2022.03.13
まつゆう* vol.2
3月13日の文化百貨店のゲストは、先週に引き続きコミュニケーション・エヴァンジェリスト/メタバースDJの まつゆう*さん。番組MCの山﨑晴太郎が、今最も興味を持っていると言える“メタバース”の世界について、今週もたっぷり伺います。
クリエイターがいつの間にか大企業に!?“VRChat就職”
【山崎】先週も、メタバースやVRChatについて伺いましたが、『続・VR』という事で今週もお願いします。まつゆう*さんは“メタバースDJ”という肩書を使われていますけど、メタバースの中にも職業があるんですよね。
【まつゆう*】そうなんですよ。リアルの世界にある職業は、大体あります。
【山崎】カメラマンも居るそうですね。
【まつゆう*】バーチャル・フォトグラファーさんですね。『VRChatガイドブック〜ゼロからはじめるメタバース 』の共著者である岩佐琢磨さんは、バーチャル・フォトグラファーなんですよ。この本では、もう一人の方にもお願いして2人体制で、VRChatの中の写真をしっかり撮っていますので、見栄えもバッチリだと思います。
【山崎】“中の写真”というのが想像しにくいんですが、キャプチャーを撮ったということですか?
【まつゆう*】キャプチャーの域を超えていますね。デフォルトでカメラが付いているけど、今まではあまり性能の良いものでは無かったんです。ボケが入るようなレンズが売っていて、それをアバターに仕込むことで、エモい感じの写真を撮ったりしていたんですけど、デフォルトのカメラがアップデートして、レンズがついているのと同じ状態になったんですよ。だから特にレンズを買わなくても、良い感じの写真が撮れるようになりました。VRChatの中では、フォトコンテストも開催されていますよ。
【山崎】バーチャル・フォトグラファーの?
【まつゆう*】はい。色んな所が主催をしていますね。あとは、展示会もやっていたりします。
【山崎】そうなると写真映えする場所とか、ワールドが有ったりするんでしょうね。ワールドというのは、どんな人が作っているんですか?
【まつゆう*】ワールドクリエイターさんが、BlenderやUnityというソフトで作っていますね。趣味で作って無料で公開している方もいますし、例えば企業さんから依頼をされてお仕事として受けている事もあったりします。
その流れで言うと、優秀なクリエイターさんたちがスカウトをされて会社に所属するようになる、“VRChat就職”みたいなことが増えてきています。クリエイターさんが、いつの間にか大きな企業に入っていたということが、最近良く起きています(笑)
【山崎】凄いなぁ(笑) 今は、お金を貰うという事の重要度は高くないでしょうけど、これからVRChatを使った色んな動きが加速しそうですよね。まつゆう*さんのメタバースDJとしてのイベントも、チケット代という話になっていったりするんでしょうね。
【まつゆう*】今は、みんながお金の為にやっていないので、「どうやって儲けようか?」という話は出てこないんですよ。私も趣味でやっているので、お金儲けやマネタイズは一切考えていないです。だけど、メタバースの世界でバンドや音楽ユニット、あとはダンサーとか、それを仕事として生きていきたいという人もいます。
【山崎】今は、リモートワークで働いている人も多いですよね。VRChatにオフィスがあって、そこでコミュニケーションをとるという事も出来るんですか?
【まつゆう*】すでに、やっている人もいますよ(笑)
【山崎】やっぱり(笑) 今は過渡期というか、制度などが整う前ですし、一番面白い時期かも知れないですよね。
【まつゆう*】そうですね。どんどんルールが固まってくると、面白さが変わっていくかもしれないですね。統制されてしまうと、やはり面白味が欠けていく部分があると思います。今のVRChatは何でも出来てしまうので、悪いことも可能なんですけど、良心のある人ばかりだから、そんなに悪いことは起きていないです。
ポータルを開けば、簡単に新しい世界(ワールド)に触れられる
【山崎】リアルな世界に存在するものが、ほとんど有るとなると、犯罪みたいな概念もあるんですか?
【まつゆう*】犯罪と呼べるレベルのものは無いですけど、“視界ジャック”という他の人の視界を遮ってしまう迷惑行為があるんです。そういう嫌がらせをする人がいたりします。
【山崎】された方は、いきなり顔面にパイを投げられたような感覚になりますよね。
【まつゆう*】そうですね。とは言え、VRなのでゴーグルを脱いだら逃げられるんですよ。私も一度、悪ノリをしているナンパ系の人たちに囲まれて、耳元で囁かれて泣きそうになった事があるんです。その時に友達が「VRゴーグルを外せば良いんだよ」と声を掛けてくれて、それで脱出できました。
【山崎】とっさに自分で対策が思いつかないぐらい、没入しているんですね。迷惑行為は勘弁ですけど、その世界にはどんどん魅かれていますよ。
僕はリアルの世界では、アートディレクターやデザイナーとして仕事をしているんですが、メタバースの中での職業としては、何がオススメですか?
【まつゆう*】ワールドを作ったらどうですか?
【山崎】そんな簡単に、作れるものなんですか?
【まつゆう*】BlenderとUnityとPhotoshopが扱えれば、大丈夫ですよ。最初はお試しだろうから、pixivさんがやっているBOOTHというサービスで小物類のアセットを買って、それを並べてみる所から入ってみても良いと思います。
【山崎】“世界”が作れるという事ですもんね。
【まつゆう*】オフィスみたいな空間でも良いですし、壮大な草原を作るのも良いですよ。スペースコロニーとかも作れるんですから。
【山崎】僕がワールドを作ったとして、そこからどうすれば良いですか?誰も来てくれなかったら寂しいじゃないですか(笑)
【まつゆう*】パブリック化をして、「ワールドを作りました!」ってツイートをするんです。それで遊びに来た人が、「このワールドは良い!」となると、おすすめのワールド紹介のハッシュタグとかもあるので、一気に広がりますね。
毎日のように新しいワールドが出来て、そこから人気のワールドが生まれているので、みんなでワールド巡りをするというのも遊び方の1つです。
【山崎】転々と外国を巡る、観光みたいな感じですよね。
【まつゆう*】そうです。それが家に居て出来るし、ポータルという“どこでもドア”みたいなものを開くと、すぐに次のワールドに入っていけるので、何時間もかけて移動する必要もないのが、良いところですよ。
アイデンティティを再構築するアバターのカスタマイズ
【山崎】まつゆう*さんが選んだMEGの『ルージュの伝言』を聴いていただきました。
【まつゆう*】私がメタバースDJの時に必ずかけているのですが、この曲なんです。毎回、ぴょんぴょん飛び回りながら、踊っています。
【山崎】DJイベントは、どれくらいの長さでやるんですか?
【まつゆう*】大体、DJが3人ほど出演して、持ち時間が1人・45分~1時間ぐらいですね。
【山崎】想像以上に、きちんとしているんですね。お客さんがフロアにいる、あのクラブをイメージして良いんですか?
【まつゆう*】そうです。そのままです。中に入ると「あっ!クラブじゃん!!」と言うと思います。私は、フルボディートラッキング(フルトラ)という、身体全身を動かせる機器を付けているので、身体を動かしてダンスをしながらDJをやります。
【山崎】モーションキャプチャーのような感じですか?
【まつゆう*】それに近いですね。膝の上と、足首と、みぞおちにセンサーを付けるんですけど……。分かりますかね?
【山崎】それが、VRChatの中のアバターの動きと連動するんですよね?
【まつゆう*】そうです。ゴーグルとコントローラだけだと、頭・手と2本の3点しか動かないんです。だけど、身体も動くことでアバターの全身が躍動しているような感じになるんです。PCで入るようになったら、フルトラが欲しくなりますよ(笑)
【山崎】その話を聞くだけで、買ってしまいそうです(笑) まつゆう*さんのベースの1つに“Kawaiiカルチャー”があると思うんですけど、VRの中にまた新しい“Kawaiiカルチャー”が出てくるんでしょうね。
【まつゆう*】頭の中が“VR脳”になっちゃっているんですけど、アバターの目のテクスチャーや髪の色合い、肌質や洋服が可愛いとかというのは気にしちゃいますね。いかにそれを、自分なりに落とし込むかみたいな所が、最近は楽しいですね。
【山崎】それって、中学生ぐらいの時に、最初にファッションが楽しくなった時の感じですよね。
【まつゆう*】そうです。今、私が使っているアバターは水色の髪型で前髪がぱっつんなんですけど、目の色は紫。それは私のパーソナルカラーで、違うアバターを買っても全部その色にしているんですよ。それだけで、違うアバターにしても、みんなが私って分かるくらいなんです。
【山崎】カラー・ブランディングみたいな事ですよね。
【まつゆう*】そういう事を意図してやっている人が、VRチャッターには多いですね。だから、「この色は〇〇さんだ!」って分かることも多いです。それをブランディングというより、“自分の色”として捉えているんじゃないかな。
【山崎】そこに、アイデンティティが出てくるんですね。逆に言うと、リアル世界でのアイデンティティが無くなる場所でもあるんですよね。だからこそ、自分のアイデンティティを投影するものとして、“色”が1つの象徴になっているのかもしれないですね。
【まつゆう*】そうかもしれないですね。あと、私の場合はアバターに付いている耳と尻尾を取るのも、アイデンティティにしています。
リアル世界で、アバターに寄せていくアパレルブランド!?
【山崎】ゲストのみなさんにお聞きしている質問も伺いたいと思います。僕とコラボレーションするとしたら、どんなことをしてみたい、もしくは出来ると思いますか?
【まつゆう*】ホームページとかで活動を拝見したんですけど、オシャレな印象なのでワールドを一緒に作りたいです。自分の住んでみたい所や自分の家を妄想しながら、一緒にというか相談しながら作ってみたいです。色々とディレクションをしてくださると思うので、そういう話をやりながらだったら、すごく面白そうだなと思います。
【山崎】ぜひ、やってみたいです。ワールドってどういう感覚のものですか?国みたいな感じ??
【まつゆう*】街でもありますし、国みたいにものすごく広い所もあります。電車に乗って移動するような所から、ワンルームのマンションみたいな所もあって色々です。室内から外には出られるけど庭までとか、部屋の中に煮立った鍋とポテトチップスが置いてあるだけとかも。逆に、すごくオシャレな「こういう所に住みたい!」という所もあります。
【山崎】本当に、1つの“世界”をコントロールしているんですね。
もう1つの定番の質問です。この番組のコンセプトである、文化を伝える架空の百貨店があったとして、バイヤーとして一画を与えられたらどんなものを扱いたいですか?
【まつゆう*】好きなアバターを並べてマネキンみたいにして、お洋服やアセット等が買えるスペースを作りたいです。
【山崎】アバターのセレクトショップみたいなやつですね。確かに、そういう体験も生まれそうですよね。
【まつゆう*】既に、アバターミュージアムという空間があるんですよ。そこでイベントがあると、みんな見に行って、速攻でアバターを買っています。
【山崎】僕らが「出来そうだな」と思うものって、ほとんどがメタバース上に出来ているんですね。
【まつゆう*】出来ていないものが、ほとんど無いくらいだと思います。空も飛べますからね(笑)
【山崎】なるほどね(笑) メタバースの世界が、みんなの中でどんどん重要になっていくと、お店に行ってTシャツを選んで「アバター用に買いますか?それとも、リアルであなた用に買いますか?」みたいな、そういう世界も来るのかなと思いました。
【まつゆう*】実は、あるんですよ(笑)
【山崎】これも!!(笑)
【まつゆう*】アバターが着ているお洋服を、実際に売っている方がいらっしゃいます。
【山崎】アバターが先なんですか?
【まつゆう*】アバターが先です。アバターと同じ格好が出来るというもので、今は第2弾くらいまで出ていますね。
【山崎】遅れないように頑張ります(笑)では、最後にメタバースの世界のご予定があれば教えてください。
【まつゆう*】『約束カフェ&バー』という所で、バースタッフをやっております。毎週金曜日の24時15分から26時15分までの時間で、月に2回ほど出勤しています。実は、生ピアノの演奏をもあるお店なんですけど、そこで1日に2曲くらい歌っていたりしているので、もしよろしければ遊びにきてください。
【山崎】この告知も、不思議な感じがしますよね。
【まつゆう*】そうですね(笑)
【山崎】どうでしょう、みなさん。お話に付いて来られましたかね? SNSとかもそうですけど、やってみないと分からないですよね。僕はQuestというVRゴーグルだけで入っていたんですけど、PCと繋いだらあんなに綺麗な世界で動いていたんだなと思って衝撃的だったので、すぐにPCを買いに行こうと思います。
今回のゲストは、コミュニケーション・エヴァンジェリスト/メタバースDJのまつゆう*さんでした。
といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。次回は、打って変わって伝統芸術のお話。俳人・俳句雑誌『鷹』編集長の高柳克弘さんをお迎えします。
最後に、1つお知らせがあります。2017年4月からスタートした、この番組・文化百貨店はこの3月をもって、放送が終了となります。残り2回の放送となりますが、最後までお付き合いをよろしくお願いします。