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2021.02.28

北沢永志 vol.1

2月28日の文化百貨店は、お出かけシリーズ!今回はグラフィックの聖地ともいえる、ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)にお邪魔し、公益財団法人DNP文化振興財団 ggg・ddd企画室 キュレーターの北沢永志さんにお話を伺っていきます。

文化活動の一環として設立されたギンザ・グラフィック・ギャラリー

【山崎】今回は、ギンザ・グラフィック・ギャラリーにお邪魔をしています。色んな展示をやっていたり、刺激をもらえる場所で、学生時代からお世話になりましたね。グラフィックデザイナーにとっては、聖地みたいな所なんですけど、今年で35周年を迎えられるんですか?

【北沢】3月2日で35年を迎えます。

【山崎】35年って凄いですよね。当時は、かなり特殊な取り組みだったのではないかと想像するんですけれど、どうやって始まったんですか?

【北沢】遡るとですね、大日本印刷が開発した“秀英体”という文字をこの地で販売していて、グラフィックデザインとゆかりのある場所だったんですね。「この場所を何か文化的な場所にしよう」ということで、大日本印刷の当時の社長の北島義俊と、初代のggg監修になるグラフィックデザイナーの田中一光さんの発案によって「グラフィックデザインの専門ギャラリーにしよう」というアイディアを出していただいて。印刷とグラフィックは、非常に密接だというのがスタートした大きな理由ですね。

【山崎】北沢さんはいつ頃からギンザ・グラフィック・ギャラリーに携わっていらっしゃるんですか?

【北沢】私は、1990年の11月2日から。

【山崎】はっきり覚えていらっしゃるんですね(笑)

【北沢】めちゃめちゃ緊張したんですよ。というのは、毎月ギャラリーでオープニングパーティーを開くんですけど、亀倉雄策さん・田中一光さん・早川良雄さん・福田繁雄さんといった面々が集まるわけです。そこに社長を始めとする、大日本印刷の重鎮たちが並ぶわけです(笑)

【山崎】それは、覚えているはずですね(笑) デザインをやっている人間からしたら、天上人みたいな方々と交流をされながら、長い間、日本のグラフィックデザイン界を見つめてきたと思うんですけど、印象的だった作品や人っていらっしゃいますか?

【北沢】皆さん印象的なんですよ。グラフィックデザインというのは、半世紀前に突然現れたという印象なんですけど、日本の美術、琳派や浮世絵といった脈々と続いてきた伝統を、半世紀前の先生方が一気に形にしたような感じはしますね。

【山崎】カタカナになったから、余計にぽっと出てきた感じはあるかもしれないですね。

【北沢】具体的に面白かったエピソードを挙げますと、福田繁雄さんは、グラフィックデザイナーであり、イラストレーターであり、コピーライターでもあるんですけれども「一本の線を引くということが、一番楽しいことだ」と言うんですよ。「こんな楽しいことを僕は、人には絶対任せたくない。」と。それでいながら千何百点もポスターを作っちゃっているんですよ。松永真さんは「シンプルこそ難しい、シンプルというのは単純ではない」と仰っていて、デザイン哲学みたいな、デザインの醍醐味を教えられました。まぁ、数えきれないほどあるんですけどね(笑)

【山崎】それだけ、デザイナーに寄り添って行かないと展示の企画とかも出来ないですもんね。

キュレーターの北沢さんが見るデザインと時代の移り変わり

【山崎】時代の中で、グラフィックデザインって変わってきていると思いますか?

【北沢】僕がここに来た1990年後半以降に、輝かしい時代のパワーをなくしたというか。デジタル革命で、一気にグラフィックデザインの力を削いでしまった。そして、30年間の大きな紙媒体がどんどん停滞していくというのを目の当たりにしてきたという感じはありますね。

【山崎】最近だとパソコンを使ってというイメージの方たくさんいると思うんですけれども、文字の話や紙の話だったりとかもあるんですよ。紙とデザインは掛け算というか、紙があって初めてグラフィックデザインって定着していくので、そこを抜きにして、グラフィックデザインという職種は語れないんですよね。紙を触って、斤量だったり紙の種類が分かったりだとか。

【北沢】時代を逆行したという感じですよね。

【山崎】スタイルも色々変わってきていますもんね。

【北沢】スタイルでいうと、80年代までは、”表現の共創”だったのが、表現から問題解決へ、そして問題定義、さらにはコンサルティングに変わってきていますよね。例えば「社長の横にアートディレクターを」と言った電通の佐々木宏さんは、ソフトバンクの孫さんを隣に置いて。佐藤可士和さんは、ユニクロの柳井社長を隣に置いてという時代になってきたんですよね。時代のデザインの捉え方が、やっぱりどんどん紙から離れていく。

【山崎】デザインの意味が、広義になってきていますもんね。キュレーターとして、企画や展示をしていくと思うんですけれども、どうやって企画は決まっていくんですか?

【北沢】”常に時代を見ていなくちゃいけない”ということもあるんですけど、私たちが原案を作って、ggg監修の永井一正先生と相談をして、最終的には理事会で、決定していくという形を取っています。

【山崎】なるほど。今は、色んなタイプのデザイナーがいるじゃないですか。展示をする基準ってあるんですか?

【北沢】もちろんグラフィックデザイン専門のギャラリーという所なんですけど、ボーダーや領域は完全に壊れて来ていると思います。例えば最近では、日本デザインセンターの三澤遥さんがgggで水槽のデザイン展を発表しているとか。グラフィックとはかけ離れているんですけど、やはりグラフィック的な発想でやっていくみたいな。最初、そのきっかけを作ったというのが、佐藤雅彦さん。

【山崎】確かに!

【北沢】佐藤雅彦研究室展というのをやりましたが、それが1つの転機かなと思いますね。ピタゴラスイッチもgggで展示させていただいたんですけれども、その後は、ライゾマティクスやセミトランスペアレントデザイン、PARTYとか。グラフィックの周辺なんですけれどパワーを持った方々を紹介して、グラフィックデザインを盛り上げるという狙いで、キュレーションしてきたつもりなんです。

『SURVIVE – EIKO ISHIOKA』の展覧会開催に至るまで

【山崎】現在、ギンザ・グラフィック・ギャラリーでは『SURVIVE – EIKO ISHIOKA /石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか』が開催されています。石岡瑛子さんについて、説明をお願いしてもいいですか。

【北沢】簡単に説明するのは、なかなか難しんですけど……。デザイナー、アートディレクター、コスチュームデザイナー、もっと概念的に言うとビジュアライザー。石岡さんにつけられた肩書は色々あるんですけど、限定してはだめなんです。石岡瑛子は、“石岡瑛子”という職業。そういう人なんですね。

【山崎】衣装やVIから掘ることもできるし、生き方から掘ることもできるし、非常にパワフルな大先輩という感じはします。まさに女性のクリエイターのパイオニアのイメージなんですけれども、このタイミングで石岡さんの展示をする何か理由はあるんですか?

【北沢】15年くらい前に、私たちが発行している『gggBooks』という世界のグラフィックデザインのシリーズで石岡さんの作品集を作ることになったのが、最初なんですけど。

【山崎】そうなんですか!

【北沢】本の制作は全部ここでやったんです。面白かったのは、一見開きごとに「こうしたい」というのを3案とか4案考えるんですよ。64ページの作品集なんですけど、その3倍くらいデザインしているんですよ(笑) そういうお付き合いができたので、すごく好感を持っていただいて。その時に、僕が「gggで展覧会をやらせてくれ」って言ったんですよ。

【山崎】なるほど。

【北沢】そしたら、「あなたのギャラリーはグラフィックでしょ?私の仕事の幅って、とてつもなく広いのよ」って言われたんですけど、全体像(※)を見せてから好きにやってちょうだいと。

(※)2020年11月~2月に東京都現代美術館で、大規模な回顧展が行われた

【山崎】現在は、後期の展示が行われていますけども、入れ替えて展示をされているんですよね?

【北沢】前期は、資生堂やPARCOとかの時代のメジャーなキャンペーンの展示だったんけれども、後期はだったんですけれども、後期は今まで、どこにも出していなかった肉筆の原画とかですね。グラフィックアートを中心にフランシス・コッポラの映画のポスターとか万博のイメージポスターとか。商業的ではないグラフィックアート、版画も含めて展示するということで開催しております。

【山崎】”グラフィックデザインはサバイブできるか”というタイトルが、非常に刺激的なんですけれども、どういう意図が込められているんですか?

【北沢】毎年、私どもの活動をまとめたアニュアルレポートを作製しているのですが、3.11で大変だった年の序文を瑛子さんにお願いして、インタビューをさせていただきました。その時に、編集者の河尻亨一さんと一緒に質問事項を考えていて出てきたキーワードが”サバイバル”だったんです。3.11で日本が疲弊していてグラフィック界も同じだから、僕はエールを送りたかったということで、瑛子さんが1番ふさわしいなと。

【山崎】そうなんですね

【北沢】その時のインタビューの音声は、今回の展覧会で流しているんですけど、“グラフィックデザインの本質をデザイナー自身が掘り下げる必要がある。「本当にこれでいいの?」というのを常に自問自答しなさい”というのが、瑛子さんの言葉なんですね。

【山崎】本当そうですよね。純粋な疑問なんですけれども、瑛子さんはグラフィックというものをどう位置付けていたのかなと…。晩年のオリンピックの衣装で、認識をしている方も多いと思うんですよ。ただ、ルーツはグラフィックにあったと思うので。

【北沢】やはり、一番の根源にあったと思います。初めて広告を作った頃に並行して、どういう風に抽象をして、人に分かってもらうかという実験を散々しているわけなんですよね。衣装とかもあるんですけど、グラフィックデザインが無ければ、今の瑛子さんは無かったと思いますね。

【山崎】なるほどね、ありがとうございます。『SURVIVE – EIKO ISHIOKA /石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか』は、3月19日まで開催をされているということですので、気になるという方は、ギンザ・グラフィック・ギャラリーまで訪れて見てください。
ギンザ・グラフィック・ギャラリー

といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。来週もギンザ・グラフィック・ギャラリーから、グラフィックを広めるための展示以外の取り組みについて北沢永志さんに伺います。

今週の選曲

北沢永志さんリクエスト
Your Song / Elton John

山崎晴太郎セレクト
Timelapse / Mari Samuelsen

公益財団法人DNP文化振興財団
ggg・ddd企画室 キュレーター

北沢 永志

1958年長野県飯田市生まれ。1980年慶応義塾大学文学部卒業。大日本印刷株式会社(DNP)入社。1991年よりギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)担当。2008年より、グラフィックデザインを中心とする芸術文化の普及、振興を目的とした活動は、公益財団法人DNP文化振興財団に移行。以来、財団のメンバーとして、京都dddギャラリーも担当。キュレーター(学芸員)として、これまでに国内外のグラフィックデザイナー、アーティスト、団体等300回以上の展覧会を企画・開催。

1958年長野県飯田市生まれ。1980年慶応義塾大学文学部卒業。大日本印刷株式会社(DNP)入社。1991年よりギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)担当。2008年より、グラフィックデザインを中心とする芸術文化の普及、振興を目的とした活動は、公益財団法人DNP文化振興財団に移行。以来、財団のメンバーとして、京都dddギャラリーも担当。キュレーター(学芸員)として、これまでに国内外のグラフィックデザイナー、アーティスト、団体等300回以上の展覧会を企画・開催。

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