクトだけではなく、特集全体にデロシュ寛太さんが手がけたイラストを採用するという新しい試みにもチャレンジしている『フィガロジャポン』30周年記念号。3月19日に発売になっていますので、ぜひ手に取ってご覧になってください。
「フィガロってロマンティックで夢があるよね」と言われるように作っていきたいという上野さん。パリの文化を伝えると共に、異文化を知るからこそ日本の文化など素敵な部分に気づいてもらいたいと話してくださいました。
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。来週も『フィガロジャポン』編集長の上野留美さんをお迎えしてお送りします。
今週の選曲
上野留美さんのリクエスト
Never Gonna Fall in Love Again / Eric Carmen
山﨑晴太郎セレクト
Childhood / Land Of The Young / Johannsson, Glotman