2020.11.15
栗原聡 vol.2
“AI交差点”の実現に向けて
栗原教授の研究室では、AIに関わる様々な研究をされています。進行中のプロジェクトの1つとしては、個々の信号機にAIを搭載し、AIが独断で交通渋滞を制御する”自律型分散”という方法を利用した交通整備があります。
現在使われている信号機は”集中制御”という方法で管理されていますが、情報を一括に収集してから各信号機に分配するため、どうしてもタイムラグが生まれるのだとか。
栗原教授が研究中の“自律分散型”は、個々の信号機にAIを搭載することで、交通状況を判断してその場で、信号機を制御するというもの。例えば、交通事故や大型トラックの荷下ろしなどによる渋滞をすぐに察知し、短時間で渋滞が解消できるようになると言います。
一方で、個々の信号機が判断するということは、俯瞰してみると非効率的になる場合もあります。そのため、個々の信号機に搭載されたAI同士が連携して、トータルで交通の最適化を図るシステムまでを考慮されているようです。
渋滞を解消できるのならば、素早く導入してもらいたい技術ですが、これから3年程度で実証実験を行い、7年ほどでの実装を目指しているそうです。
栗原教授が考えるAIの未来
AIを用いた信号機以外に、日本の社会課題の1つでもある【高齢化と視覚障害】をテーマにした研究もされています。この研究する中で、視覚障害者の方に“介護をされること”に対してリサーチをすると、「自由に行動をしたい」という意思を持っている方が、多いことが分かったのだとか。
そんな声を聞いて、ヘルパーさんや盲導犬と同じように、AIに指示を出さなくても利用者の意思を予測したうえで、「ちょうど良い塩梅」で助けることができるAIを目指して、研究をされています。根幹には「人工“知能”である以上、気配りのできる相棒みたいな存在であるべき」という栗原教授の考えに根差していて、テーマは違えど、どれも同じ方向性に進むための研究のようです。
人工知能について、「人を見守りつつ、これからどんどん進化していくもの」だと捉えているという栗原教授。長期的には、AIが独り立ちして、人では無いものがAIの知性を高めていくかもしれないとも考えているようです。何億年もかけて、人類が知性や知識を高めていったように、AIが知能を高めていくためのスタートラインと言えるのが、現在の人工知能の研究であり、その過程を担っているのが、栗原教授のような研究者ということのようです。
山崎晴太郎とコラボレーションをするとしたら
“山﨑晴太郎とAIがコラボレーションするとしたら?”。先週の放送で、AIはクリエイティブ面がまだまだ苦手ということでしたが、克服できていないジャンルだからこそ、栗原教授は強い興味がひかれる様子です。
そこで、まず山崎がデザインを考える時に、どういう風に発想するかを知り、クリエイティブな作業をする際の脳のシステムを理解したいと言います。そして、その過程をAIに学ばせて、試してみたいというのが【インタラクティブなデザインの生成】。
先週の放送で紹介した漫画『ぱいどん』の時のように、現状では、既存の作品やテンプレートから学んだり・読み込むしかできないAIですが、全く新しいキャラクターなどをAIが生み出せるようにしてみてたいのだとか。
AIがデザインしたものに人間が修正を指示すると、人の意図をくみ取った修正案を出してくる。そして、既存の枠に収まりきらない奇抜なアイデアを選択できるようになる。
このようなやりとりで、AIとデザイナーとが協力する形を生み出せたら面白いと考えているようです。そのためには、一流のクリエイターと知り合う必要があるので、『TEZUKA2020』への協力や、今回のような番組出演で、多ジャンルの人たちと触れ合うことは、AI研究の刺激になっているようです。
また、“文化百貨店のコンセプト文化を伝える架空の百貨店でバイヤーをするとしたら?”という質問には、「脳を酷使するようなレシピがそろっている一画があればいい」と思うとのこと。どのようにプログラミングを使うかという教科書のようなものではなく、その先にある【知能とは何か?】というような哲学的な部分を問うような、エリアを作ってみたいと言います。
色んな人がモノをどうやって見ているのかがキレイに商品化されていて、「これとこれをしてみると、面白いことができますよ」というレシピのようなものを提案してくれるものがあればいいと思うとのことでした。
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。来週は、久しぶりのソロ回。秋の夜長にピッタリな『お酒』をテーマに選んだ曲をお届けします。
今週の選曲
栗原教授セレクト
野生の風/今井美樹
山崎晴太郎セレクト
New Destination / Teen Daze