2022.03.06
まつゆう* vol.1
3月6日の文化百貨店にお越しくださったのは、コミュニケーション・エヴァンジェリスト/メタバースDJのまつゆう*さん。今回は、まつゆう*さんのこれまでのキャリアを伺いながら、二拠点生活をしているという“メタバース”の世界について伺います。
ホームページの管理人からスタートした“まつゆう*”
【山崎】“何でもやってみよう!”という感じで、色々と体験するようにしているんですけど、最近身に付けようと思っているがVRなんです。話題になっている一方で、VRを自分のものとしている人は少ないのかなと思っていて、VRゴーグルを買って、その世界に生息するようになったんですが、本当に難しい……。
「難しい」というよりは、「ピンと来ない」と言う方が正しいのかもしれないですけど、まだ気配しか感じられていないので、誰かに教えてもらいたくなって、本日ゲストにお招きしました。コミュニケーション・エヴァンジェリスト/メタバースDJのまつゆう*さんです。
【まつゆう*】よろしくお願いします。まつゆう*です。
【山崎】Quest2というVRゴーグルを買ったんですよ。ただ、まだ分からない事ばかりなので、色々と教えてください。
【まつゆう*】買ったものの、ホコリを被っている方って結構多いんですよ。
【山崎】そうだと思います(笑) メタバースの前に、まつゆう*さんのキャリアを伺っていきます。独学でホームページを作成したのが、Webとの関係性の始まりなんですね。
【まつゆう*】そうなんです。1998年だったんですけど、当時は女の子に向けたファッションやカルチャーのWebマガジンが無かったので、『chelucy』という名前のサイトを自分で立ち上げました。
【山崎】そもそも98年に、Webマガジンってありましたっけ?
【まつゆう*】分かりやすいように“Webマガジン”と言っているんですけど、当時はその言葉自体、無かったと思います。
【山崎】なぜ、サイトを立ち上げられたんですか?
【まつゆう*】15歳の時からモデルをやっていて、それはそれで楽しかったんです。だけど、ヘアメイクさんやカメラマンさんといった、スタッフさんたちにすごく憧れたんですよ。アートディレクターという言葉は、まだ広がっていなかったですけど、そういう役割の人もいました。
そういうのを見てきたので、自分でアートディレクション、写真、メイク、スタイリングをしたフリーペーパーを作りたかったんです。だけど、お金がかかるし、たくさんの人に見てもらうのは難しいので、どうしようかなと思っていた時に、あるヘアメイクさんに「ホームページって、知ってる?」って言われて、そこからですね。
【山崎】chelucyでは、ファンとの交流もされていたんですよね。当時は、タレントやモデルの人が、ファンと交流するのは珍しかったですよね。
【まつゆう*】実は“まつゆう*”が生まれる、きっかけにもなるんですけど、あくまでホームページの管理人として、やり取りをしていました。元々、松丸祐子という名前でモデルやタレント活動をしていたんですけど、その当時に自分の名前をエゴサーチしたら「これから来るかもしれないアイドル」という枠に入って、男性の人が私のアイコラを作ったりしていたんです。
それで、女の子だけを集めるサイトを作るには、私の名前と顔を出してはダメだと思って、妹にモデルをしてもらって私は裏方に回ったんです。その時に生まれた名前が、“まつゆう*”なんです。
みんなが理解して、使いこなしてくれるのを見るのが嬉しい
【山崎】当時からプロデューサー的な視点を持たれていたんですね。その後、ヤプログのプロデューサーとして始めたブログを始めて、ブロガーの先駆けとして注目を集めるんですよね。
【まつゆう*】それも、chelucyからの流れなんです。ガラケーにカメラが付き始めた時に……
【山崎】J-PHONEが最初にやったやつですよね。
【まつゆう*】そうです。その時に、自分で撮った写真をリアルタイムでchelucyにアップする事が出来ないかなと思って、友達のエンジニアにシステムを組んでもらったんです。メールで写真を送信すると、デザインをしているページに写真が1枚アップされて、どんどん写真を見ていけるという仕組みを。
【山崎】Instagramを先取った感じですよね。
【まつゆう*】そうですね。SNSのないインスタですよね。それを周りの人たちが面白がってくれたので、ヤプースというサービスを作ったんです。それで、後にヤプログを立ち上げるGMOさんに、ヤプースを譲渡したんです。ヤプースだからヤプログ。
ヤプースを作ったのは、まつゆう*だから「ヤプログのプロデューサーをやりませんか?」という話を頂いてという形です。
【山崎】そうやって、“インフルエンサー”の先駆けになって行ったんですね。
ちょっと駆け足でキャリアを伺いますが、ブロガーとして注目を集めた後、TwitterやLINE、noteの入門書をいくつも書かれていて、“ソーシャルコミュニケーションの先生”のような活動もされています。
新しいものを率先して“自分で使う”のと、それを“伝える”のとでは、少し違うと思うんですけど、「みんなに分かって欲しい」というモチベーションは強いんですか?
【まつゆう*】仰る通りで、「魅力を知って欲しい!」というのはありますね。Twitterを始めたのは、2007年の4月なんですけど、その時は、日本語を打てなかったんですよ(笑) だから、バグを使って日本語で打っていたんです。
【山崎】かなり早い段階ですよね。
【まつゆう*】 “フォロワー”という概念をTwitterで知った人も多いと思うんですけど、「こんなに面白いんだよ!」という事を伝えて、みんなが理解してくれて使いこなしてくれるのを見るのが嬉しいんですよ。変な趣味でしょ?(笑)
【山崎】「一周回ったな」という感じがしますね(笑)SNSって、みんなが使い始めて、初めて面白くなったりするじゃないですか。初めの方に飛び込んでいくと、面白さを感じるまでが難しいように思うんですけど、どうやって楽しみ方をキャッチアップしていったんですか?
【まつゆう*】私の場合、Skypeチャットで30人ぐらいが参加しているブロガーのグループがあるんです。そこに、みんなが見つけてきた面白そうな新サービスが投下されるんですよ。だから、30人のフォロワーが居て、30人をフォローしているという状態から始められるので、私たちのグループは遊べるんですよ。
【山崎】なるほどね。それだと、早いうちに全体像がつかめますね。そういう新しいサービスを紹介したりする時に、気を付けている事ってあるんですか?
【まつゆう*】初心者の人から質問が来たときは、必ずレスを返すようにしていますね。Twitterもそうですし、他もですけど、基本的に全員に返信します。例えば、Twitterを始めてコメントをしたけど返って来なかったら、悲しいじゃないですか。だけど、初めて返信が来た時って、すごく嬉しくなかったですか?
【山崎】そうですね。初めての“いいね!”も嬉しかったですね(笑)
【まつゆう*】それを味わって欲しいと思っているので、よほど変な人じゃない限り返信するようにしていますね。
【山崎】みんなに楽しんで欲しいというのが、すべての活動の源なんですね。
メタバースは、もう1つの世界、もう1つの自分
【山崎】まつゆう*さんが選んだ、Fantastic Plastic Machineの『Electric Lady Land (Japanese ver.)』を聴いていただきました。
【まつゆう*】私がメタバース上でDJをやっているのですが、今年初めて主催のイベントをやったんです。Fantastic Plastic Machineの田中さんにも許可を頂いて、そのイベント名にしたのが、この曲です。
【山崎】メタバースの中に、クラブがあるということですか?
【まつゆう*】そうなんです。クラブもありますし、ライブハウスもあります。こちらの世界にDJセットを用意しておけば出来るので、メタバースの中でDJをやっている人は結構多いですよ。
【山崎】まず、「“メタバース”って何?」という人も多いと思うんですけど、そこから教えてもらっても良いですか?
【まつゆう*】私も一言で説明しづらいので、先日発売した『VRChatガイドブック〜ゼロからはじめるメタバース 』の共著者である岩佐琢磨さんの言葉を借りると「社会性を備えた、没入可能なバーチャル空間」という事になります。
これを私なりに解釈すると、いつもの友達や仲良しの人たちと、泣いたり、笑ったり、楽しんだり、時にはケンカをしたり、恋人が出来たり・お別れしたり、お酒を飲んだり、ゲームをしたりという普通の社会生活を送れる、暮らしている街のような感じです。
【山崎】実在する事は、メタバースでもほとんどの事が出来ると言いますもんね。その空間に入ってみると、気配がすごくリアルなんですよね。向こうの方にいる人の声もちょっと聞こえたり、人とすれ違う時に声が聞こえたりするので、すごく不思議な感じになりました。
【まつゆう*】本当にもう1つの世界だし、もう1つの自分だし。私は「あの中で、暮らしています」という言い方をしています。
【山崎】社会的な記号みたいなものが本当にフラットになって、フィジカルなままコミュニケーションが出来る事が1番の魅力なのかな。
本のタイトルにも入っている“VRChat”についても、教えてもらえますか。
【まつゆう*】まだ完全なメタバースというものは、この世に無いのではないかと言われているんですが、その中でも一番メタバースに近いであろうVRソーシャルアプリが『VRChat』です。アメリカ製のものなので、UIとかは全部英語だったりするので、すごく難しんですけど……
【山崎】メタバースという概念があって、その下に色んなプラットフォームがある。その中で、世界を牽引しているのが、VRChatという事ですかね?
【まつゆう*】そうですね!いっぱいあるので、一番とは言い切れないですけど、すごくユーザーが多いですね。
【山崎】VRChatを始めるには、どうしたら良いんですか?
【まつゆう*】『VRChatガイドブック〜ゼロからはじめるメタバース 』を買ってください!すみません、宣伝でした(笑)
【山崎】How-toを知らないといけないですからね(笑) ハード面では、何が必要なんですか?
【まつゆう*】とりあえず、WindowsのPCがあればデスクトップでも出来ます。もしくは、Quest2などのVRゴーグルだけでも出来ます。そして、PCとVRゴーグルを繋ぐという方法もあるので、3種類のやり方があります。
まずオススメしたいのは、Quest2というVRゴーグルから入る事ですね。なぜかと言うと、PCからだと没入感が無いんです。おしゃべりをしたいとか、飲み会がしたいとか、中で没入感のある生活がしたい場合は、VRゴーグルを被ったほうが良いです。
【山崎】それは、すごく共感しますね。VRゴーグルを着けて、設定をした瞬間に「おぉ~!」と、ちょっとした感動がありますもん。僕はVRゴーグルだけで中に入って、色んな所を歩いて、周りの話を漏れ聞いているだけなんです。どこかのコミュニティに入った方が面白いだろうなと思っているんですけど、どうやって入っていけば良いですか?
【まつゆう*】『[JP]チュートリアルワールド』というのがありまして、これはジャパニーズの[JP]なんですけど、そこに行くと、全部日本語で使い方とか、UIの説明が書いているので、初心者の方が多くいます。初心者に教えてあげたいという優しい人達が大量にいるので、そこでお友達を作るのが早いと思います。ただ、ナンパをしたいという人もいたりするのですが(笑)
【山崎】早くも、そういう人たちが居るんですね(笑)
【まつゆう*】あとはQuest2だけで行ける『Questラジオ体操』というのが、朝の7時半からやっているので、そこに参加すると友達が出来やすかったりすると思います。
中では、とにかくイベントがあるんです。イベントカレンダーを見ていくと、その時間に、誰にJoinすれば良いかというのが分かるので、そこに行って友達を作るというのもアリですね。
【山崎】友達が出来て、イベントに行くようになっていったら、どんどん自分がメタバースの方に移管していくような気持ちになりそうですね。実際、まつゆう*さんはそうなっているんですよね?
【まつゆう*】毎週金曜日は、メタバースの中でバーのスタッフをやっているんですよ。リアルで友達にお誘いされても「バーの営業があるから無理」とか、そういう断り方をする事はありますよね。「メタバースDJのスケジュールが入っているから、その日はダメ」とか、「その日は、〇時からVRに入らないといけないんだよね」という会話になっちゃう(笑)
【山崎】なるほどね。それだけの没入感と、魅力的な世界があるということですよね。
1日って、24時間しか無いじゃないですか。何に割いていた時間が、VRChatに代わりましたか?
【まつゆう*】まず、ドラマを観なくなりました。あと、映画も好きだったのに、その映画も代償にしているのかな……。
【山崎】現実でのコミュニケーションが減ったりしませんか?友達の比重が変わったとか。
【まつゆう*】不思議なのがVRChatで仲良くなると、リアルで会いたくなるんですよね。メタバースの中で仲良くなると、素性を隠していない人とは「会おうよ」となるので、オフ会がすごく増えました。
【山崎】なるほどね。そこに入れるように、VRChatを勉強します!まつゆうさん*のメタバースDJとしてのパフォーマンスを楽しむには、どこに行けば良いんですか?
【まつゆう*】Twitterで出演情報をツイートしているので、それを見ていただければ、どこに行けば良いのか分かると思います。残念ながら、Quest2だけで来られる所では、あまりやっていないので、PCと接続してもらう必要がある事が多いんです。
たまにQuest対応の所でやるので、その時は告知のツイートに「Questでも見られます」と書いていますので、Quest勢のみなさんは、その時に来てください。
VRChatで、やってはいけないこと
【山崎】何度か話に挙がりましたが2月26日に、岩佐琢磨さんとの共著『VRChat ガイドブック〜ゼロからはじめるメタバース 』が発売になりました。改めて、どのような内容か教えてください。
【まつゆう*】VRChatの登録方法や、どうすればVRChatに入れるのか、アプリ内のメニュー説明などを掲載しています。VRChatに入ると、全部が英語なので、初めて見るような言葉もいっぱいあるんですよ。そういうもの全部説明していますし、コントローラのどこを触れば何が出来るかという基本的な部分もあります。
あとはVRChatの中では、“やってはいけない事”もあるんですよね。なので、本の中にはマナーページも設けて、「こういう事は辞めましょう」というのも書いています。
【山崎】新しい世界だから、それに適した振る舞いもあるわけですよね。
【まつゆう*】VRの世界でよくあるのが、アバターがカワイイと頭を撫でたくなっちゃうんですよ。それはコミュニケーションなんですけど、“ファントムセンス(VR感覚)”というのがあって、実際には触られていないのに触られているように感じたりする場合があるんです。
【山崎】そういう事もあるんだ。
【まつゆう*】熱い・冷たいとか、味覚・嗅覚がある人もいるんです。私は、熱い・冷たいは分かります。
【山崎】えっ!?
【まつゆう*】なので、頭を触られるのがすごく嫌だという人も居るので、「仲良くなってからか、良いかどうかを確認しましょうね」という事などを書いていたりします。知らないと分からないですよね?
【山崎】確かに、分からないですね。VRChatに入ったものの、良いも悪いも分からないから、最初は立ち尽くしていましたもん。
【まつゆう*】仲良くなったので、今度、私が初心者を案内しますよ。
【山崎】ぜひ、お願いします!
Twitterとかも同じだったと思うんですけど、新しいものって体験しないと見えてこなかったりすると思うんです。これからVRとかメタバースに、どこかで触れるタイミングになってくると思うので、興味が出たというリスナーの方は、ぜひVRChatの中でお会いしましょう。
今週のゲストは、コミュニケーション・エヴァンジェリスト/メタバースDJの まつゆう*さんでした。
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。来週も引き続き、まつゆう*にお越しいただいて、VRChat、メタバースの世界ももう少しお聞きしていきます。