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2021.01.24

杉山早陽子 vol.2

1月24日の文化百貨店のゲストは、先週に引き続き和菓子作家の杉山早陽子さん。今回も京都市にある杉山さんが主宰する御菓子丸の工房にお邪魔をして、お話を伺いました。

自分に問い続けることで生まれる完成度

【山崎】京都にある世界文庫アカデミーという“本屋×学校”で講師もされているということなのですが、何を伝えていらっしゃるんですか?

【杉山】自分の得意分野を活かして事業の独立を目指している方に、私がどのような経緯で独立したかという話をメインにしています。もちろん和菓子の創作の話をするので、日々どういう風に創作しているのかや、何を大切にしているのかという事もお話しています。

【山崎】和菓子を創作して体験を届ける行為と、講師として伝えるという行為は、少し違うように思えますが、“教える・伝える”という中で何を大事にしていますか?

【杉山】“自分に問うていくということ”の大事さを伝えるようにしていますね。和菓子では、「なぜ枝を刺すのか?」「なぜここに葉っぱを置くのか?「なぜこの色なのか?」」とか、すべてに理由があるんです。色んなものづくりの形があると思うんですけど、自分は何となくではなく説明ができるようにしています。そういう和菓子は出来上がると、すごく強度があって完成度が高いと思っているので。

【山崎】結構、合理的なんですね。でも、届ける体験や驚き・味覚は、相対的には相手に依存するものだったりするじゃないですか。それは、どうやって繋げていくんですか?

【杉山】お客さんがどう受け止めるかは操作できないので、「どうにでもなってもいい」と思っていて。自分がいかに思いを込めたかによって、お客さんが何かしら感じてくれるというのはあると思うんですよね。「おばあちゃんと夜店に行ったことを思い出しました」という記憶だったり、「考えさせられました」という感想だったり、言葉にならないという人もいるんですけど(笑)

【山崎】心の中で、何かが動いているわけですよね。杉山さんの作品に出会ったことで、僕の中でこの文化が拡張していくと思うんですけど、和菓子として何を伝えたら、もっと広がっていくと思われますか?

【杉山】味わいでいうと、洋菓子にはないということ。わざわざ“和”菓子と言っているので、比較対象として洋菓子というのがやっぱり出てくるんですよね。そうするには、じんわりと消えていくような美味しさが和菓子の魅力かなと思っているので、地味深さというのが一番重要な部分ですかね。視覚的な要素でいうと、今の和菓子を見て、どこが綺麗なのかというところを自分なりに解釈して、それを新しい形で伝えるということ。そうしないと、逆にすごい時代遅れになっちゃうんじゃないかという危機感があるので。

【山崎】置いて行かれちゃうような。

【杉山】そうですね。守るだけではないと思っているので。そういう所は意識したいし、京都の和菓子屋さんも少しずつそういう風になって行っていると思います。

御菓子で、びっくり箱のような驚きを与えたい

【山崎】先程、杉山さんが創作された和菓子をいただいたんですけれども、すごい衝撃ですね。いただいた2点を説明いただいてもいいですか?

【杉山】1つは『鉱物の実』というもので、和菓子の種類でいうと琥珀糖。寒天とお砂糖を使った御菓子です。周りがシャリっとしたお砂糖の結晶で、中は寒天ゼリー状というと分かりやすいですかね。

【山崎】ちょっと、ゆずの風味なんですよね。外側が固めで、噛んだ瞬間に口の中でジワ~ンと風味が広がるような。びっくりする感じがありますよね。

【杉山】そうですね。すべての御菓子で、そういうびっくり箱みたいな驚きを与えたいというか。記憶に残して欲しいと思っています。

【山崎】その狙いに、まんまと僕は引っかかったっていう(笑) 色も印象的ですけども。

【杉山】柑橘の皮を使っているので、それの黄色なんです。もともと和菓子って果実とか木の実が最初とされていて、そこからインスピレーションを得た「果実が結晶化して、鉱物になった」というストーリーがこの御菓子にはあるので、何でも入れて美味しくするというのではなくて。今まで、色々な果物で試してはみたんですけど、柑橘系との相性がすごく良くて。

【山崎】だから、収まるところに、収まっていくという感じなんですね。もう1つ試食させていただいた、『ほころび』についても教えてください。

【杉山】こちらは、ゴマ風味で周りに和三盆をまぶした焼き菓子です。

【山崎】見た目は少し豆菓子みたいな感じなんですよ。パッと口に入れると、綿あめじゃないけど、一気にフワっと溶けていくような感覚になりますね。視覚の前情報と口の中の情報が、ズレてびっくりするというね。伝わるかな?(笑) まさに五感のすべてを使って御菓子づくりをされているという感じなんですけども、現在レシピは何点ぐらいあるんですか?

【杉山】『そのときみえるもの』という本に載っているのが25点で、そこから増えて50点近くあると思います。バリエーションがあった方がお客さんには喜んでもらえますし、自分も作っていて楽しいので増やしていきたいという気持ちはありますけど、限界も考えながら。

【山崎】これって、何を目指しているんだろう?というか……。例えば、「和菓子の体験でフルコースが出来たら良い」みたいな話なのか、「世界中が平和になるための一品を」というような話なのか。最終的な目標みたいなのってどんなことを想像していらっしゃいますか?

【杉山】いくつかありますけど、仰ったように和菓子のコースとか。何品かあって、それが1つの体験として味わえるようなことをしてみたいですね。全部甘いと飽きてくると思うので、5点ぐらいのうち最後の2点が甘いというよう体験を提供できたら良いなと思っているので、少しずつ実験をしているところです。

【山崎】元々の味と記憶に、時間軸が入ってくるという感じですね。すごい人気が出そうですね。

【杉山】あと、香りをもう少し追求した和菓子を作ってみたいなと思っています。花の香りを和菓子に閉じ込めて、心地いい感じにしたり。香りは、記憶と一番結びつく感覚と言われていますし、そうするとまたお客さんの記憶を違ったアプローチできるのではないかと思いますね。

和菓子とクリエイティブとのコラボレーション

【山崎】『THE KYOTO』というウェブサイトで、“写真家が撮影した1枚の写真から和菓子に風景を包み込む”という企画をされていますけれども。

【杉山】私の和菓子を前々から面白がってくれていた知人の写真家から「何か一緒に出来ないかな」という風に話をもらったんですね。そこから、私自身も風景を見て「これを御菓子にできる」という考え方をしていたので、そういう取り組みが出来ないかと提案して実現しました。

【山崎】その話だけを聞くと、クリエイターのコラボレーションのすごいスムーズな形ですよね。御菓子が、完全に表現として並んでいるというのは、新鮮な感じがありますよね。

【杉山】そうですね。こういうコラボレーションは、写真家さんのフィルターを一回通って風景を見るので、そういう意味では新鮮に見えたり、「自分はこういう見方はしないな」という事をインスピレーションとして受けるので、逆に自分が普段見ない風景を選びたいと思いますね。

【山崎】ゲストの方、全員に伺っている質問なんですけど、山崎晴太郎とコラボレーションをするとしたら、どんな事ができると思いますか?

【杉山】コンビニで販売できる和菓子を考えるのが結構面白いなと思いました。そこで、広告をお願いしてとか。

【山崎】今、体験が分断されているので、コンビニのような日常で接点が起きて、この感情のひとかけらでも落としていけたら、すごい豊かな社会になる気がしますね。続いて、この番組のコンセプトである“文化を伝える架空の百貨店”があったとして、バイヤーとして一角を与えられたら、どんなモノを扱いたいですか?

【杉山】人間の巣?みたいなのが、欲しいなと思っていて(笑)

【山崎】1人用の?

【杉山】子供の頃に、押し入れに入ったりして本を読んだりしていたんですけど、大人になってもそういうのが必要ではないかと思って。カプセルホテルより、もうちょっと大きめの居心地が良くて、1人用の自然素材で作られた部屋みたいな。色々なパターンが、売り場に置いてあって、そこで食べるお菓子を提案するという。

【山崎】令和時代の茶室みたいな(笑) 最後になりますが、杉山さんの和菓子の購入方法を教えてください。

【杉山】はい、今オンラインショップを運営しています。「御菓子丸」で検索していただくと、そちらで毎週金曜日に15時から受注販売の告知をしておりますので、そちらをご覧いただければと思います。

【山崎】今回のゲストは、和菓子作家の杉山早陽子さんでした。ありがとうございました。

【杉山】ありがとうございました

御菓子丸オンラインショップ

といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。4週に渡ってお送りした京都シリーズは、今回で完結。来週は、日本が誇る世界的な現代美術家、宮島達男さんをお迎えします。

今週の選曲

杉山早陽子さんリクエスト
Awake / Rhye

山崎晴太郎セレクト
Ship In A Bottle / Brian Eno & Jon Hopkins & LeoAbrahams

和菓子作家

杉山 早陽子

1983年三重県生まれ。食べたら無くなる当たり前のことに着眼、表現方法としての和菓子に可能性を感じ、京都にて和菓子を学ぶ。鑑賞から食べるまでの行為を一つの体験として捉え、記憶に残る一瞬を和菓子に込めて制作する。10年間「日菓」としての活動を経て「御菓子丸」を主宰しながら和菓子を制作、展示、販売している。

1983年三重県生まれ。食べたら無くなる当たり前のことに着眼、表現方法としての和菓子に可能性を感じ、京都にて和菓子を学ぶ。鑑賞から食べるまでの行為を一つの体験として捉え、記憶に残る一瞬を和菓子に込めて制作する。10年間「日菓」としての活動を経て「御菓子丸」を主宰しながら和菓子を制作、展示、販売している。

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©seitaro design,inc.

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