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2021.12.05

岩澤 史文 vol.2

12月5日の文化百貨店、ゲストは先週に引き続きスケーター/動画クリエイターの岩澤史文さん。今週は、プロスケーターのために立ち上げたオンラインサロンや、7月に出版された書籍について伺いました。

SNSでトリックを学ぶ。だから、若い世代が強い

【山崎】先週はYouTubeチャンネル『MADskater』や、途上国にスケートボードの魅力を伝える『SkateAidプロジェクト』について伺いました。1週だけでもかなり新鮮なお話を聞けましたが、今週もよろしくお願いします。

【岩澤】よろしくお願いします。

【山崎】一般的にスケボーと言えば、今年は何と言っても東京オリンピックですかね。競技に出ている選手が、みんな若い!「こんなに、若い子たちが世界と争っているんだ」って思いました。

【岩澤】そうですね。すごく若いですね。日本では、10代が独占という感じです。

【山崎】世界的に、若い世代が強いんですか?

【岩澤】世界を見ても、25歳以下が多いですね。

【山崎】そうなんだ。理由はあるんですか?

【岩澤】スケボーを練習する上で欠かせないのが、SNSなんですよ。Instagramなどで、技を見て学ぶんです。僕の感覚ですけど、その情報の吸収力が若い人の方が早いので、どんどん技が増えて、どんどん上手くなっていくのかなと思いますね。

【山崎】そうなんだ。僕のような年齢になると、そのスピード感が遅くなるよなぁ(笑) 若い人が情報を取ったのを観てから動くから、どうしても一手ずつ遅くなるというか……。

【岩澤】そうですね。情報は全部、SNSで回ってきますね。

【山崎】この間、駒沢公園のスケートパークに行ったら、若い子がトリックをして、そこで初めて会ったような大人が撮影係をやっていたんですよ。その光景を見ながら、「良いシーンだな」って思ったんですよ。すごく心が温まるというか、色んなヒエラルキーを超えて、文化が繋がっていく感じがしました。

スケーターがアーティストとして評価される海外と、競技面での評価が強い日本

【山崎】史文さんのYouTubeチャンネル『MADskater』では、業界課題みたいなものについても扱っていますよね。オリンピックでの盛り上がりもあった中で、スケーターを取り巻く環境は、どうなんですか?

【岩澤】オリンピック競技に選ばれましたけれども、「スケボーで食べて行けるのか?」と言うと、全然食べてはいけない……。日本でスケボーで食べていけている人は、4~5人じゃないですかね。大きな課題として、“スケーターが食べていけない”という問題がありますね。

【山崎】そんなに少ないんですか⁉ 「13歳で家が建つ」みたいなイメージを生んだ部分もあるけど、実際には難しいんだ。

【岩澤】そうですね。現状は、スケボーだけで生活できる人は一握りです。スケーターには、収入源が3つあるんです。1つ目はスポンサー、2つ目が大会賞金、3つ目がイベントやCM出演といった単発の案件。大会賞金やゲスト出演というのは、単発ですし不定期なので安定した活動には繋がらないんですよ。企業スポンサーだと固定の収入になるので、それが一番重要なんですよね。

だけど、日本では企業がスケーターに対してスポンサードするというのが、まだ少ないんです。特に日系企業からのスポンサードは少ないので、スポンサーを獲得するためには外資系企業を探す、もしくは海外に行くという流れが多いですね。

【山崎】海外では、エクスストリームスポーツとして認知や理解が高そうですもんね。日本だけが、そういう状態なんですか?

【岩澤】そうですね。まず、スポンサーの数や規模が違いますしね。

あと海外だと、スケーターがアーティストとして評価されている部分が大きいというのも、違いだと思います。大会に出ていなくても、アーティスト面での評価が高ければ、スポンサーを獲得できたりします。日本だと大会で成績を残さないとスポンサーを付けるのが難しいですし、スポンサーが付いたとしても金額が少ないケースが多いので、海外の企業に注目されないといけない感じですね。

【山崎】“プロスケーター”だけど、他の仕事をしながらスケボーをやっている感じなんですね。

【岩澤】僕の周りのだと、朝6時から昼までバイトをして、そこからスケボーをするという人も多いですね。それを身近で見ていて悔しくて、「もっとスケボーを通じて生活を出来る人を増やしたい」と思いながら、日々活動しています。

【山崎】なるほど。日本での状況って、ピストバイクの話に似ているのかなって。昔、NIKEが広告で、ピストバイクをフィーチャーして「ブレーキなし。問題なし。」ってメッセージを出したんですよ。僕も自分でピストバイクを組んで乗っているんですけど、フレックスギアという1:1のギアなので、ブレーキが無くても止まれるんですよ。ブレーキが無いから、見た目もシンプルで、すごく美しいんですよね。だけど、そのメッセージが炎上して、道路交通法が変わって、ブレーキの無い自転車で公道を走れなくなった。スケボーも同じような扱いですよね。

企業がスポンサーになるのは「全力で応援しています」という姿勢なので、今の日本の現状ではコンプライアンスとの兼ね合いの中で、難しい部分も出てきますよね。

【岩澤】そうですね。今の日本では、移動手段としてのスケボーを支援することが出来ない部分があるので、厳しい状況ではありますね。

スケボーって、ストリートスタイルとパークスタイルの2種類あるんです。ストリートは、街中にある階段や縁石を使って技をする。パークは、スノーボードのハーフパイプのように弯曲した急斜面で技をする。パークはスケートパークでしか出来ないので、日系企業でもスポンサーは付くんですよ。

【山崎】街でやっているイメージが無いから?

【岩澤】そうですね。そのリスクがないので。でも、スケボーの人口を見たときに、約98%がストリートスタイルで楽しんでいるんですね。ストリートの方が、競技人口が多くて知名度もあるのに、全然食べていけなくて、パークのみが食べていけるという。そういう状況は、世界的に見ても日本くらいだと思います。

【山崎】なるほどね。土地が狭いとか、色んな原因があるようにも思いますね。

スケボー好きが集まるオンラインサロンから生まれた、スケーターへのベーシックインカム

【山崎】2019年にスケーターを支援するオンラインサロンを立ち上げましたよね。ここでは、どんな事を発信しているんですか?

【岩澤】先週もお話したように、元々はスケボーのコミュニティが好きだったので、それを作りたいと思っていたんです。だけどスケートパークを造って、そこにコミュニティを作るというのは、今の僕には無理なので、オンライン上のコミュニティから始めようと思って始めました。

このオンラインサロンでは、スケボー好きが定期的に集まって練習会をしたり、情報提供をしたり、お互いに教え合ったりしています。オフラインで会う事もあるんですが、そういう事を一緒にできる仲間やコミュニティをオンラインで作るというのが目的ですね。

【山崎】オンラインサロンで集めたお金を、プロスケーターにベーシックインカムとして支給していたんですよね。先ほどの“スケーターが食べられない問題”と繋がっていて、社会意識がすごく高いと感じるんですが、どういう意図でやられていたんですか?

【岩澤】これは、スケーターに毎月7万円のミニマムベーシックインカムを渡して、“その人がどう変わっていくのか?”というのをオンラインサロンのメンバーで、応援しながら見ていくというプロジェクトなんです。

プロスケーターのほとんどは食べていけていないので、バイトをしたりしながらスケボーをしているんですね。7万円分のバイトというと、簡単に計算をすると70時間ぐらいですよね。毎月、その70時間をスケボーに使えるようになったら、その人がどんな効果を発揮出来るのかを見ていったんです。

7万円を支給されたスケーターは、その70時間で宣伝活動や練習時間を増やした事で、Instagramのフォロワーが3~4倍になって、そこからレッスンなどの仕事を貰えるようになりました。今は、オンラインサロンからのベーシックインカムは無いんですけど、スケボーで食べて行けるようになっています。

【山崎】なるほどね。スケーターにベーシックインカムって、どこから出たアイデアなんですか?

【岩澤】ドイツやアメリカ等では、アーティストを支援するためにベーシックインカムを支給している動きがあって、それに興味を持っていたんです。日本でもスケーターに対して、そういった取り組みがあれば、良い影響があるんじゃないのかなと考えて、興味本位で始めたプロジェクトでしたね。このプロジェクトに関しても、動画をアップしているので、もし良ければ見てください。

【山崎】制度の壁みたいなものを、オンラインサロンという自分のコミュニティを使って、すごくしなやかに乗り越えていますよね。さらに、その結果を実証していくというのは、本当に素晴らしいなと思います。感動しました。

【岩澤】オンラインサロンに入ってくれる人は、“スケボーが好き”という共通部分があるので、そこで集まったお金をスケボーのために使おうという所ですね。ベーシックインカムもオンラインサロンで上がったアイデアなんですよ。

【山崎】そこで応援されたからには、「がんばろう!」と選手のギアも変わっていくだろうし、それ自体が環境を変えていくという事だと思うので、いい影響を与えていますよね。SNSやコミュニティの本来の在り方って、こういう事なんだなと思いました。

幅広いフィールドで活動している史文さんですが、今年7月に初の著書『僕に居場所をくれたスケートボードが、これからの世界のために出来ること』を発売されました。これは、どのような本ですか?

【岩澤】僕がスケートボードに出会ったきっかけやスケートボードから学んだこととか、表面上では分からないようなスケートボードの本質的な魅力をまとめました。多様性とか、色んな方向からスケートボードの力を掘り下げて、スケートボードの魅力を1つにまとめたような本です。これも、オンラインサロンがきっかけなんです。

【山崎】オンラインサロン、すごいな!(笑)

【岩澤】メンバーの1人に、編集者の方がいたんです。スケートボードの魅力をより広めるために、「スケボーに興味があるけど、どこで情報を得れば良いのか分からない」という人たちに対して、「とりあえずこれを読めば、スケートボードが分かる!」というものがあれば良いんじゃないかというアイデアが出て、本を書こうという話になりました。

【山崎】出版後の反響は、いかがでしたか?

【岩澤】様々な年齢の人から、「スケボーに興味がなかったけど、本を読んで始めました」とか、「偏見があったけど、変わりました」というメッセージを頂いたりしました。そういうメッセージを見ると、書いて良かったなと思いますね。

【山崎】そうですよね。この番組のリスナーさんも史文さんの話を聞いて、スケボーのイメージが変わってきていると思いますよ。

スケボーを通じて人と人を繋いで、誰かの居場所をつくっていきたい

【山崎】ゲストの方みなさんに、お聞きしている質問をしていきたいと思います。僕、山崎晴太郎とコラボレーションをするとしたら、どんなことをしてみたい、もしくは出来ると思いますか?

【岩澤】晴太郎さんは様々なアートをやっていると思うんですけど、スケボーもアートやデザインと共感できるところがあると思っているんですね。

【山崎】相性が良いですよね。

【岩澤】具体的には出てこないんですけど……。逆に晴太郎さんは、僕とどんな事が出来ると思いますか?

【山崎】お話を聞いていて、社会を変えるような取り組みを一緒にやってみたいなと思いました。社会をポジティブに変革していくような事ですかね。それに取り組む時に、“社会が先にある”のではなく“自分たちのピュアな思いが先にある”というのが何より大切だなと感じたので、そういう活動を一緒にできたら良いなとい思います。

【岩澤】スケートボードって元々カウンターカルチャーとして、社会に対してのアンチテーゼとして入ってきた文化なので、そういう広い意味で変革を起こせるのかなと思いますね。

【山崎】そうですよね。もう1つ恒例の質問です。この番組のコンセプトである、文化百貨店という架空の百貨店でバイヤーとして一画を与えられたら、どんなものを扱いたいですか?

【岩澤】スケボーの映像を撮影して、流したいですね。

【山崎】スケボーやスノボーの動画って、ずっと見ていられますよね。

【岩澤】本当にそうですよね。映像とすごく親和性がありますよね。

【山崎】画映えするし、カッコイイですよね。最後になりますが、史文さんが考える“スケボーの未来”は、どうなると良いなと思いますか?

【岩澤】僕がスケートボードと出会ったのが小学校6年生で、いじめられていて居場所が無かったんですけど、スケートパークに行ったらすごく居心地が良くて、僕の居場所となって救ってくれました。だから、スケートボードが人と人を繋いで、その人たちの居場所をつくっていけるようしたいというのが、僕の目標としてあります。素敵な世界になれば良いなと思いますね。

【山崎】その言葉には、共感しか無いですね。2週に渡ってお話を聞いてきましたけど、すごく感動しました。年齢を重ねるうちに、自分でも知らないうちに頭が固くなっていたりして「カルチャーとは、こうあるべきだ」とか言いたくなりがちなんですけど、それによって身動きが取れなくなっているんだなって感じました。史文さんが、すごくしなやかに渡り歩いているのが、印象的でした。

といったところで、今週の『文化百貨店』は閉店となります。次回は、東京・青山にある鮨将司にお邪魔をして、店主の山口将司さんにお話を伺います。

今週の選曲

岩澤史文さんのリクエスト
Walk On A Dream / Empire of the Sun

山崎晴太郎セレクト
Lost / Maroon5

Spotifyでアーカイブをポッドキャスト配信中

スケーター/動画クリエイター

岩澤 史文

動画クリエイター/スケーター 大阪生まれ、ハンガリー、ドイツ、大阪育ち。
中央大学商学部卒。 スケートボード系動画クリエイター。スケートボードを通して、すべての人が自由に表現できる社会を目指すRitopia代表。登録者数20万人を超えるチャンネル「MDAskater」を運営、途上国でスケボーを教える「SkateAid」プロジェクト主宰。オンラインサロンを運営し、スケートボードコミュニティー拡大に努めている。オリジナルアパレルブランド「SHIMON」も運営している。株式会社GROOFY取締役。 不登校だった小学生の時にスケートボードと出会い、人生を変えられる。以後、そのスケートボードの魅力を広めるために活動している。著書に、スケートボードの魅力を語る書籍「僕に居場所をくれたスケートボードが、これからの世界のためにできること。」

動画クリエイター/スケーター 大阪生まれ、ハンガリー、ドイツ、大阪育ち。
中央大学商学部卒。 スケートボード系動画クリエイター。スケートボードを通して、すべての人が自由に表現できる社会を目指すRitopia代表。登録者数20万人を超えるチャンネル「MDAskater」を運営、途上国でスケボーを教える「SkateAid」プロジェクト主宰。オンラインサロンを運営し、スケートボードコミュニティー拡大に努めている。オリジナルアパレルブランド「SHIMON」も運営している。株式会社GROOFY取締役。 不登校だった小学生の時にスケートボードと出会い、人生を変えられる。以後、そのスケートボードの魅力を広めるために活動している。著書に、スケートボードの魅力を語る書籍「僕に居場所をくれたスケートボードが、これからの世界のためにできること。」

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©seitaro design,inc.

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