2019.03.17
田中 義人 vol.1
名曲『LIFE feat.Bird』が出来るまで
Mondo Grossoの一員として代表曲とも呼べる『LIFE feat.Bird』を手掛けた田中さん。山崎の青春を彩ったこの曲の誕生秘話からお話しいただきました。Birdさんの1stツアーのリハーサル中に初めて大沢伸一さんと出会ったそうですが、「今度、自分のアルバムを作るから手伝って欲しい」と声をかけてもらったのだとか。
そこからしばらくして、知らない番号からの着信があり出てみると声の主は大沢さん。「明日までにMondo Grossoで曲を作らないといけないので手伝って欲しい」との連絡を受け、すぐに大沢さんのスタジオへ向かった田中さん。そこには、後に『LIFE feat.Bird』のサビとなる部分だけがあり、そこから膨らませていく作業が必要な状態だったそうです。
大沢さんとセッションのような形式でアイデアを出し合っていた時に、ガットギターを持って弾いたのが、あのイントロ。そのフレーズを弾いた瞬間に大沢さんが「それ!」というリアクションになり、その日のうちに曲が完成したと言います。
実は、元々大沢さんが考えていたメロディーはキーがGだったようですが、田中さんが弾いているイントロのキーはA。1音違っていたのですが、開放弦を用いるフレーズのだったため、ギターのキーを優先してサビのキーを移調した所、Birdさんの音域とピッタリとハマって完成に至ったそうです。
現在のギタリスト、音楽家の仕事
田中さんによると昔の音楽シーンではツアーに同行しないスタジオミュージシャンが多く存在したそうですが、現在はレコーディングを担当したミュージシャンがツアーも同行するケースが多いそうです。
その結果、アーティストとバックのミュージシャンの仲間意識が強くなって、同じメンバーで継続していくことも珍しくないのだとか。しかし田中さんは「本来なら、作品ごとにやりたい事が変わるので、起用したいミュージシャンも変わるはず」と思っているようで、ギタリストとして呼んでもらった時には「違うことがやりたくなったら、どんどん他の人を呼んで」と言うようにしているようです。
闘病からの復帰
錚々たるミュージシャンへの楽曲プロデュースやギタリストとして活動をしていた田中さんですが、2015年の夏ごろから右手に不調を訴え、局所性ジストニアという病と診断され、一時活動を停止。2016年10月に手術をされました。
局所性ジストニアは、“イップス”のような症状で、自分にとって好ましくない動作を脳が覚えてしまい、その行動をとった時に、うまくカラダが動かなくなるというもの。田中さんの場合は、ギターを弾こうと思うと右手が反り返り弾けない状態だったと言います。
手術のあとは、右手の感覚はあるもののギターを持った時に、自分の手がどこにあるのかの感覚がわからないという状態だったため、“ギターを失くした”という絶望的な感情を覚えていたようです。そのため悪夢にうなされる事も多く、眠ることも起きることも辛かったそうです。
そんなネガティブな日々を救ってくれたのが、カレー。夜中に自分でつくったカレーを翌朝に食べることを楽しみに過ごしていく中で、少しずつポジティブな気持ちを取り戻し、手術から1年後の2017年10月に闘病について公表されました。
そんな日々を過ごした田中さんの復帰1作目となるのが昨年8月にリリースされた4曲入りEPの『Smells Like 44 Spirit』。こちらの作品については、来週詳しくお伺いします。
最近買ったモノ
番組でゲストに毎回お聞きしている質問“最近買ったモノ”には、スパイスの小瓶とカレー研究家らしいお答えの田中さん。これまでは、取り寄せたスパイスを数種類一緒に挽いていたそうですが、もっと味の変化を愉しむために、それぞれを小瓶で分けて、カレーに入れるタイミングを変えて楽しんでいるようです。
「今はその小瓶が、すごくカワイイ」という田中さん。カレー愛についても、また来週たっぷりと伺っていきます。
といった所で、今回の文化百貨店は閉店となります。来週もギタリスト・サウンドプロデューサー・カレー研究家の田中義人さんとお送りします。
今週の選曲
田中義人さんセレクト
Smells / Yoshito Tanaka
山崎晴太郎セレクト
Life feat.Bird / Mondo Grosso