2020.07.12
西本美沙 vol.2
フェムテックを取り巻く国内の環境
西本さんがランドリーボックスを立ち上げてから1年強。漫画の『生理ちゃん』や、生理や生理用品について隠さずに気兼ねなく話せる環境を目指す「#NoBagForMe」というキャンペーン、雑誌『SPUR』による期間限定でのナプキンの配布など、生理に関する発信が増えてきているようです。
そんな中、よりフェムテックを広げていくにあたって、西本さん自身は3つの課題があると考えていると言います。
1つ目は、意思決定の現場において男性が圧倒的に多いという問題。身体的な差異があるため、なかなか問題を理解してもらえない環境や状態になることも少なくないようです。
2つ目は薬事の問題。医療と関係している部分が大きいので、薬事関連の法律をクリアしないと世に出せないモノもあるようです。
そして、3つ目が社会的な価値感やタブー視されているという点。海外に比べて、日本では「自分が楽になる選択をすることが、悪のように捉えられている傾向があるように感じている」と西本さん。この辺りの価値観が、生理痛を我慢するという部分や女性のセクシャルウェルネス用品を受け入れにくい風潮に繋がっていると考えているようです。
海外企業の取り組み
フェムテックについて、日本でも少しずつ広がりを見せていますが、海外では福利厚生としてフェムテック関連のメニューを取り入れている企業もあるようです。
Facebookでは、妊活や不妊に関わる費用を負担しているようで、その中には卵子の凍結といったものも含まれているそうです。
仕事と家庭という天秤の中で、従業員がより良い選択をできるように、企業がフェムテックを利用する取り組みも始まっているということです。
ランドリーボックスの次の展開
メディアとコマースという形でランドリーボックスを運営されている西本さん。主軸は、この事業だということですが、セミナー事業も増えてきているそうです。
中でも、最近スタートしたものがN高等学校という通信制の高校とのコラボレーションによるワークショップ。女子高生に対して、生理や体のことについて授業を行っていると言います。
性教育の情報不足の影響か、自分の体のことを相談できる相手がいないというケースも少なくないようで、「生理痛が酷いけど、母親から我慢するように言われた」「産婦人科に怖いイメージがあるから1人で行くのが心配」といったようなものから、ホルモンバランスが整っていないため生理が定期的に来ないことへの不安などに産婦人科医と共に西本さんが答えているそうです。
こういった経験や環境から、「どんな環境やどんな人生を選んだとしても、それを後押しできる社会になって欲しい」と西本さん。ランドリーボックスのコンセプトである“あらゆるワタシに選択肢を”を実現すべく、自社だけではなく色んな立場の人や、色んな切り口で情報を発信して、社会全体の底上げをしていきたいと話してくださいました。
そして、現在の運営されているランドリーボックスのようなテキスト中心のWebメディアでは、言えることが限られていると感じているようで、山崎晴太郎とインスタレーションや作品でコラボをして、個人個人が感覚としてどう捉えていくのかを見てみたいとのことでした。
文化百貨店で扱いたいもの
ゲストの方に最後にお聞きしている“文化を扱う架空の百貨店でバイヤーとして一角を与えられたら?”という質問への西本さんの回答は「自分の価値観を変えてくれた言葉や思い出をセレクトした場所」。
物心がついた時から、服は自分で決めたものを買うという環境だったという西本さん。小学生の頃に、当時流行っていたツナギのようなスカートのワンピースを選んだ所、お母さまに「それ、おもろないやん」と言われたのだとか。その時は、カワイイと思って選んだようですが、“流行っているから好き”なのか、それとも“自分が本当に好きなのか”を考えるきっかけになったのだそうです。
こんな価値観の形成に影響を及ぼした言葉などを集めた一角を作りたいということでした。
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。次回は、マルチクリエイターのPantoviscoさんをお迎えします。
今週の選曲
西本美沙さんのリクエスト
Hyper-ballad / Bjork
山崎晴太郎セレクト
A New Renaissance / Hugar