2020.08.09
上坂真人 vol.1
雑誌に携わるようになったきっかけ
大学時代に、自分たちで広告を集めて学生新聞を作っていたという上坂さん。それが高じて、編集の仕事をしたいと思っていた時期もあったようですが、編集のプロとなっても好きなことが書けないということに気づき、“記者が自由に書ける経済的な基盤を作ろう”という思いで、新聞社の営業に就職されます。
しかし、100人ほどが営業部に入社する中、上坂さん1人だけ出版部門の配属に。「当時は、大嫌いでバカにしていた」という雑誌に携わるようになり、そこから現在に至るまで雑誌の営業畑一筋のキャリアを過ごして来られました。
雑誌の元気がない原因
Webサイトでの情報量のアップやサブスクリプション式のデジタルマガジンの普及など、近年雑誌を含めた出版業界が不況だと言われていますが、上坂さん曰く「理由は超シンプル。面白くないから」なのだとか。
海外では日本に比べて、Webサイト等の影響による雑誌の売り上げの低下が遅かったようですが、その一因として販売経路の違いがあるようです。欧米では、定期購読者が多く、特にアメリカでは85%ほどの読者が定期購読によるものだと言います。
定期購読者が多いと雑誌(出版社)は、“販売部数のベースが出来る”“読者のトラッキングが出来るので営業しやすくなる”といった効果が期待できますが、日本のように書店など店頭販売がメインだと、“販売部数が読めない”かつ“読者層も不透明”なので収入が不安定になり、その結果、「“雑誌のブランドを守りつつ収入を得る”という地道な努力が出来なくなった」というのが、内部にいた上坂さんの見解のようです。
アマナが手掛ける『IMA PROJECT』
「40年間メディアビジネスで生き残っているのは、優秀な編集者を見つけるかどうか」と話す上坂さんが、『GQ』や『エスクァイア』などで編集長をされていた太田睦子さんと一緒に、アマナに企画を持ち込み2012年に立ち上げ、現在進めているのが、『IMA PROJECT』。
写真家出身の社長の下、日本のアート系のフォトグラファーが生活していける経済環境を作ろうと“LIVING WITH PHOTOGRAPHY”をテーマに、さまざまなアプローチで日常の中でアートフォトを親しむ企画を展開されています。
プロジェクトの中で、季刊誌として年4回発行されているのが、写真雑誌である『IMA MAGAZINE』。毎回10名以上の写真家の作品を見られる贅沢な雑誌ですが、上坂さん曰く「企業メディアではなく、一般企業によるメディアビジネス」。ブランディングのために雑誌を発売し、それ以外にも様々な施策を通じて、マーケットを変えていくことを目指していると言います。
季刊誌の発行のほかには、アートフォトの情報などを発信するオンラインメディアや、一流の写真家による展覧会などを開催しているギャラリーの運営、さらにはアート触れる機会を増やしてもらおうとセミナーを実施するなど、幅広く展開されています。
IMA ONLINE:https://imaonline.jp
アートを取り巻く環境の変化
IMAプロジェクトを通じて10年近く、アートフォトを中心にアートと人や企業を結ぶ活動に携わっている上坂さん。アートとビジネスが近づいてきているという体感があるようです。
活動当初は、セミナーの参加者は、いかにも“アート好き”という方ばかりだったようですが、最近ではいわゆる“ビジネスマン”然りした人が集まるようになってきているのだと言います。
「企業の方は、すごい勉強する」と上坂さん。その影響で、セミナーに参加されている方たちの知識などがどんどん成長しているようで、IMAプロジェクトを立ち上げた時の目標である、アートフォト(アート全般にも通じる)が本当に身近になる時代がやってくるという期待感が強いということでした。
といったところで、今週の文化百貨店は閉店となります。次回も上坂さんと一緒に、メディアやアートについてのお話を展開していきます。
今週の選曲
上坂真人さんのリクエスト
reborn(forever) / 小曽根真 THE TRIO
山﨑晴太郎セレクト
Individuation / Eluvium