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2021.01.17

杉山早陽子 vol.1

1月17日の文化百貨店のゲストは和菓子作家の杉山早陽子さん。今回は、杉山さんが主宰される御菓子丸の工房にお邪魔をして、和菓子作りを始めたきっかけから伺っていきます。

自ら切り拓いた和菓子づくりの道

三重県出身の杉山さんは、大学の進学を機に京都へ。1冊の写真集に魅了され、和菓子の道へ入って行かれます。

【山崎】3~4年ほど前に和菓子にめちゃくちゃハマっていた時期に、杉山さんの作品を見て「なんてこった!」と思って以来、お会いしたいなと思っていました。和菓子をつくる工房って、初めて来たんですが、こんな感じなんですね。

【杉山】ちょっと異質かもしれないですね。自分なりの道具と規模でやっているので、ちょっと実験室みたいなイメージかもしれないです。

【山崎】分かる!ちょっと学校感がありますよね。和菓子を研究するというか、ハマったきっかけは何だったんですか?

【杉山】大学時代に写真部に入っていて、写真で表現するという事が楽しくなって本屋さんの写真集コーナーを読み漁っていたんですね。その中で、『和の菓子』という1ページに1つの和菓子が掲載されている本を見た時に、「和菓子はこういう魅せ方が出来るんだ!」って衝撃を受けて買ったんです。それを眺めているうちに、菓銘という名前が和歌から付けられているというストーリーにのめり込んで行って、大学4年の時に和菓子屋への就職を決めました。

【山崎】それと同じようなインパクトを僕は、杉山さんから受けましたけどね。それまで感じていた和菓子の美しさと違うなって思いました。就職してからは、すぐに和菓子づくりをされたのですか?

【杉山】職人希望で入ったんですけど、最初は販売員だったんです。当時は女性が工房に入ることが一般的ではなくて、社長に直談判しても、なかなか叶わなかったので、「自分でやるか!」という感じで。やりたくて仕方ないという気持ちが強くて、友達と二人で会社が終わってから、夜な夜なプロのための和菓子本を参考に作るというような事で学んでいきました。

【山崎】え!?自己流ということですか?

【杉山】そうですね。ただ、和菓子屋で働いていたので、作る所を垣間見ることが出来たし、失敗し時に職人に聞いてアドバイスをもらえました。それを1つ1つクリアしていくという形で、1つずつ形になって行ったという感じです。

【山崎】意思に向かって、色々な形でトライをしながら登ってきたということですね。

【杉山】しっかり修行をしてから創作することが理想でしたが叶わなかったので、「作りたい」という思いを実現するためには、どうすればいいかとしか考えていませんでした。今だから「修行をしていません」と言えますが、知らないことがあるのに修行をしてないことを言ってしまって良いのかというジレンマを抱えながら当時はやっていましたね。

自身の感じた自然を表現する杉山さんの和菓子

杉山さんは「食べたら無くなる」という当たり前のことに着眼し、鑑賞から食べるという行為を1つの体験として捉え、記憶に残る一瞬を和菓子に込めて創作されています。

【山崎】先ほど、和歌が背景にあるというお話がありましたが、“和菓子”について簡単に教えていただけますか?

【杉山】色んな側面から見ることができると思うんですが、恐らく今は和菓子作家や職人という人たちそれぞれが、自分が思う和菓子を表現しているんですね。自分の和菓子については、形で言えば5cmの立方体に納まる45g~60gぐらいのものという定義をつけています。

【山崎】サイズ感ということですね?

【杉山】そうですね。味わいを表現すると“地味深さ”。バターや生クリームを用いたガツンとした味ではなくて。

【山崎】滲んでくるような感じですかね?

【杉山】そうです。除夜の鐘みたいな(笑) 段々と消えていって心が静まるというイメージです。

【山崎】なるほどね。ユニットでの活動を経て、御菓子丸として活動をされていくわけですけども、何かきっかっけはあったのですか?

【杉山】以前にやっていた日菓というユニットでは、クスっと笑えるようなことをテーマにしていたのですが、一通りのお菓子が習得できたという実感があって。そこで御菓子丸という屋号を自分で立ち上げて、自然の絶対性や秩序を再解釈して和菓子に落とし込むような味の表現をしていきたいと思うようになりました。

【山崎】深堀りしていくことで、オリジナリティが出てきたという感じですかね?

【杉山】自然を和菓子に落とし込むということは、すごく一般的で普通のことなんですけど、和歌の世界ではなくて、自分が感じた自然の絶対性みたいなものを入れていきたいなと思っています。

五感のすべてを使って創作し、五感のすべてを刺激する和菓子

【山崎】創作をする時は、どういうプロセスで生み出されていくんですか?

【杉山】色々なパターンがあります。例えば、野原で見かけたものを「どんな味がするんだろう?」という所から味を探していったり、美術館で見た絵から和菓子っぽい形を抽出して実験したりだとか。

【山崎】なるほど。僕には、全然想像が付かないというか…。すごい世界だなって思います。

【杉山】あとは、味わいから入る時もありますね。この素材を使ったらどうなるのかを考えて、ビジュアルを完成させていくとか。

【山崎】これまでに創作された和菓子とエッセイをまとめた著書『そのときみえるもの』を2018年に出版されています。言葉と写真と全てに透明感があって、僕がすごい好きな世界観なのですが、杉山さんにとって言葉はどういう位置づけになっていますか?

【杉山】和菓子には菓銘というのがあって、和歌から名前が付けられているという事が重要なので、それは残したいなと思っていました。

【山崎】そういう感じなんですね。

【杉山】あとは、言葉の響きと御菓子の触感を重ね合わせるということをしていたり、視覚的な要素で、鉱物に見えるから「鉱物」という名前を付けたりしています。もちろん味のバランスやおいしさとしては名前を付ける前に完成しているのですが、個性を持ち始めるという意味では、名前をつけるということで成立すると思っています。

【山崎】子供に名前をつける感じにもちょっと近いかもしれないですよね。

【杉山】一緒だと思います。

【山崎】そんな感じがしました。和菓子は触覚や味覚といった色んな感覚の集合知というか、複合的に作品に落としていくと思うんですけど、その辺のバランスって意識されていますか?

【杉山】五感をグラフにしたら、御菓子ごとに視覚的要素が強いもの・味覚が強いもの・触覚が強いものというように個々の強さというのはあると思いますが、いい作品を生み出したい時には、五感の全ての項目がバランスよくなっているのが理想かなと。ただ、現実的にそれができているかというと、正直できていないかもしれないですね。

【山崎】なるほど、これからどんどんブラッシュアップされるということかもしれないですよね。話を聞けば聞くほど、杉山さんの御菓子を食べてみたいという人が増えてくると思うんですけど、今はどこで購入ができますか?

【杉山】オンラインショップで販売していますので、ご覧になってみてください。

御菓子丸オンラインショップ: https://okashimaru.stores.jp/

といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。次回も引き続き、和菓子作家の杉山早陽子さんと『御菓子丸』の工房からお送りします。

今週の選曲

杉山早陽子さんリクエスト
The Faintest Sign / 藤原ヒロシ

山崎晴太郎セレクト
Jaamm Rek / MárioLaginha& JulianArgüelles& HelgeAndreasNorbakken

和菓子作家

杉山 早陽子

1983年三重県生まれ。食べたら無くなる当たり前のことに着眼、表現方法としての和菓子に可能性を感じ、京都にて和菓子を学ぶ。鑑賞から食べるまでの行為を一つの体験として捉え、記憶に残る一瞬を和菓子に込めて制作する。10年間「日菓」としての活動を経て「御菓子丸」を主宰しながら和菓子を制作、展示、販売している。

1983年三重県生まれ。食べたら無くなる当たり前のことに着眼、表現方法としての和菓子に可能性を感じ、京都にて和菓子を学ぶ。鑑賞から食べるまでの行為を一つの体験として捉え、記憶に残る一瞬を和菓子に込めて制作する。10年間「日菓」としての活動を経て「御菓子丸」を主宰しながら和菓子を制作、展示、販売している。

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©seitaro design,inc.

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