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2021.02.14

山崎晴太郎

2月14日の文化百貨店は、2か月ぶりのソロ回。今回は今年になってから話題になったデザイン関連のトピックや、山崎自身の仕事に関する話題をお話していきます。

アメリカ大統領選挙から見るデザインとブランディング

紆余曲折を経て、1月に就任したアメリカのバイデン大統領。新大統領誕生の背景として、デザインチームの活躍が、一部で取り沙汰されています。

【山崎】“Biden-Harris”のロゴが、幅広い層から支持を受けるように意識をしたという話だとか、色んな話がありますよね。ある意味、前政権が“分断”を促進していたとすると、もう一度“結束”というものをテーマにしていこうというような話だったんですよね。

日本にいるとピンと来ない人もいるのかなと思うんですけど、デザインやブランディングといった力で、政治というかコミュニケーションを変えるという思想は、アメリカでは強くありまして“デザインによるイメージづくり”の基本的な考え方があるわけですよ。それによって、得票数とか世論の構築に寄与しているという風に言われているんですね。

共通のイメージの中から独自性を出していく

【山崎】有名なものだと、オバマ大統領の時には“Oマーク”と呼ばれたモノがあって、ヒラリ・クリントンの時にもHと矢印が組み合わさったロゴが使われたりしているんですよね。最近だと、印象深いのはトランプさんの”We Make America Great Again”というメッセージが書いてある赤い帽子ですよ。みなさん覚えています?

【山崎】というように、色んなモノをコミュニケーションの力にして、政治の中で勝ち残っていくというのが軸にあるわけなんですよね。アメリカの大統領選挙なので、基本的には星・青・赤・白といったみんなの中で、統一されたアメリカのイメージが持たれているわけですよ。その中で、独自性を出していくという非常に難しいブランディングが、仕事としては与えられているんですね。こういったテーマで国を変えるデザインというのは、自分がブランディングの仕事をしている中で、やってみたいなと思うんですが、Pentagramのようなトッププレイヤーにしかできないなとも思うわけですよ。

※Pentagram:1972年にロンドンで設立されたデザインスタジオ。マスターカードやアメリカンエクスプレス、ヤフーなどを手掛ける

ブランディングの基本的な考え方

【山崎】“ブランディング”というものが、ピンと来ない人もいるかなと思ったので、少し説明します。例えば、文字。フォントの種類は色々ありますが、これは、声色と同じであると認識をしています。なので、色んなフォントが散りばめられていると、声色が毎回違う人みたいな感じになってしまって、イメージの一貫性が無くなってしまうんですね。ほかには、文字の大きさが声の大きさに比例したり、文字の詰め方が喋る速さに比例するわけですよ。

色についても色彩心理学みたいな話がありまして、濃いネイビーのスーツと赤いネクタイというのが”パワースーツ”と言われたりします。トランプさんよく着ていましたけども、こういった色彩戦略みたいなものもあります。こういった戦略が全部かみ合って、国の未来のデザイン、ブランド、イメージを変えていくというのが、アメリカの選挙から見る、デザイン面の面白さみたいなところですね。

ちなみに、日本の政治家はめちゃめちゃ弱いです。イメージできるところでいうと、東京都知事・小池百合子さん。緑のイメージを持っている方が多いと思うんですけど、これは環境省のイメージがあって、そこにそのまま”調和の色”と言われるグリーンを自分の中で取り込んでいるんですよね。

こういう視点で政治を見ていくと、やはりコミュニケーションやブランディングみたいなところが、アメリカから始まって世界に広がっているというようなことも「そうだろうな」と思うわけですよね。

ダイバーシティへのデザインの向き合い方

2つ目のトピックは、【マンチェスターユナイテッドのユニフォームに苦情が続出】というニュース。プレミアリーグのリバプール対マンチェスターユナイテッド戦で、2チームのユニフォームの区別が付きにくいという苦情が、数百件に上り寄せられたというもの。

【山崎】これは、最近のホットなトピックだと思っていまして。今回、2チームが着用していたのは、アウェイのマンチェスターユナイテッドが黒に近いモスグリーンみたいな色で、ホームのリバプールが赤なんですよね。色が区別しにくいという、色覚の異常には色んな分類があるんですけど、基本的に濃く見えるので、赤とモスグリーンって、ほとんど黒と同じように見えてしまうんですよね。

その中で、いわゆる“色覚異常”は、すごく気が付きにくいんですよ。赤色と言っても、”僕が見ている赤”と”あなたが見ている赤”というのが、本当にディテールで同じように見えているかというのは、誰にも分からないんですよね。日本の場合は、先天性色覚異常は男性が5%くらい、女性は0.2%と言われているので、この辺りのコミュニケーションって、今後の課題だなと思っています。

最近では”Black Lives Matter”や“LGBTQIA”など、多様性・ダイバーシティにどう向き合っていくかみたいな所は世界的に課題なんだなと思っている訳なんですよ。

伝えるべき相手に寄り添うコミュニケーション

【山崎】僕も、ユニバーサルデザインという高齢者向けみたいなデザインをやっていく機会が増えているんですけども、“高齢者”みたいな区分けを置くと、本や新聞を読む人が多いので文章縦書きの方が良いんですよ。逆に若い世代は、Webサイトのほうが当たり前なので横書きを好んだり、長い文章を読めない傾向があったりすんですね。

あとは、写真でも違いがあって、高齢者の方が写真を“自分ごと化”する傾向があって、ユーザー視点の方が響く確率が高くて、若い世代になるとインスタグラムの影響もあるのか真上からグリッドがピチっと合っているような客観視されたものの方が良かったりするんです。

高齢者のことや、色覚のことなど色々なカテゴリーがありますけど、すべてのデザインやコミュニケーションに言えるのは、”伝えるべき相手の日常とか価値観に、どれだけ寄り添ってコミュニケーションができるのか”ということだと思うんですよね。なので、杓子定規に考えていくというよりは、伝えるべき相手の日常に、スムーズにどうやって入り込めるかということがコミュニケーションとしては必要なのではないかなと、今回のマンチェスターユナイテッドのニュースを見ても、高齢者向けのデザインをやっていても思うわけですよ。

EV充電のグランドデザインへの懸念から生まれたプロダクト

最後は、1月に発表になった山崎がデザインしたプロダクト・PLUGO BLOCKの話題。電気自動車の充電スタンドと、そのシステムを展開するPLUGO社の新しいコンセプトモデルです。

【山崎】ラジオを中心に僕の事を見ていただいている方には、デザイナーだという事が忘れられているんじゃないかなって気がしなくは無いんですけど、きっちりデザイナーをやっております(笑) ホテルをつくったり色んな仕事をしているんですけども、今回ご紹介したいのは最近発表したプロトタイプ、PLUGO BLOCKのデザインのお話です。

PLUGO BLOCKは、駐車場にある車止めの中に全てのEVの充電機能を詰め込んだという製品になります。「煌びやかなモノを駐車スペースにつくりましょう!」というのではなく、マイナスのデザインというか「ここに電気自動車の充電器があるの?」というものを目指したようなクリエイティブですね。

視覚的なノイズが増えることへの違和感

【山崎】何でこういうモノをつくったのかと言いますと、今は結構派手なデザインの充電器がありますよね。あれは、コンビニエンスストアとかに1台あるから、まだこの感じなんですよ。だけど、全部の自動車が電気自動車になった時には、全ての車室に派手な充電器が建つわけですよ。そうなると「はてはて?」って思うじゃないですか。

日本はインフラ整備やデザインが特殊だと言われていて、例えば電線や電柱がこれだけ乱立する国ってかなり珍しいわけなんですよね。いわゆる“グランドデザイン=全体構想”というものが成立しないまま、どんどんインフラが整備されていってしまった歴史があるわけです。EVの充電器が設置された時に、「同じことが起きてしまうのではないか?」と思いまして、そういった危機感からつくったのが、今回のPLUGO BLOCKなんです。

EVは、「環境に配慮した車を広げていこう」というものなのに、それ自体が広がる時に“視覚的なノイズ”、要は新しいものが世の中に増えていくというのが、個人的にはおかしいなと思うわけですよ。この部分に、挑戦したい、チャレンジしたいと思ってつくったのが、今回の製品です。コンクリートブロックの車止めの中に全部仕込まれているので、今駐車場にあるものから何一つ要素は増えないんですよ。

ただ、充電機械に関する法規制があったりするので、そういった制約を乗り越えてでも実現していきたいと思っているのが、PLUGO BLOCKです。PLUGO社とは、2022年に販売をしていこうという意思で共同開発をしていますので、応援をしてもらえると嬉しいなと思います。

PLUGO BLOCKについて

今回は、こんな3つの話題をお送りしました。また、ソロ回のタイミングで、デザインやブランディングに関するお話をお送りできればと思っていますので、お楽しみに!

そして、今回の放送後から文化百貨店のクリエイティブがリニューアルしました。セイタロウデザインのデザイナーの1人が制作したものですが、山崎曰く「俺っぽい」仕上がりになっているクリエイティブです。文化百貨店の各メディアで、新しいクリエイティブもご確認ください。

といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。来週は、泡盛コンシェルジュの比嘉康二さんをお迎えして、泡盛の嗜み方などをお伺いします。

今週の選曲

The Eighth Day / 小瀬村晶

Fundamental Values / Nils Frahm


株式会社セイタロウデザイン代表・番組パーソナリティ

山崎 晴太郎

82年生まれ。横浜出身。立教大学卒。PRエージェンシーを経て2008年独立。株式会社セイタロウデザインを設立。企業のデザインブランディングやプロモーション設計を中心に、グラフィック、WEB・空間・プロダクトと多様なチャネルのアートディレクションおよびデザインワークを幅広く手がける。2012年よりラジオパーソナリティーとしての活動を開始。FRANZ AWARD、グッドデザイン賞特別審査員、法務省のロゴデザインコンペ選定委員や国土交通省の有識者会議にも参加。株式会社JMC取締役兼務CDO、一般社団法人琉球びんがた普及伝承コンソーシアム理事。東京2020組織委員会、スポーツプレゼンテーション・クリエイティブアドバイザー。

82年生まれ。横浜出身。立教大学卒。PRエージェンシーを経て2008年独立。株式会社セイタロウデザインを設立。企業のデザインブランディングやプロモーション設計を中心に、グラフィック、WEB・空間・プロダクトと多様なチャネルのアートディレクションおよびデザインワークを幅広く手がける。2012年よりラジオパーソナリティーとしての活動を開始。FRANZ AWARD、グッドデザイン賞特別審査員、法務省のロゴデザインコンペ選定委員や国土交通省の有識者会議にも参加。株式会社JMC取締役兼務CDO、一般社団法人琉球びんがた普及伝承コンソーシアム理事。東京2020組織委員会、スポーツプレゼンテーション・クリエイティブアドバイザー。

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©seitaro design,inc.

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