2020.05.24
菅付雅信 vol.1
wired.jpでの連載が始まるまで
菅付さんの新作『動物と機械から離れて』は、デジタル系のジャーナリズムであるWIREDの日本版のWebサイトwired.jpで2018年9月末から1年3カ月に渡って連載されたものを大幅に加筆修正してまとめたもの。
連載や書籍化が決まっていたというわけではなく、連載が始まる2年ほど前から資料を集め、AIに関する科学者や研究者やベンチャー企業、さらに数学者や脳科学者などをリストアップしていたと言います。
そんな作業をしている中で、WIREDの編集長が代わり菅付さんが以前から知っている松島さんになったことで話を持っていって連載が決まったのだそうです。
連載と書籍の違い
wired.jpでの連載をベースに出来た菅付さんの新著『動物と機械から離れて』。連載があることで、取材がスムーズに運ぶという事と、一気に書き上げなくて良いというメリットがあったそうですが、連載と書籍ではボリュームだけではなく構成も全然違うそうです。
連載の時には、取材相手のタイミングの問題もあり、先方優先で取材や掲載をしていたようで、書籍化の際には本としての流れを意識して構成をやり直したと言います。なので、全体として連載が“点で摘まんでいく”、書籍が“1つの旅”というような構成になっているようです。
また、執筆を通じて菅付さんが意識をしていたというのが、背景をなるべく描くこと。取材相手の置かれている環境や街、組織のことを丁寧に書くようにしたのだとか。世界のAIが、どのような環境で開発されているのかが垣間見られるのが、『動物と機械から離れて』と言えそうです。
AIによる未来は?
世界中を周り、51人の関係者にAIについてのインタビューを行った菅付さん。その中で、恐怖を感じているのが、現時点でAIを主に使っているのが国家と大企業であるという点。これをいかにして“自分たち(個人)側”に持ってくるのかというのが大事ではないかと考えている様子です。
また、「AIが人間のような賢さを持つことは不可能」だとも言います。新しいことを考えて、新しいモノを作っていける人間に対して、そういった賢さはAIにはたぶん持てないと菅付さん。抽象的な事を読み取ったり表現できるのは人間だけで、AIはハッキリしたことしか認識できないと言います。一方で、AIは記憶や認識という能力が非常に高いので、顔認証や音声認証という分野がどんどん進んでいくのではないかと話してくださいました。
AIについて現在と未来、そして変化していく社会のヒントが見えてくるかもしれない菅付雅信さんの『動物と機械から離れて』。働き方などが大きく変わって行きそうなタイミングだからこそ、読んでみたい1冊です。気になった方は、ぜひこの機会に手に取ってみてください。
https://www.shinchosha.co.jp/book/353071/
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。来週も菅付さんをお迎えして、色んな質問に答えていただきます。
今週の選曲
菅付雅信さんのリクエスト
THOUSAND KNIVES / 坂本龍一
山崎晴太郎セレクト
Lion Theme / Dustin O’Halloran, Hauschka