2021.05.23
山崎 貴之 vol.1
5月23日の文化百貨店のゲストは、雑誌『UOMO』編集長の山崎貴之さん。今回は、UOMOの変遷や雑誌メディアとしての情報発信について詳しく伺いました。
ファッションを追い続けている大人=“40歳男子”に向けたUOMO
【晴太郎】色んな雑誌の編集長に来ていただいていますが、メンズファッション誌は初めてですね。僕が欠かさず読んでいる数少ないファッション誌の1つが『UOMO』なので、すごく楽しみです。よろしくお願いします。
【編集長】どうも、ありがとうございます。そういう方が1人でも増えていただきたいと思っています。
【晴太郎】UOMOでの1つの括りが“40歳男子”だと思うんですけど、僕はターゲットという事ですかね?
【編集長】もちろんターゲットの読者だと思います。編集長に就任してから、 “40歳男子”という言葉をキーワードにしています。UOMO読者って、若い時からファッションが好きで、大人になって初めてファッション誌を読んだ方では無いと思うんですよ。今も、流行を気にしたり、新しいものを探したり、スタイルを決めきれなくて読み続けている。大人なんだけど、大人になり切れない。そんな男性を40歳男子と呼んでいます。
【晴太郎】赤裸々にえぐられている感じがしますね(笑) 決まったスタイルと髪型で、決まったものを着た感じって、カッコイイじゃないですか?でも、なれないんですよね(笑)
【編集長】まだ、見つかっていないんですよね? そういう方に読んでいただきたいですね。
【晴太郎】最初の頃のUOMOには、現在のようなイメージが無かったんですけど……
【編集長】創刊当時はUOMOもイタリア風のエレガントなイメージの誌面作りでした。ですけど、約10年前に編集長が変わった時にイメージチェンジし、さらに2017年に僕が編集長になって、また新しくしてみようという流れでしたね。
【晴太郎】狙いとしては、良い感じに当たっていると思いますか?
【編集長】そうですね。UOMOのスタイルって、これまでは他誌に比べて分かりづらい部分があったと思うんですよ。ガチッとしたスーツでは無いし、艶めいたワルっぽいスタイルとも違う。だけど今は、生活環境がコロナで変わって、在宅で仕事をする時に、軽いセットアップで十分という人が増えて、UOMOが提案してきたカジュアルでキレイ目なスタイルが現実的になったというか。”UOMOっぽいもの”が、注目され始めた感じがしますね。
【晴太郎】”時代の真ん中になりつつある”という感じかもしれないですね。
正統派を知っている上で、遊べる大人がカッコイイ
【晴太郎】UOMOの前は、女性誌の担当だったんですよね?
【編集長】入社した時は20代の女性ファッション誌『MORE』にいて、その後15年間はモード誌『SPUR』にいて、編集長もやって。そこからUOMOに来たんです。
【晴太郎】それぞれ違いはありますか?
【編集長】ファッションに関して言うと、女性誌は年代やテイストのセグメントがはっきりしているんですよ。そのセグメントの中では競争も激しいし、読者層も割と見えているんですけれど、男性誌の方が数が少ない分バックリ分かれていて、なんとなく力で引っ張るような作りが多いのかなって思いますね。
【晴太郎】個人的な好みは、あるんですか?
【編集長】自分が着られる服がある男性誌のほうが有利なことはあります。また、女性誌も一括りにできないところもあるんですよね。例えば、モテを意識する雑誌もあれば、自分が着たいものを着るべしと考える雑誌もある。UOMOの場合は、女性から見てこれが良いという視点は、あえて載せていなくて、男性同士の「あいつって、オシャレだよね」という目線を大切にしている気がします。
【晴太郎】UOMOには、“文化系”という言葉も1つのキーワードとしてあるじゃないですか?それは、どういう狙いなんですか?
【編集長】そもそも、スポーツウェアを特集する時に、初めて“文化系スポーツ”というタイトルで特集を組んだんですよ。スポーティーな服っていろんな雑誌がやっているし、スポーツウェアを常に全面に出している他誌もあるから、UOMOはあえてスポーツウェアなんだけど、ガチの運動ではない“文化系”であることをアピールしているんです。全然海に行かない丘サーファーみたいな(笑)
【晴太郎】確かに(笑)
【編集長】この間も、“文化系アウトドア”という特集をやったんですけど、アウトドアウェアも「山には登らずに、街で着ます」という、ある種の開き直りのようなものですよね。元々ファッション誌は、洋服のルールや歴史を教科書的に伝える機能もありますが、うちの読者の場合は、そういうのは若い時に読んでいるし、正統派とは何なのかを知った上で遊ぶのが大事だと思うんですよね。
【晴太郎】確かに
【編集長】今まで、そういった蘊蓄が、逆に男の人を縛ってきた事もあったと思うんですよね。「スーツはこう着なきゃいけない」とか。大人になって、そういったマイルールを破れる人の方がカッコイイと思うんですよ。
【晴太郎】なるほどね。二回転目みたいなイメージですよね。モードとかアウトドアという風に、切り口が明確であれば分かりやすいですが、UOMOトータルで言うと「いい塩梅じゃん?」みたいな感じじゃないですか?UOMOらしさは、スタイリングで出していくんですか?
【編集長】うちの読者の人って、ゴリゴリのマッチョっぽい人でもないし、どこかしら文化系のムードはありますね。洋服も体のシルエットをガンガン出していくというよりは、緩い服でという感じですね。
【晴太郎】今日の写真撮影、恥ずかしいな(笑)
UOMOは“深夜枠”だから、チャレンジが出来る
【晴太郎】Webサイトを見ていると、動画コンテンツやSNSなどのオンラインの繋ぎこみがECまで繋がっていて、すごく上手だと思ったんですけど、意識的にやられているんですか?
【編集長】4年前にWebをリニューアルした時に、全部のコンテンツを動画にしたんです。そういう雑誌のサイトは無かったし。サイト自体もめちゃくちゃ重いしはっきり言って無謀だったんですけど(笑)
【晴太郎】作るのも大変ですよね。
【編集長】そうですね。ただ個人的には、ファッション誌は写真の綺麗なページだけではなくて、“読み物”もあるし、どこかで笑えるような部分も欲しいなと思っていて、連続ドラマが作りたかったんですよ。それで、UOMOによく出ていただいている俳優の滝藤賢一さん主演で、コントみたいな連続ドラマを7話くらい作って、滝藤さんが着ている服が全部ECで買える仕組みにしました。
【晴太郎】結構、“実験好き”ですか?
【編集長】そうですね。集英社には『non-no』や『MORE』などいろんな雑誌がありますが、そういうメジャー誌に比べるとUOMOみたいな雑誌って、テレビでいう深夜枠なんですよね。だから、変なことをやっても「まぁ、UOMOだから」みたいな感じで、チャレンジができる場所なのかなと思っていて(笑) そこで、上手く行けば、他の雑誌が真似するような、ちょっと無茶なアイデアもやれると良いかなと。
【晴太郎】SNSも活発にやられていますよね?
【編集長】インスタライブも、毎月発売日に続けていますよ。
【晴太郎】会社としては、「読者を増やせ」というミッションがあるんですか?
【編集長】当然、売り上げを伸ばしたいとか、広告が入ればいいなと思います。だけど、基本的には「面白いほうが良いんじゃない?」という気がしますけどね。
【晴太郎】その感じは、伝わっていると思いますね(笑) この番組は深夜ラジオなんですけど、音声メディアへの興味もありますか?
【編集長】音のメディアって、“ちょっとした共犯関係”みたいな親密さがあるので、その要素は雑誌でも必要だと思います。今はインスタライブをやっていますけど、音だけの回にするのも有りかもしれないですし。僕も若い時には、深夜放送を聞いていた世代なので、音声メディアに憧れはありますね。
【晴太郎】ラジオを絡めたりしても、属性はマッチしそうですよね。
大人の夏服の悩みを解消するUOMO7月号
【晴太郎】UOMOの7月号が5月25日に発売されますが、この号について教えていただけますか?
【編集長】大特集は先ほど言っていた“文化系“で、「文化系が夏服に着替えたら?」というページですが、Tシャツ・ショートパンツ・サングラスの3つのアイテムに絞って特集をしています。夏の定番だけど苦手な人もいるアイテムをどう着こなすかを紹介しています。
【晴太郎】Tシャツって、色んな主義主張があって面白いじゃないですか。こだわりは、ありますか?
【編集長】白いTシャツを着るのが、カッコイイと言われるんですけど、僕も肉体がすごく恵まれているわけでは無いので、どうにかして誤魔化しつつやっていますね。大人の人は、若い人より繊細だし、傷つきやすいんですよ。あと、乳首が透けたりするのは嫌じゃないですか?
【晴太郎】確かに、嫌ですね。
【編集長】匂いとかも気になるし。今、着ているのは、COMOLIというブランドのメリノウールのシャツですけど、下にもウールのタンクトップを着ています。タンクトップはSmartWoolというアウトドアブランドで販売していたものです。これが廃番になった時に、世界中のECを漁ってまとめ買いをして、それをずっと着ているんですけど、タンクトップを重ね着している人は結構いますね。
【晴太郎】僕も着ています。UNIQLOのアレキサンダーワンがコラボした時のタンクトップを最後のシーズンにまとめ買いをして、まだ新品たくさんあります。
【編集長】大人になると、気に入ったものが無くなることがすごく怖くなりますよね?
【晴太郎】そうなんです! みんな似てくるんだな(笑)
【編集長】7月号には、そういうTシャツの姑息な知恵がたくさん載っていますから。
【晴太郎】楽しみですね!もう1つトピックをご紹介いただけますか?
【編集長】後半に「大人は金で筋肉を買います」という読み物ページがあります。
【晴太郎】買えるんですか?(笑)
【編集長】買えるんですよ。トップで紹介しているのは385万円のトレーニングマシーン。ジムに置いているようなスミスマシンなんですけど、電子制御の油圧が入っているもので。
【晴太郎】へー!負荷を調整してくれるんですね!
【編集長】例えばベンチプレスでは上げるときよりも下げる時に負荷が高くなったりして、通常のマシンより鍛える効率が上がるんですよ。しかも、危ない時には自動的に止まるという機能もあったり。350万円のモノは買えないと思いますが、それでも夢は見たいですしね。でも、1回1500円のプロテインとか買えるモノも載っていますよ。
【晴太郎】夏は、ボディラインがね……
【編集長】僕、サウナに行くんですよ。サウナで弱気にならないための、最低限のカラダづくりはしたいですよね。
【晴太郎】確かに、それは有りますよね(笑) 山崎さんには、来週もお付き合いいただきますので、またお話を聞かせてください。本日のゲストは、雑誌UOMOの編集長・山崎貴之さんでした。ありがとうございました。
【編集長】ありがとうございました。
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。次週も引き続き、山崎貴之さんをお迎えして、SPUR時代に手掛けた『岸辺露伴 GUCCIへ行く』の話や、今後の雑誌メディアの方向性などについて伺います。
今週の選曲
山崎貴之さんのセレクト
Waiting For The Band / Nicky Hopkins
山崎晴太郎セレクト
山の朝霧 / 森ゆに
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