2020.05.31
菅付雅信 vol.2
最近読んでいる本
編集者というシゴト柄、多くの本と接する機会が多い菅付さんに、最近読んでいる本について伺いました。本に関わるお仕事ということもあって、常に複数の本を並行して読んでいるという菅付さん。その中から、最近面白いと思った一冊というのがチェコスロバキアの経済学者、トーマス・セドラチェクの『善と悪の経済学』。
旧約聖書やギリシャ神話を紐解きながら、人類が経済をどのように捉えて発展したかを考察した一冊だと言います。「語り口が見事で、高校生・大学生なら読めるような内容。でも、深いところまで書かれていて、よく出来てる」と菅付さん。ユヴァル・ノア・ハラリ辺りが好きな方には、ぴったりだということです。
そして、もう1冊が、テレワークが生んだ出会いから書籍。菅付さんの奥様が、早い段階からテレワークで自宅に籠りっきりということで、ご夫婦で夜に散歩をされるようになったのだそうです。その散歩の最中に、知人の編集者から紹介されたのが、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の渡邊淳司さん。
出会ったその日に、ご本人から頂いたのが『情報を生み出す触覚の知性』という本。渡邉さんは、触覚という“情報”を他者に届けるという研究をされている方で、この本では触覚という情報を皮切りに、情報や人の認識について書かれているということです。
菅付さんのシゴトの進め方
菅付さんのシゴトぶりの1つの特徴として挙げられるのが、コラボレーションの多彩さ。ご自身は、あくまでも編集者なので無尽蔵にアイデアが出て、それを1人で完結できるタイプでは無いと考えているそうです。そのため、人を巻き込んでいるそうですが、その時のポイントが「この案件を振ったら、喜んでくれるであろう人」。こちらだけの視点で、マッチングするのではなく、相手が望んでいるような案件を依頼するのが、うまく巻き込んでいくコツのようです。
そして、読んでいる本に、多くの付箋を貼り付けている菅付さん。このままの状態では、見直したり気になる所を探すのに、案外時間がかかってしまいますが、読み終わった後にきちんとデータ管理をされていらっしゃるようです。
読み終わった本の付箋を付けた部分をスキャンして、さらにハッシュタグを付けて管理していると言います。本のタイトル、著者名のみならず、キーワードや、どんなネタで使ったのか、または他にどんなネタで使えそうかといったハッシュタグを付けておくことで、後から見返したりするのが、楽になったのだとか。
最初は手間で時間がかかりますが、読んだ本の内容を他で使う機会が多い方にはオススメということです。
これからのオフィスや都市のあり方
新型コロナウイルス禍でリモートワークが注目され、オフィスの概念が根底から覆されつつある今ですが、オフィスに人が戻る所と戻らない所が出てくるのではないかと菅付さんは考えているようです。
戻る所の1つとして挙がったのが、クリエイティブな仕事。“Something in the air=モヤモヤっとしたアイデア”を、一緒に吸って吐き出して共有するというのが、クリエイティブや頭脳労働には必要なので、こういった職業の人たちは、何らかの形でオフィス空間を重宝するのではないかと言います。逆に、そのsomething in the airを共有することが出来ない人は、集まる必要がなくなってくるのではないかと話してくださいました。
そして、今は出歩く人が少なくなっていますが、都市に人が集まってくるとも菅付さんは言います。14世紀にペストが流行していた時にでも、貴族や芸術家がフィレンツェに集まっていたように、クリエイティブは集まらないと作れないので、その本質は現代でも変わらないのではないかとか分析されます。
そして、都市は広い意味でのコワーキングスペースなので、もう一度多種多様なはじめましての人とガッチリ仕事をする、もしくは何かを作るという事を考えていった方が良いのではないかと話してくださいました。
文化百貨店で扱いたいモノ
文化を扱う百貨店でバイヤーを務めるとしたら、菅付さんは、トートバッグのコーナーをやってみたいのだとか。荷物を入れられるけど、重すぎてもダメで、ファッション性の低いものもダメというトートバッグは、すごく都市型の道具だと感じているそうです。
そして、そのバッグを見ていると、持ち主の個性が見えてくる辺りも面白いので、そういったバッグに特化したエリアを作ってみたいと話してくださいました。
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。次回は、NOSIGNER代表の太刀川英輔さんをお迎えしてお送りします。
今週の選曲
菅付雅信さんのリクエスト
So What / Miles Davis
山崎晴太郎セレクト
Spirits / Brambles